データインバウンド
万博訪日客の4割が初来日 平均支出55万円、地域で関心に違いも
2025.09.16
やまとごころ編集部2025年4月に開幕した大阪・関西万博の開催期間中に、日本政策投資銀行(DBJ)が実施した訪日外国人への調査結果が公表された。
本調査は、万博開催期間における訪日外国人の国内訪問先や関心を把握・分析することを目的として行われた。調査は2025年6月3日から6月16日までの平日10日間、JR桜島駅において対面形式で実施され、訪問予定者を含む訪日外国人341人から回答を得た。
初訪日が4割、万博が訪日の主目的に浮上
訪問予定者を含む訪日客の出身国や地域は、東アジアが最多で36.4%。次いで北米・豪州(北米豪)(23.2%)、欧州(16.7%)と続いた。東アジア内では中国(14.7%)、台湾(14.1%)、香港(5.9%)、韓国(1.8%)の順に多かった。

訪日経験では「初めて」が最も多く40.8%を占め、特に欧州・中東出身者で高い傾向が見られた。一方で、6回以上のリピーターも23.2%に上っており、新規層とリピーターの両方をターゲットとした受け入れ戦略が求められる。

また、訪日の主目的としては「大阪・関西万博」(40.8%)と「観光・レジャー」(同率)が並び、万博そのものが訪日動機として明確に機能していることがうかがえる。開催地や周辺地域にとっては、万博を軸とした広域周遊への誘導が鍵となりそうだ。

北米豪・欧州は中長期滞在傾向 滞在日数に地域差
日本での滞在日数は「11〜20日間」が最も多く24%、次いで「8〜10日間」が22%だった。出身地域別にみると、東アジア出身者の約7割が1週間以内の短期滞在だったのに対し、北米豪・欧州出身者の6割以上は1週間を超える中長期滞在となっていた。観光庁が行うインバウンド消費動向調査と同様の傾向が示されている。

また、世帯年収との関係では、年収10万ドル(約1436万円)未満の層で「8〜10日間」、10万ドル以上では「11〜20日間」の滞在が最多となっている。滞在日数と出身地域・所得水準には相関があり、ターゲット市場によって商品設計やプロモーションの切り口を柔軟に変えることが重要だといえる。

訪日中の平均支出は55万円、中東・北米豪は高単価市場の可能性も
滞在中の総支出額で最も多かったのは「10〜20万円」(23.4%)、次いで「20〜30万円」(16.8%)だった。

平均支出額を地域別に見ると、中東出身者が120.8万円と突出し、北米豪(96.2万円)がこれに続いた。いずれも全体平均(55.0万円)を大きく上回っており、高単価の消費が期待できる市場であることがうかがえる。
なお、中東出身者の有効回答数は6人と少数のため、数値を鵜呑みにせず、参考値として扱う必要がある。

万博以外の訪問地に傾向 府内・府外で好み分かれる
大阪府内での人気訪問地は「道頓堀」(55.1%)が最多で、次いで「ユニバーサルスタジオ」(43.7%)、「大阪城」(38.1%)が続いた。一方で、「万博以外は訪問していない」との回答も16.1%に上っており、万博が主目的となっている来訪者も一定数存在する。

府外の訪問地では「京都」(54.5%)が最も多く、「関東」(39%)、「奈良」(23.8%)がこれに続いた。「大阪以外は訪問していない」との回答も18.5%あり、広域周遊を促す余地があることがうかがえる。

また、訪問地と出身地域の関係性も見られた。大阪府内では日本橋や黒門市場、通天閣などにおいて東アジア出身者の割合が過半数を占めたほか、府外では京都が東アジア、関東が北米豪、奈良が欧州出身者に特に支持されていた。こうした傾向は、地域ごとのプロモーション戦略や観光コンテンツ開発において、有効なヒントとなるだろう。
日本館が圧倒的に人気 パビリオン選好に地域差
人気のパビリオンを見ると、シグネチャーパビリオンでは「いのちの未来」(13.8%)が最も多く、次いで「Better Co‑Being」(11.4%)、「EARTH MART」(10.0%)が続いた。
「いのちの未来」は、人間とテクノロジーの関係を通じて、未来の“いのち”のかたちを問いかける展示が特徴。「Better Co‑Being」は、人や自然との“共鳴”をテーマにした体験型アート空間であり、「EARTH MART」は、食を切り口に持続可能性や生命の循環を学べる構成となっている。
また、対話を通じて他者と共感する演出が特徴の「Dialogue Theater‑いのちのあかし‑」や「Better Co‑Being」では東アジア出身者の割合が高く、「EARTH MART」では北米豪出身者が約4割を占めるなど、出身地域によって関心を寄せるテーマに違いが見られた。

国内パビリオンでは、「日本館」が圧倒的多数の支持を集め(40.5%)、次いで最新技術をテーマとした「TECH WORLD」(12.6%)や、日本のポップカルチャーを象徴する「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」(11.7%)が人気だ。
また、「パナソニックグループパビリオン」や海洋をテーマとする「BLUE OCEAN DOME」では、北米豪出身者の割合が高く、環境技術や企業ブランディングに関心を示す傾向も見られた。

海外パビリオンでは「アメリカ合衆国」(13.2%)、「オーストラリア連邦」(12.9%)、「中華人民共和国」(12.6%)が上位だった。

また、「未来社会ショーケース」では、未来の暮らしや社会の姿を体験できる多様な展示が用意されている。その中でも、「バーチャル万博〜バーチャル会場〜」(8.2%)や、リアルタイム翻訳を体験できる「自動翻訳システム」(6.2%)といったデジタル技術に関する展示にも一定の関心が集まっていた。

スマートモビリティが注目技術のトップ、万博満足度は8割超に
来場者が最も注目している技術分野は、「スマートモビリティ」(38.1%)が最多で、次いで「未来の都市」(37.5%)、「日本の文化」(34.6%)が続いた。モビリティや都市設計といった先端分野と並んで、伝統文化への関心も根強いことがうかがえる。

また、実際に万博を訪問した120人への満足度調査では、「満足」と回答した人が81.7%を占め、不満と答えたのはわずか2.5%にとどまった。万博の展示・体験が概ね高い評価を得ていることが明らかとなった。

<編集部コメント>
万博は“新規訪日層”との出会いの場にー次なる誘客に向けたヒントはどこにある?
訪日外国人の約4割が初訪日で、主目的が万博という結果は、開催地だけでなく全国の地域にとっても新たな層との接点創出の好機となる。滞在日数や関心テーマ、万博以外の訪問地には地域差があり、広域周遊の促進やプロモーションの設計には、出身地域ごとの傾向把握がカギとなるだろう。自地域の魅力がどの層に響くのか、改めて見直してみてもよいかもしれない。
(出典:2025年大阪・関西万博外国人訪問者の意向調査 第1回速報、続報)
※円換算は出典データと同様1ドル=143.6円(2025年6月2日時点)
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