データインバウンド
訪日再訪意向52.7%で世界1位 日本に追い風 ―ジャパンブランド調査2025
2025.09.08
やまとごころ編集部日本が世界で最も「再訪したい国」として支持を集めた。再訪意向は52.7%に達し、韓国(20.0%)やアメリカ(16.6%)を大きく引き離して世界首位となった。
この結果は、株式会社電通が2025年5月20日から6月22日にかけて実施した「ジャパンブランド調査2025」による。調査は、世界20の国・地域に住む20〜59歳の計1万2400人を対象にオンラインで行い、訪日観光や食、日本産品、価値観など“ジャパンブランド”に関する意識を継続的に把握している。
最新結果では、日本の観光大国としての地位強化に加え、「食」「自然」「四季・文化」を軸とした体験や消費行動、地方誘客や持続可能性に関する新たな潮流が浮き彫りになった。
訪日再訪意向52.7%で世界1位、日本が3年連続上昇
日本は「再び訪れたい国」について52.7%の支持を集め、世界のトップに立った。韓国(20.0%)やアメリカ(16.6%)を大きく引き離し、日本の人気が一過性ではないことを示した。
さらに、日本への再訪意向は2023年の30.6%から2024年34.6%、そして2025年に52.7%と着実に上昇しており、食や日本製品の魅力が円安以上に訪日を後押ししていることがうかがえる。
▶︎世界20市場における日本の再訪意向率比較

日本への再訪意向、13市場で首位 アジアで優位。欧州・中東は課題あり
国・地域別に見ると、日本は計13の市場で再訪意向1位を獲得。特にタイでは2位との差が46.2ポイント、台湾44.8ポイント、香港43.6ポイント、韓国42.3ポイントとアジア市場での優位性が際立った。
▶︎市場別に見る日本再訪意向の順位と2位との差

一方、インドでは差が11.5ポイントと最小で、欧州・中東地域では再訪意向はあるものの、順位は他国に譲る場面も見られる。たとえばフランス・イタリア・スペインでは、日本はそれぞれ7位・9位・11位にとどまっており、文化的・地理的な距離感が影響している可能性がある。
このように、日本はアジア・北米・豪州などを中心に「再訪したい国」としての支持を大きく伸ばしていて、観光大国としての地位を着実に強化している。観光戦略上、欧州・中東でのさらなる認知拡大も今後の課題となる。
訪日体験の関心は和食・自然・四季、桜や温泉など季節体験に関心
今後の訪日時に関心のある体験項目としては、「和食を食べること」(56.4%)が最も高く、以下「自然景勝地を訪れる」(45.3%)、「四季の体験」(39.3%)、「繁華街の街歩き」(38.7%)、「伝統文化の体験」(36.4%)などが上位に並んだ。
▶︎訪日旅行で人気の体験項目ランキング

中でも「コンビニでの買物」(32.9%)が上位に挙がっている点は特徴的で、特にアジアの国・地域で高い支持を集めている。また、「ドラッグストアでの買物」といった体験も一定の関心を得ており、日本の生活文化そのものが観光体験として捉えられている。
自然体験の具体的な内容では「桜の花見」(59.2%)が最も高く、「温泉入浴」(52.2%)、「自然散策」(48.7%)、「紅葉狩り」(41.0%)と続いた。四季や気候に根ざした多様な体験が、日本の観光資源としての魅力を形作っている。
▶︎桜・温泉・紅葉など季節・自然アクティビティの参加意向

外国人が感じる日本らしさ、Z世代はマンガ・アニメを重視
訪日体験における動機や満足度に強く影響するのが、旅行者が感じる「日本らしさ」の印象だ。今回の調査では、全体として「寿司」(42.2%)、「桜」(42.0%)、「富士山」(41.0%)が“日本らしさ”の象徴として上位に挙げられた。
▶︎外国人が選ぶ“日本らしさ”の象徴トップ10

特に「富士山」については、アジア圏での象徴性が際立って高く、台湾(56.8%)、香港(51.9%)、タイ(59.2%)、マレーシア(57.4%)などで5割を超えた。一方で欧米や中東では象徴性がやや低く、インド(31.1%)、サウジアラビア(21.5%)、アメリカ(28.2%)、ドイツ(17.4%)と差が見られた。
また、世代間の違いも顕著で、Z世代(20〜28歳)は「マンガ・アニメ」を“日本らしさ”の象徴として最も多く挙げており、「富士山」や「寿司」よりも高い傾向が見られた。対して、X世代(45〜59歳)は「桜」や「富士山」といった自然・伝統的要素への支持が高い。
▶︎世代・訪日経験別に見る“日本らしさ”の象徴の違い

