データインバウンド
ビザなし渡航国ランキング 日韓2位並ぶ。インド・サウジ急浮上、米英後退
2025.07.29
やまとごころ編集部227の国・地域を対象に、ビザなしで渡航できる国の数をもとにパスポートの「強さ」を評価する「ヘンリー・パスポート・インデックス2025年版」のアップデートが発表された。調査は国際航空運送協会(IATA)のTimatic社のデータに基づいており、ランキングは毎年1月と7月に発表される。
ランキングは単なる渡航自由度の指標にとどまらず、各国の外交戦略や観光政策、そしてインバウンド・アウトバウンドのプロモーションにも影響を及ぼす。誰が日本に来やすく、どの国へ行きやすいのか――観光需要の変化を読み解くための実務的なヒントとなる。
シンガポールが渡航自由度で1位 日本は韓国と並び2位
今回の結果では、シンガポールが193の国・地域にビザなしで渡航可能となり、世界で最も強力なパスポートに認定された。日本と韓国も190の国、地域でビザなし渡航が可能となり、2位にランクイン。アジア諸国のパスポートが引き続き上位を占める結果となった。

日本のパスポートは、前回193カ国への渡航が可能だったが、今回は190カ国に減少した。順位は変わらないものの、半年間で3カ国が対象外となっており、渡航自由度は常に変動している点に注意が必要だ。
3位にはデンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、スペインの欧州7カ国が並び、189の国・地域への渡航が可能。さらに、オーストリアやベルギーなど7カ所が188の国・地域で4位タイ。ニュージーランド、ギリシャ、スイスは187の国・地域で5位につけた。
▼日本のパスポートがアクセス可能な国・地域
紺色=ビザ免除、あるいは到着ビザ、電子渡航認証/灰色=ビザ必要

米英パスポートの地位低下顕著 トップ10陥落も視野に
イギリスとアメリカはそれぞれ2015年・2014年に首位を獲得したが、今回のランキングではイギリスが6位(186カ国)、アメリカが10位(182カ国)に後退。半年でそれぞれ渡航可能国数と順位を落とした。特にアメリカは、ランキング20年の歴史で初めてトップ10からの脱落が現実味を帯びてきた。
▼パスポート・インデックスにおけるアメリカの過去の順位

▼パスポート・インデックスにおけるイギリスの過去の順位

過去10年でランキングを下げたのはわずか16カ国。その中でもアメリカ(8位下落)とイギリス(5位下落)の後退は目立ち、最大の下落はベネズエラ(30位→45位)だった。かつて渡航の自由を象徴していた米英は、ビザ政策を緩和する新興国の台頭により、主導権を徐々に失いつつある。
なお、ランキングの最下位はアフガニスタンで、ビザなし渡航可能な国・地域は25カ所。上位との差は168カ所に達しており、国籍によって海外渡航の自由度に大きな格差がある。
インドとサウジが急浮上 外交戦略が渡航先拡大を後押し
2025年版で最も順位を上げたのはインドで、半年前の85位から77位へと8つ上昇。外交努力が奏功し、ビザ不要渡航数は59カ国と2カ国増加した。サウジアラビアも外交攻勢を強めた結果、91カ国への渡航が可能となり、54位にランクアップした。
インデックス考案者のクリスチャン・H・ケリン博士は「上位国は戦略的外交によってアクセス権を維持・拡大している。交渉努力の有無がパスポートの価値に直結している」と分析する。
中国が外国人受け入れで日本上回る 地域戦略に影響も
長期的に見ると、過去10年で80以上の国と地域が10位以上ランキングを上げるなど、世界的に開放性が進展。UAEは42位から8位へと34位上昇し、中国も、シェンゲン協定圏へのビザなし渡航は未達ながらも、94位から60位へと大きく飛躍した。
また中国は、外国人の受け入れ拡大にも積極的な取り組み姿勢を示している。2025年までにバーレーン、クウェート、オマーン、サウジアラビアのほか、アルゼンチン、ブラジル、チリなど南米各国ともビザ免除協定を結び、外国人の受け入れを急速に拡大。最新の「ヘンリー開放指数」によれば、中国がビザなし入国を認める国・地域数は、5年前の20未満から75へと増加し、ランキングは66位となった。戦略的外交が成果を上げている。
なお、日本がビザなし入国を認めているのは73カ国で、開放度ランキングは67位。中国は75カ国で66位のため、外国人受け入れの面では日本を上回る結果となった。また、アメリカは2025年から厳格な国境管理を維持しており、ビザなし入国を認めているのは46の国・地域で、ランキングは80位にとどまっている。
<編集部コメント>
台頭する国と後退する国から見える観光戦略の焦点
パスポートランキングは、各国の観光開放度や外交戦略のバロメーターと位置づけられる。日本は高順位を維持しているものの、インドや中国が積極的な外交によって着実に順位を上げ、米英は後退傾向が続いている。
インバウンド・アウトバウンドの両面で「誰が来やすく、どこへ行きやすいのか」を見極める視点は、観光戦略において不可欠だ。特に中国は、外国人受け入れ数で日本を上回っており、その動向は今後の地域施策に大きな影響を与える可能性がある。
出典:Henley & Partners,The Henley Passport Index
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