データインバウンド
観光デジタルマーケティング最前線、2024年の中国SNS「RED」のエンゲージメント・ランキングは?
2025.03.17
やまとごころ編集部中国版Instagramともいわれる小紅書(RED)に掲載される各国政府観光局(National Tourism Organization:以下NTO)、DMO、航空会社、クルーズ・ライン、ミュージアム&アトラクション、ホテルのパフォーマンスを追跡・分析した2024年の年間ランキング・レポートを、中国を本拠とするマーケティング・ソリューション会社、ドラゴン・トレイル・インターナショナルが発表した。
小紅書(RED)は月間アクティブユーザー3.1億人で、利用者は女性が8割弱、18-24歳が39.21%、25-34歳が38.65%、ユーザーの70%が大都市やそれに近い都市に居住するため、都会の若い女性に人気のSNSとして知られている。
全カテゴリーでエンゲージメント率が低下、高品質なコンテンツの必要性
今回のレポートでは、フォロワー数の増加や投稿量の増加にもかかわらず、すべての旅行カテゴリーでERPF(フォロワー1人当たりの投稿エンゲージメント率)が前年比で大幅に低下していることが明らかになった。
ただし、オーストラリア政府観光局、香港政府観光局、キャセイパシフィック航空、マリーナ・ベイ・サンズ・シンガポールなどの主要ブランドは、バイラル投稿(口コミやシェアによって拡散される投稿)、有名人を起用したコンテンツ、景品、ストーリーテリング戦略によって強力なエンゲージメントを維持していた。これにより、オーディエンスの増加とともにエンゲージメントを維持するためには、高品質でインタラクティブなコンテンツが必要であることがわかる。
▶︎2023年第4四半期と2024年第4四半期のエンゲージメント傾向の比較
(左より、NTO、DMO、航空会社、クルーズライン、アトラクション&ミュージアム、ホテル)
ERPFは、投稿ごとのフォロワー数とエンゲージメントの合計を比較することで、オーディエンスがどれだけインタラクティブであるかを測定する。例えば、ERPFが0.01%ということは、平均して、そのカテゴリの各投稿にエンゲージするフォロワーが1万人中1人しかいないことを意味する。
データから、投稿量とフォロワー数が増加しているにもかかわらず、2023年第4四半期から2024年第4四半期にかけて、すべてのカテゴリーでERPFが低下していることが明らかになった。アトラクション&ミュージアムは最も急落し、75%減少した。ホテルは68%減、クルーズ・ラインは65%減、航空会社も51%減、DMOは37%減となった。NTOは16%減と最も緩やかな減少にとどまった。
フォロワー数の増加と投稿量の増加にもかかわらず、ERPFが減少したのは、投稿ごとのエンゲージメントがオーディエンスの増加に追いついていないことを示している。エンゲージメントの低い新規フォロワーの流入と、投稿の増加によるコンテンツの飽和が相まって、投稿頻度が高くてもエンゲージメントの向上にはつながらず、視聴者が飽きてきた可能性がある。
カテゴリー別ランキング:成功したブランドの戦略
それではここからは、カテゴリー別のランキングを見ていこう。
NTO(各国政府観光局)部門:オーストラリアが首位を獲得
NTO部門のERPFは、フォロワー数が62.65%増加し、総エンゲージメント数が49%増加したにもかかわらず、2024年第4四半期は2023年第4四半期と比較して16%減少した。このERPFの減少は、総投稿数が9%増加し、コンテンツが飽和したことに起因している。フォロワーが増えたことで、よりアクティブでないユーザーも含まれる可能性があり、投稿量が増えたことと相まって、投稿ごとのインタラクションが希薄になり、ERPFの減少につながったと思われる。
▶︎NTO(各国府観光局)の2024年エンゲージメントランキング
オーストラリア政府観光局は、2024年のNTOカテゴリーで、7万8006インタラクションと最高のエンゲージメントを達成し、カテゴリー内のエンゲージメント総数の38.20%を占めた。スイス政府観光局が2位、ニュージーランド政府観光局が3位と僅差で続いた。
