データインバウンド
「旅行業界のアカデミー賞」2025年アジア部門、日本が最多水準の8部門で受賞
2025.10.15
やまとごころ編集部旅行業界における最も権威ある賞の一つ「ワールド・トラベル・アワーズ(World Travel Awards, WTA)」の2025年版アジア部門の受賞者が10月13日に香港で開催されたガラセレモニーで発表された。
1993年に設立された同賞は、世界の旅行・観光・ホスピタリティ業界の専門家や一般消費者の投票で選出され、「旅行業界のアカデミー賞」とも呼ばれる国際的な権威を持つ。
世界的な規模で展開されており、アジア、ヨーロッパ、中東、北米など全10の地域別部門でノミネート・選出が行われ、その後、地域を勝ち抜いた最優秀者が「グランドファイナル(世界部門)」で競い合う。
2025年アジア部門では、日本がデスティネーション、エアライン、新規開業ホテル、アトラクションなど、多岐にわたる分野で計8部門の最優秀賞を獲得した。これは、昨年の7部門を上回る最多水準の受賞数であり、インバウンド市場における日本のプレゼンスが改めて証明された形となった。
日本の受賞、デスティネーション躍進とエアラインの堅調
今年の日本の受賞で特に注目されるのは、「アドベンチャー・ツーリズム・デスティネーション」部門で「日本」全体が最優秀賞に選ばれた点である。昨年デスティネーション部門での受賞がなかった日本にとって、2年ぶりの今回の受賞は、地方の体験型観光や自然資源への国際的な評価の高まりを示すものだ。
航空部門では、昨年から引き続き日本の強さが際立った。「エアライン」「カルチュラル・エアライン」の2部門を全日空(ANA)が、「エアライン・プレミアムエコノミークラス」と「エアライン・ラウンジ・ファーストクラス(成田空港)」の2部門を日本航空(JAL)が受賞した。
さらに、宿泊施設では、新規開業部門では、「新規開業ホテル」のカテゴリーで、ウォルドーフ・アストリア大阪が、「新規開業リゾート」のカテゴリーでローズウッド宮古島がそれぞれ賞を獲得し、国内のラグジュアリーホテルの質の高さを世界に示した。また、東京・豊洲の「チームラボプラネッツTOKYO DMM」は「ツーリスト・アトラクション」部門で最優秀賞に選出され、国内外の訪問客からの人気と評価を確固たるものにした。

アジア全体の動向:ベトナムがトップデスティネーションの座を堅持
アジア全体を見ると、最優秀デスティネーションの座は、今年も引き続きベトナムが獲得した。ベトナムは「ヘリテージ・デスティネーション」「シティ・デスティネーション(ハノイ)」でも最優秀賞を受賞しており、デスティネーションとしての地域トップの地位を揺るぎないものにしている。
その他の主要部門では、ビーチ・デスティネーションをフィリピンが、スポーツ・ツーリズム・デスティネーションをシンガポールが獲得した。また、アジアの玄関口となる空港部門では、今年新たに3本の滑走路の使用が開始され、空港都市構想「SKYTOPIA」を推進する香港国際空港が最優秀空港に選ばれた。エアライン・ブランドではベトナム航空が、LCCではエアアジアがそれぞれ選出された。
今回の結果は、アジア各国の観光地や企業が高い品質と競争力を備えていることを示すものとなった。日本は過去最多水準の受賞を達成し、インバウンド誘致に向けた強力な追い風となることは間違いない。今後は、各地域・部門の最優秀者が競い合う「グランドファイナル」(12月6日・バーレーン開催)の結果にも注目が集まる。
(出典;World Travel Awards, Asia Winners 2025)
【編集部コメント】
観光立国・日本の次の課題は「選ばれる理由」づくり
日本が過去最多水準となる8部門で受賞した今回の結果は、観光立国としての存在感を改めて示すものとなった。特に「アドベンチャー・ツーリズム・デスティネーション」受賞は、地方の体験型観光の成熟を映す動きだ。一方で、ベトナムやフィリピンなど周辺国も着実に地位を高めている。日本が次に問われるのは、「評価」を「選ばれる理由」に転化できるか。世界目線での魅力磨きと、地域間の連携強化が鍵となりそうだ。
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