インタビュー
外国人の友人に街を案内する様子を発信していたYouTube動画が思いがけず注目を集め、本格的にツアーガイドの道へと進んだYAYAさん。
現在は東京を拠点に活動する人気ガイドとして、多くの訪日ゲストから厚い信頼を得ている。今回は、ガイドという仕事の魅力や現場で大切にしていること、そしてツアーを共に楽しむためのコミュニケーション術について話を聞いた。

YouTube動画がきっかけ「ちょっと案内」から始まったツアーガイドの道
― 現在のお仕事を教えてください。
ツアーガイドを本業とし、フリーランスとして東京を中心に、訪日外国人向けのツアーを行っています。
実は最初から仕事にしようと思ってガイドを始めたわけではありません。もともとはYouTubeで「外国人が日本文化にどんな反応をするか」を発信したく、撮影の延長で街を案内していたのが始まりです。外国人の友人と一緒に原宿を歩きながら撮った動画が想像以上に再生され、「需要がある」と感じました。
当初は、動画撮影の一環で街を案内するだけでしたが、編集や企画に時間をかけるうちに「ガイドも仕事にできるのでは」と思うようになりました。資格がなくても登録できるガイドサイトを見つけて始めたところ依頼が増え、現在は本業として続けています。
海外との仕事経験がつながった ガイドというキャリア
― これまでの経歴を教えてください。
これまでの経歴を振り返ると、常に「海外との関わり」が軸にありました。高校時代に1年間アメリカへ留学し、その後ロサンゼルスの大学でコミュニケーション学を専攻しました。
▲ロサンゼルスの大学でコミュニケーション学を学んだ学生時代のYAYAさん
2019年の帰国後は、外国人向けのミュージックバーや着物レンタル店、引っ越し通訳、海外セレブのセキュリティ業務など、外国人と関わる仕事を中心に経験してきました。なかでもセキュリティ業務では、現場での案内や通訳、調整役を担うことが多く、今振り返るとガイドにつながる経験だったと感じています。
こうした仕事の延長で始めたYouTubeでの発信が、現在のガイドという仕事へとつながりました。
ちなみに、私のYouTubeチャンネル「わーるどわいどややちゃんねる」では、海外からの友人と都内を巡る様子や、実際にツアーガイドをしているときの様子などを紹介しています。
▲ツアーガイドの様子を発信する「わーるどわいどややちゃんねる」
個人旅行から団体まで 広がる訪日ツアーガイドの現場
― 現在取り組んでいるツアーやガイド活動の内容について教えてください。
有償でガイドを始めたのは2024年3月からです。活動エリアは東京が中心ですが、鎌倉や箱根、富士山、日光など都外への依頼も増えています。基本は1日8時間ほどのワンデーツアーが多く、リクエストによっては1週間ほど同行することもあります。
▲東京以外のエリアへ同行することも
個人旅行のゲストが中心ですが、最近はアメリカの大学生団体の引率を担当する機会もあり、20人規模のフィールドスタディを案内することもあります。個人ツアーでも文化や歴史の話はしますが、団体の場合は学習目的の要素が強いため、より深い背景説明や構成を意識した準備が必要になります。
予約経路については、ガイドを始めた当初はガイド掲載サイトに登録して集客していました。そこで出会ったゲストのリピートや紹介につながることも多かったです。現在は自身の公式サイトやYouTube、Instagram、LinkedInなどSNS経由の直接依頼も増えているほか、エージェントや代理店経由の依頼も継続的にいただいています。
ゲストの国籍はアメリカの方が圧倒的に多く、カップルやファミリー層が中心です。プロフィールにアメリカ留学の経験を書いていることもあり、親近感を持ってもらいやすいのかもしれません。
ツアーの時間帯は、基本的に10時〜18時や11時〜19時など、夕食前に終える設定ですが、そのまま食事やカラオケに誘われることもあります。体力的に大変な日もありますが、どれだけ疲れていてもコミュニケーションを楽しめる点が自分の強みだと感じています。
▲大学団体などのグループツアーも担当
「見せたい」より「求める体験」、ゲスト起点のツアー設計と関係づくり
― ガイドのお仕事をする上での心がけを教えてください。
大きく分けて、「ツアー行程の設計時」と「ゲストとのコミュニケーションを取る際」の2つで、意識していることがあります。
「自分が見せたい」より「相手が求める」を形にする
まず行程づくりで大切にしているのは、「自分が見せたいもの」ではなく「相手が何を求めているか」に合わせることです。私のツアーでは、年齢層や関係性、興味に応じてコースをその都度柔軟に組み替えています。