第4四半期には、オーストラリア政府観光局がバイラルコンテンツを制作した。最も人気のあった投稿は、オーストラリアのクイーンズランド州での俳優ユー・シー(于適)の休暇を紹介したもので、カテゴリー全体で最もエンゲージメントの高い投稿ともなった。2位と3位には、マリア島の川を渡るウォンバットの動画と、シドニーの街路樹に咲く紫のジャカランダの動画がランクインした。
オーストラリアで初めてユー・シーに関する投稿がシェアされたのは2024年7月下旬だった。それ以前は、オーストラリア政府観光局のコンテンツは、風光明媚な風景、野生動物、各種旅行ガイド、アトラクションが中心で、有名人関連のコンテンツはあまり重視されていなかった。
その他の投稿では、スウェーデン観光局(5位)による、スウェーデン人のラグジュアリーの定義を探った動画が広く支持された。デザイナーズ・ハンドバッグから裸で泳ぐことまで、さまざまなラグジュアリーがあることが示された。3番目に人気があった投稿は、スイス政府観光局(2位)が主催した、2025年のカレンダーを賞品とする抽選会だった。
トップ10の顔ぶれは他に、ニュージーランド観光局(3位)、タイ国政府観光庁(TAT)上海事務所(4位)、TAT北京事務所(6位)、TAT昆明事務所(7位)、ドイツ政府観光局(8位)、シンガポール政府観光局(9位)、イギリス政府観光庁(10位)で、アジアではタイとシンガポールがランクインした。
DMO部門:香港が圧倒的な強さを見せる
DMO部門では、香港政府観光局がトップで、部門全体のインタラクションの約半分を占めた。マカオ観光局も好調で2位、さらにイギリスのヨーク(3位)、フォーエバー・エジンバラ(4位)、ツーリズム・ビクトリア&メルボルン(5位)が続いた。オーストラリアからは他にもビジット・クイーンズランド(6位)、ビジット・シドニー(7位)、南オーストラリア・ツーリズムコミッション(10位)がランクイン。8位はジュネーブ、9位はドバイのDMOだった。
人気投稿トップ10のうち6つは香港政府観光局によるもので、主にハロウィーンやクリスマスなど、近々開催されるフェスティバルに関連したイベントやアクティビティ、ガイドやイベント情報が紹介されている。
最も人気のあった2つの投稿はヨークからのものだった。1つ目は、北ヨークシャーの海岸線沿いにある歴史的で絵のように美しい海辺の漁村、ロビン・フッズ・ベイを紹介するビデオで、散在する家々、カラフルな木製のドア、低いアーチ、狭い路地などで知られている。2つ目の投稿は、イギリスの陰鬱な冬についてのユーモラスなショート・ビデオで、サマータイムが終わると午後4時には暗くなると伝えている。
▶︎DMOの2024年エンゲージメントランキング
航空会社部門:キャセイパシフィック航空のストーリーテリング戦略
2024年を通して、航空会社カテゴリーで最も人気のあった投稿は、キャセイパシフィック航空のショート・ドキュメンタリー「From the Heart」の宣伝だった。これは中国本土の客室乗務員の第一期生が、初心者から一人前の客室乗務員になるまでを5分間の動画で紹介する8つのエピソードで展開したもの。キャセイパシフィック航空はデジタル・ストーリーテリングを得意としており、視聴者との感情的なつながりを効果的に構築できる短いドキュメンタリーやストーリー性のある動画を制作している。
また、2024年の航空会社の上位投稿を分析すると、中国-香港路線に関連するプロモーション・コンテンツが常に高いエンゲージメントを獲得し、大きな関心を寄せられていたことがわかる。2位の香港航空は、旅行者を惹きつけ需要を喚起するために、無料チケットのキャンペーンなどを頻繁に企画した。
▶︎航空会社の2024年エンゲージメントランキング
その他、クルーズはロイヤル・カリビアン・インターナショナル(スイス)、ホテルはマリーナベイサンズ(シンガポール)、アトラクション&ミュージアムは香港ディズニーランド・リゾートがそれぞれ1位だった。
(図版出典:Dragon Trail International)
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