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「遺跡」を観光資源に、海外事例からひも解く日本の考古学観光の可能性

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株式会社日本政策投資銀行(DBJ)が「日本の考古遺跡における考古学観光(Archaeological tourism)の可能性~インバウンド富裕層の誘客に向けた施策提言と奈良県・明日香村の事例~」と題した調査レポートを発行した。

海外では、ギリシャ・ペルー・エジプトなどといった大規模遺跡はもとより、中小規模の遺跡においても、考古遺跡を観光に活用し国外から集客に成功している観光地が多く見られる。その一方で、日本の考古遺跡を訪れるインバウンド客は多くない。考古学観光は、入場料などの観光収入が遺跡の維持保全費用の原資となるとともに、遺跡の認知度の向上によって保全への機運が高まることなどから、遺跡保全と観光振興を両立し得るサステナブルな観光としても注目されている。

世界的に有名な遺跡を活用した観光活性化の事例

今回のこのレポートは、海外の成功事例調査や海外考古学ツアー会社へのヒアリングなどを踏まえ、考古遺跡を訪れる旅行者の特徴や受け入れ側に求められる条件を整理し、日本におけるインバウンド向け考古学観光の振興に向けて必要となる体制整備や観光施策について提言を行っている。

海外の成功事例として挙がっているのは、イギリスのストーンヘンジ、古代都市遺跡が点在するアルバニアのブトリント国立公園、古代のモザイク画を収蔵する世界最大級の博物館であるトルコのゼウグマ・モザイク博物館だ。

ストーンヘンジでは2013年12月にビジターセンターが新設され、これにより周辺地域であるウィルトシャーへの宿泊者数が10%増加したという。アルバニアのブトリント国立公園は多言語の案内板、ガイド、博物館の内容が充実していると共に、マリンアクティビティなど自然を活用したレジャーが評価され、来場者が増えている。コアな考古遺跡ファンだけでなくライトな層に訴求することも考古学観光の振興において重要であることを示唆する好例だ。トルコのゼウグマ・モザイク博物館は、メディアへの露出による知名度の向上が大幅な来場者数の増加に繋がっており、情報発信の重要性を示唆している。

日本の考古学観光の可能性、奈良県・明日香村で分析

以上を踏まえ、日本の考古学観光の成功例となり得る地域として、奈良県・明日香村を取り上げている。

ここでは遺跡の魅力を伝えるための背景にあるストーリーの伝達について、特区制度を利用した公認通訳ガイドの育成に取り組んでいるほか、遺物を展示し多言語解説を行う資料館の整備が進んでいる。さらなる取り組みとして、海外考古学ツアーでは一般的な「考古学者によるアテンド」を可能にするための専門的人材の確保や古墳・飛鳥時代の全体像を理解できる博物館などの施設の整備が期待されるとしている。また、特別な体験の提供については、遺跡の限定公開やデジタル技術の活用の取り組みは進んでいるものの、客が参加しやすい体験型・参加型プログラムの整備については言語面や情報アクセス面での課題を指摘した。

また、考古学観光を通じてインバウンド富裕層を呼び込むことは、観光公害を引き起こさない持続可能な形を保ちつつ、観光消費額の増加により地域経済の活性化に繋げるという重要な意義を持つと展望している。

 

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