特に意識するのは年齢層です。年配の方には、寿司やラーメン、神社仏閣などの“王道”が好まれ、歩く距離や休憩の頻度にも配慮します。事前に食の好みや体力面について細かく確認することも多いです。
一方、若いカップルやファミリーの場合は、ゲームセンターや動物カフェ、キャラクターショップなどポップな要素を多めに取り入れます。カップルには体験型のアクティビティ、家族には子どもが楽しめる場所を入れるなど、属性も考慮します。
「自分が伝えたいこと」よりも、「相手がどんな思い出を持ち帰りたいか」を軸にしないと、どうしてもガイドの自己満足になってしまい、お客様がただついてきているだけの状態になってしまうんです。私自身もツアーを楽しみたいので、全員が同じ熱量で楽しめる行程作りを心がけています。

言葉より空気づくり ゲストを緊張させない関係性の築き方
もう一つ大切にしているのが、コミュニケーションの取り方です。よくゲストから「前から知っている人のよう」と言っていただけるのですが、緊張させず安心してもらえている証で、私にとって一番うれしい言葉です。「日本人」と「外国人」、「ガイド」と「ゲスト」というように相手と自身の間に線を引いてしまうと、お互いにどこか疲れてしまう気がしているので、友達に近い距離感を意識しています。
こうしたスタンスの背景には、自分自身の原体験があります。私がアメリカ留学中、「留学生」としてではなく「現地に住む一人の人」として接してもらえた瞬間がとても嬉しく、その国の文化やルールをもっと理解したい、尊重したいと思えるようになりました。だから自分のツアーでも、「外国人のお客様」としてではなく、「今は一緒にいる日本の仲間」という感覚で接するようにしています。
また、日本文化を説明するときは、相手の文化との”比較”をよく使います。たとえば「ここは、アメリカでいうと教会のような場所です」「日本のお正月はあなたの国のどんな祝日に近いですか?」といった感じです。そうなると、ゲストも自分の国の話をしてくれ、会話が一方通行にならず、より深い体験になると感じています。
笑いと共通点で距離を縮める ゲストとのコミュニケーション術
― 海外のゲストと短い時間で打ち解けるために、YAYAさんがいつも実践していることはありますか。
一番意識しているのは、「完璧に見せようとしすぎないこと」です。英語を話す中でも、あえて日本語を少し混ぜたり、日本人らしいアクセントを残したりして、親しみやすさを出しています。
もちろん相手の雰囲気は見つつも、基本的には「この人ちょっと面白いな」と思ってもらえる空気づくりを大切にしています。会話の途中でわざと日本語が出てしまったふりをして「ごめん、日本語しゃべっちゃった」と言うと、多くの方が笑ってくれ、「今なんて言ったの?」と会話が広がります。こうした小さな笑いが、その後のツアーの雰囲気を和らげてくれます。
英語を完璧に話そうとすると緊張が伝わってしまうので、あえて肩の力を抜いた話し方で「リラックスしていいんだ」と感じてもらえる空気を作るよう心がけています。
また、早い段階で共通点を見つけることも大切にしています。好きなアニメや出身地、住んでいた場所の話など、何か一つ重なる部分があるだけで距離がぐっと縮まります。
▲自然な会話で距離を縮めるツアー中の一コマ
「日本を一番感じたい」ゲストの一言から生まれた八丈島ツアー
― これまで多くのお客様との出会いがあったと思いますが、特に印象に残っている出来事や嬉しかった出来事があれば教えてください。
これまで本当に多くの方と出会ってきましたが、それぞれに印象的な思い出があります。中でも嬉しいのは、「次はあなたがうちに来てね」「今度は私の街を案内するよ」と言っていただけることです。ツアーの終盤に「家にゲストルームがあるから来るときは連絡して」と声をかけていただくことも多く、人と人としてつながることができたと感じる瞬間が何より嬉しいです。
その中で、特に印象に残っているのは、アメリカから来たご夫婦です。日本のゲームやアニメが大好きな方で、新宿ではゲームの舞台になった少しマニアックな場所を一緒に探して巡ることもありました。一方で、浅草などの定番観光地も訪れ、最初の数日は比較的オーソドックスな行程でした。
最後に「YAYAがこれまでやったことのない、日本を一番感じられるツアーをしてほしい」と言われ、思い切って八丈島への日帰りプランを提案しました。飛行機で島へ向かう少し大胆な行程でしたが、とても喜んでいただけました。
