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2025年7月の訪日宿泊前年割れも地方は好調、鳥取県が伸び率1位に

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観光庁が発表した2025年7月の宿泊旅行統計(第2次速報)によると、外国人延べ宿泊者数は1398万人泊となり、前年同月比4.2%減となったことが分かった。一方で、三大都市圏が減少傾向にある中、地方部の外国人宿泊者数は増加しており、特に鳥取県は全国トップの伸び率を記録した。

 

外国人宿泊数、3年ぶりの前年割れ

2025年7月の延べ宿泊者数は5575万人泊で、前年同月比2.6%減だった。日本人の延べ宿泊者数は4177万人泊で同2.0%減と、7カ月連続の前年割れ。また、外国人延べ宿泊者数は1398万人泊で同4.2%減となり、コロナ禍以降では2022年7月以降で初めての前年割れとなった。延べ宿泊者全体に占める外国人宿泊者の割合は25.1%だった。

ただ、8月の第1次速報では、全体でも、日本人、外国人の延べ宿泊者数もわずかだがプラスになっている。

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インバウンド宿泊者数トップは東京都、北海道で大きく増える

都道府県別でみると、東京都が460万6390人泊で最多。次いで大阪府(193万5160人泊)、京都府(150万8940人泊)、北海道(115万2020人泊)、沖縄県(85万6500人泊)が続いた。この順番は6月と同様だが、上位3都府が減らしている一方で、北海道が37万人泊、沖縄も8万人泊増えている。

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地域別に見ると、三大都市圏(※1)の外国人延べ宿泊者数は前年同月比8.1%減の944万人泊だった。これに対し、地方部は同5.2%増の454万人泊となり、増加傾向にあることが明らかになった。

▶︎都道府県別外国人延べ宿泊者数(2025年7月[第2次速報])と前年同月比

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※前年同月比は、確定値との比較

 

伸び率1位の鳥取県、その要因は?

7月の都道府県別の外国人延べ宿泊者数の伸び率では、鳥取県が前年同月比105.1%増と突出しており、全国1位の伸び率を記録した。鳥取県は、2025年4月、5月の統計でも、外国人宿泊者数において前年同月比151.5%増、160.7%増を記録しており、複数月にわたって高成長傾向が持続していることが確認されている。

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鳥取県が伸びた背景には、県内空港への国際チャーター便の就航や「環日本海定期貨客船」の運航により、多彩なアクセス手段を設けたことが大きい。特に、2024年10月に4年ぶりに再開された米子-ソウル間の国際定期便は、初便から搭乗率100%を記録するなど好調な滑り出しを見せた。また、境港に寄港するクルーズ船の規模が拡大したことも、気軽に訪れることができる東アジアからのインバウンド客を増やした一因である。

鳥取県の伸び率は新潟県(同67.7%増)、島根県(同78.2%増)といった地方部の他県に比べても非常に高く、地方部におけるインバウンド誘致成功事例として注目に値する。

ただ、鳥取県の過去の外国人宿泊者数水準は、全国比では相対的に低位にあったため、少数の増加でも割合面では大きな伸びとなっているとも言える。

 

引き続き中国・米国が宿泊市場を牽引、SNS影響で低迷の市場も

国籍別では、中国が318万人泊(3.7%増)で4カ月連続でトップ、次いで台湾(167万人泊、4.1%減)、アメリカ(140万人泊、12.1%増)、韓国(117万人泊、24.7%減)、香港(40万人泊、49.0%減)と続く。伸び率では、ロシア(5万人泊、92.6%増)、インド(7万人泊、24.4%増)、ドイツ(15万人泊、24.0%増)などが大きな伸びを示したものの、総数は6月より減少している。

なお、香港、台湾、韓国がマイナス成長となったのは、6月に続き、日本での地震に関するSNS上の情報の影響などが大きかったと思われる。

▶︎国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(2025年7月[第2次速報])
宿泊統計2025/7_6

※1 )三大都市圏とは、「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫」の8都府県を、地方部とは、三大都市圏以外の道県をいう。

 

【編集部コメント】

都市部は減、地方は増 ─ 宿泊統計から見えるインバウンドの分岐点

今回の統計では、外国人宿泊者数を含めて全体が減少に転じた一方、地方部は依然として堅調な伸びを示した。特に鳥取県は航空や船舶の国際便再開・拡充を背景に、全国トップの伸び率を記録している。この事例は「アクセス強化が地方インバウンドを左右する」という構造を如実に示すものだ。もちろん鳥取県はもともとの規模が小さいため増加率が大きく出やすい点には留意が必要である。しかし、戦略的施策が成果につながった好例であることに変わりはない。地域戦略を考える際、単に宿泊者数の増減を追うのではなく、自地域で再現可能な要因を抽出することが、次の施策設計の鍵になるのではないだろうか。

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