インバウンドニュース
世界最大の観光映像祭で、日本の観光マナートラブル軽減を目指す映像が2位に。コロナ禍の観光地分断の要因を探る快作に
2021.01.06
世界最大の観光映像祭ネットワーク(CIFFT)が主催する第33回世界ベストツーリズム映像賞で、大阪府立大学大学院経済学研究科准教授、花村周寛が監督した観光映像「Seeing differently」が2位を受賞した。およそ160の国と地域から出展された3500本から選ばれたもので、地域への来訪者と地域住民との間にある「ものの見方」の違いをテーマにした3部作の映像作品だ。CIFFTは、1989年にオーストリアで設立され、欧米を中心とする14の国際観光映像祭の連合体で、観光に関わる商品・サービスへ大きな影響を与える映像コンテンツを評価、表彰する「世界ベストツーリズム映像祭」を主催している。
コロナ禍で旅行と観光需要が激減し、外国人旅行者の入国制限によりインバウンド関連が大打撃を受けるなか、日本在住者による国内旅行に注目が集まっている。しかし、その旅行条件も感染状況により刻々と変化しており、様々なシーンで安全・安心な旅行への対処が迫られている。国内旅行者の移動にともない、観光地での「東京差別」や「県外ナンバー狩り」など、旅行者と住民の間で「分断」が起きているのも事実だ。
2019年までの世界における「オーバーツーリズム」では、生活習慣や文化の違いからくる外国人旅行者のマナー違反などによる、受け入れ側のストレスが兆候として取り上げられ、軋轢の解消が課題とされてきた。2020年のコロナ禍以降でも、来訪者と受け入れ側の見解の違いからくる、同様のストレスが発生している。
本映像は「まなざしのデザイン」という概念で、人々のモノの見方を変えていく研究から生まれた作品。ある状況での視点の違う立場からの「考え方の違い」を浮き彫りにし、その出来事に対する「気づき」を促す。「路地編」「寺院編」「商店街編」とあり、典型的な行動から登場人物の心の中を想定し、その理由を観光客、地元民、観光業者の各視点から探るもので、各々の偏りがちな視点を分析し、原因は単一ではないと提示していく。それぞれの立ち位置からの「心のあや」をつぶさに見ていくことで、お互いへの寛容な視点を持とうと提示するメッセージが、海外でも高評価となった。
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