ツアーから時間がたっても、「今見ているアニメの中で、あなたと同じ名前の”AYAKA”という子が出てきたの。彼女も八丈島に行くと言っていて、YAYAのことを思い出したよ」と連絡をくださり、その旅が心に残っていたのだと感じて嬉しくなりました。今でも連絡を取り合う関係で、「また島に行こう」と言っていただける大切なお客様です。
“本物志向”の旅行者が増加する中、ガイドに求められる役割
― ご自身が観光業界で活動する中で感じている課題はありますか。
一番大きかったのは、個人ガイドならではの「横のつながりの少なさ」です。会社勤めなら上司や同僚に相談できますが、個人だとトラブルや判断を一人で抱えることになります。実際、公共の場でゲストにマナーを注意したことで関係がぎくしゃくし、「これでよかったのか」と悩んだこともありました。人と人との仕事なので、どうしても合わないこともあります。やめようと思ったことも何度もありますが、そのたびに素敵なお客様との出会いに支えられてきました。最近はSNSを通じて他のガイドとのつながりも増え、孤独感は和らぎつつあります。
また、日本の観光全体で見ると、「観光客向けの商品」と「本物の体験」のギャップも課題だと感じます。いわゆる“ツーリストトラップ”と呼ばれるような、観光客向けに作られたショーや商品が目立ちやすくなっている一方で、本物を求める旅行者も増えています。
実際に私のゲストの中にも、「相撲を見たい」と依頼したものの、手配されたのがショー形式のイベントで残念だったと話していた方がいました。もちろんショーを楽しめる人もいますが、「本物を見たい」というニーズには合わないこともあります。
だからこそ、ガイドは常に複数の選択肢を持ち、ゲストの目的に合わせて提案することが大切だと感じています。最近の旅行者は事前にSNSや動画で情報を集めてきます。「これは観光客向けです」「こちらは地元の人にも人気です」といった補足ができるかどうかが、満足度を大きく左右すると思います。
▲本物の体験志向が高まる中、ガイドの選択肢提示力が重要に
日本酒を入り口に、地方へ広がる新たなツアー構想
― YAYAさんの今後の展望を教えてください。
今後は、日本酒の魅力を海外の方に正しく伝えていくことに力を入れていきたいと考えています。
現在、茨城の酒蔵とご縁があり、日本酒アンバサダーのような立場で活動を始めています。日本酒は単なるお酒ではなく、神事や歴史、地域性、職人技が詰まった日本文化そのもの。ツアーでも「おいしい」だけで終わらせず、背景やストーリーまで伝えることで体験の深さが変わると感じています。
今後は、東京でのテイスティングやペアリング体験を入り口に、酒蔵見学やマイボトルづくりなど、造り手と直接つながれる地方ツアーにも広げていきたいと考えています。
また、日本酒に限らず、地域の食材や生産者、田園風景など、都市以外の日本の魅力も発信していくことで、地方誘客やオーバーツーリズムの緩和にもつなげていきたいです。
一方で、ガイドとしての自身の課題は「知識のさらなる深化」です。ポップカルチャーや食の分野は得意ですが、歴史や宗教、地理といった専門的な質問にもしっかり答えられるよう、今後は資格取得や学習を通じて、より幅広いニーズに応えられるガイドを目指します。
▲海外に日本酒の魅力を伝えることを次の目標に
特別な資格がなくても始められる ツアーガイドという仕事
― 観光の現場に立つ視点から、今この業界に関わっている方、そしてこれから観光業界を志す方に向けて、メッセージをお願いします。
観光業界を目指す方にお伝えしたいのは、「難しく考えすぎなくて大丈夫」ということです。特にツアーガイドは「資格が必要」「英語が堪能でないといけない」など、ハードルの高いイメージが強く、実際にSNSを通じて「どうすればガイドになれますか?」というご相談をいただくことも多いです。皆さん、想像以上に構えてしまっている印象があります。
私自身も、もともとYouTube撮影で海外の方と交流していた延長でガイドを始めたので、最初から「仕事にしよう」と意識していたわけではありませんでした。
大切なのは、「日本が好き」「日本のことを伝えたい」「外国の方と話してみたい」というシンプルな気持ちです。知識やスキルは後からいくらでも身につけられます。
まずは、街で困っている人に声をかけてみる、好きなアニメや音楽の話題で話しかけてみるなど、「ちょっと話してみよう」くらいの気軽な一歩から始めてみてください!
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