さらに、訪日経験によって“日本らしさ”の認識が変化する傾向もある。「温泉」「紅葉」「祭り」などは訪問回数が増えるほど象徴性が高まる一方で、「桜」はリピーターやファン層では象徴性がやや低下する傾向にある。これは、初訪問時に「桜=日本」という印象が強く、訪問経験を重ねるごとに多様な価値を発見していることを示唆している。
訪日消費、コンビニは寿司・ドラッグストアはスキンケアが人気
訪日時の買い物傾向を見ると、コンビニの利用意向(32.9%)はドラッグストア(24.1%)を上回った。コンビニで購入したい商品は「寿司」(46.9%)が最多で、「アイスクリーム」(45.1%)、「おにぎり」(43.3%)、「スイーツ」(43.3%)、「和菓子」(40.0%)が続く。
一方、ドラッグストアでは「スキンケア製品」(45.9%)が突出しており、「メイクアップ」(38.7%)、「ボディケア用品」(37.4%)、「サプリメント」(37.4%)が上位を占めた。
▶︎訪日客に人気のコンビニ・ドラッグストア商品TOP10

さらに、お土産としての購入意向は「和菓子」(43.1%)、「チョコレート菓子」(41.4%)、「工芸品」(40.0%)がトップ3。日本ブランドの衣料品や化粧品も高い関心を集めている。
地方訪問は少数も、満足度、再訪意向は9割超
訪日旅行において、東京都・大阪府・北海道・京都府といった主要エリアの認知度・訪問経験が突出している一方、地方部のみを訪問した経験は依然として少ない。調査では「ゴールデンルート上の都市(東京・名古屋・大阪・京都)を除く地方部のみを訪れた」と回答した割合は平均で2割前後にとどまっている。
▶︎地方部訪問率と訪問者の満足度・再訪意向

一方、一度でも地方部を訪れた旅行者に限ると、満足度は96.2%、再訪意向も93.4%と、ともに9割を超える非常に高い水準を示した。つまり訪問経験者の大半が「もう一度行きたい」と感じていることがわかる。
温泉地の認知度はアジア中心、欧米で低水準
地方観光資源の代表である温泉地は、アジア市場では高い認知を得ている一方、英語圏や欧米文化圏では認知度の低さが際立つ。カナダ(74.9%)、フランス(66.4%)では7割前後が「温泉地を知らない」と回答し、アメリカやオーストラリアといった主要市場でも認知率は半数程度にとどまった。
▶︎温泉地の認知度

また、地方観光の課題としては「通信環境やWi-Fiの不足」「多言語対応の不十分さ」「都市部からのアクセス改善」などが挙げられており、訪日経験や国・地域によって問題意識に差が見られた。
▶︎地方観光で指摘された課題

このことから、地方部は訪問者数こそ限られるものの、一度足を運んだ旅行者にとっては強い魅力を持ち、満足・再訪につながる重要な観光資源であるといえる。今後は認知度向上と課題解消が、地方誘客拡大のカギになる。
観光の持続可能性、時期分散と中古品市場に注目
オーバーツーリズムへの懸念が高まるなか、訪日希望時期は「桜シーズン」(全体58.9%)に集中しており、特にアメリカ(61.1%)、中国(54.9%)、インド(55.8%)の市場別でみてもその傾向は顕著だ。一方で、次の需要の核となり得るのは、日本ファン層で関心の高い「紅葉シーズン」(全体33.5%)で、アメリカでは「夏休みシーズン」(43.2%)、中国では「紅葉シーズン」(38.5%)への需要ポテンシャルが確認された。観光需要の分散化は持続可能な観光の推進に直結しており、国や属性ごとの時期特性を踏まえたプロモーションが不可欠といえる。
▶︎訪日希望時期の比較(訪日回数別/米・中・印の市場別)

また、持続可能性の観点では、日本の中古品に対する関心が64.7%と高く、衣料・服飾品やカメラ、自動車など幅広い分野で「品質の良さ」や「耐久性」といった価値が評価されている。さらに、世界の旅行者が普段から注目する社会潮流としては「生成AIの利活用」(36.6%)や「再生可能エネルギー」(36.1%)、「ヘルステック」(33.8%)が上位に挙がり、持続可能な未来に向けた技術やライフスタイルへの期待が高まっていることも示された。
【編集部コメント】
再訪率過去最高の先にある、体験の多様化と地域誘客の可能性
再訪意向が52.7%と過去最高を記録し、13市場で1位を獲得するなど、日本は「また行きたい国」としての存在感を強めている。注目すべきは、桜や温泉といった王道体験に加え、コンビニやドラッグストアでの買い物など、日常に根ざした体験への関心の高まりも見られる点だ。
また、地方訪問者の満足度は96%と非常に高く、エリアを超えた体験価値の訴求が次の成長につながりそうだ。市場ごとの認知度や季節ニーズの違いも踏まえ、販促・商品設計を見直す契機として、本調査を活用しても良いかもしれない。
(出典:電通 ジャパンブランド調査2025)
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