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企業の人手不足を調査、正社員が足りない企業は半数超。飲食店、宿泊施設の不足率は緩和傾向に

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株式会社帝国データバンクが企業2万7008社を対象に人手不足に関する動向調査を行い、その分析結果を発表した。有効回答数は1万1133社で、調査期間は10月18日~31日となる。全体的には、正社員不足の企業の割合が51.7%と高止まりが続いている。一方、非正社員の人手不足は29.5%で、13カ月連続で前月を下回り、緩和傾向にある。

 

人手不足割合8割越えだった飲食と旅館・ホテル業界で改善の兆し

正社員の人手不足割合を業種別に見ると、「情報サービス」の70.2%が最も深刻だ。SE不足が顕著で、開発案件の増加に伴い人材不足が慢性化している。2番目は技術者不足や就業者の高齢化などが問題となる「メンテナンス・警備・検査」で69.7%、労働時間規制など2024年問題に直面する「建設」69.6%と「運輸・倉庫」65.8%、「金融」も67.1%と、5業種で人手不足が7割近くとなった。

一方、非正社員では、上位10位中9業種が前年同月比で不足率が低下し、人手不足の緩和がみられた。トップは「飲食店」で64.3%(前年同月82.0%)、「旅館・ホテル」が60.9%(同73.5%)と、緩やかな下降傾向にある。次いで、「人材派遣・紹介」が55.2%(同64.2%)、「メンテナンス・警備・検査」が54.1%(同54.9%)、「娯楽サービス」は前年より上昇し52.0%(同44.0%)、「飲食料品小売」が48.9%(同50.0%)となった。

アフターコロナの到来後、非正社員部門の業種別では、「飲食店」「旅館・ホテル」の2業種での人手不足割合が8割を超えるなど、深刻な状況が続いていた。しかし、現在では、これらの業種が6割台にまで減少しており、緩やかな改善傾向が見られる。高いインバウンド需要があるなか、業務効率化に向けたツールの導入や多様な働き方の普及などが、人材不足解消の兆しの一因と考えられている。

 

最低賃金の上昇や「103万円の壁」、今後の人手不足動向にどう影響する?

人手不足は企業に深刻な打撃を与えており、2024年の「人手不足倒産」は10月時点で287件に達し、2年連続の過去最多を記録した。2024年問題を抱える「建設・物流業」は全体の4割以上を占めている。政府は、2030年代半ばまでに最低賃金の引き上げを検討しているが、特に中小企業にとっては経営を圧迫する可能性もあるため、人手不足がさらに深刻化する可能性も懸念されている。

また、「103万円の壁」と話題となっているように、所得税の基礎控除合計が変わらなければ、労働時間減少にも繋がる可能性がある。インバウンド需要が大きい飲食店や宿泊業、娯楽サービス業など、観光業界に大きく関わる業種では、非正社員の雇用も多く、控除合計の上限引き上げに期待が寄せられる。

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