インバウンドニュース
ホテルのウェルネスに世界初基準、国際認証で“本物志向”を可視化
2025.09.04
やまとごころ編集部本格的なウェルネス体験を提供する宿泊施設の新たな基準として、国際団体WITT(Wellness in Travel & Tourism)とWellness Tourism Association(WTA)が「Core Wellness Standards for Hotels(ホテル向けコアウェルネス基準)」を共同で発表した。
両団体が主導するこの取り組みは、ホテルがウェルビーイングに真摯に取り組んでいることを可視化するための世界初の共通フレームワークとして注目されている。
この基準は、WITTが策定した100を超える詳細な認証項目の中から、宿泊施設が「真にウェルネスを重視している」と認められるための基本要件を抽出・整理したもの。全体は5つの主要領域に分類され、具体的な評価指標として12の要件が設定されている。
食・自然・地域連携を評価軸に ウェルネス支える5領域・12要件
本基準は、ホスピタリティや栄養、フィットネス、持続可能性の専門家からなるWITT(Wellness in Travel & Tourism)諮問委員会の監修により開発された。評価の枠組みは、以下の5つの柱から成る。
健康的な食事
1.栄養価の高い配慮された食事の提供
2.地元の健康志向の飲食店推奨
3.施設全体への清潔でろ過された水の供給
ホリスティックヒーリング(心と体の両面を癒すアプローチ)
4.清潔で快適な雰囲気の維持
5.安眠環境の整備
6.温かみのある接客の実践
自然とのつながり
7.バイオフィリックデザインの室内への導入(植物や自然素材、自然光など人と自然のつながりを感じられる設計)
8.緑地への容易なアクセスの確保
運動
9.身体活動のためのスペースやプログラムの提供
地域への影響
10.地元資源や備品の優先活用
11.地元文化・人々への敬意
12.環境保護と保全の取り組み
これらは、単に“ウェルネス”を謳うだけのホテルとの差別化を図る指標であり、ゲスト体験全体にウェルビーイングを浸透させる方針を具体的に示すものとされている。
“見せかけのウェルネス”に歯止め 本物を見極める国際認証制度
ウェルネス旅行がグローバルで急成長する一方、実態を伴わずに「健康によさそう」「癒しになりそう」と誇大に訴求する「ウェルネスウォッシング」(健康を装った見せかけのマーケティング)が業界課題となっている。WITT副社長オクサナ・スパイビー氏は、「ウェルネス旅行はもはやニッチではなく、世界中の数百万人にとっての優先事項。今回の基準は、真にウェルビーイングを支える体験をホテルが創出するための信頼できる道筋となる」と述べる。
また、WITT創設者であり、WTAの会長兼CEOも務めるロビン・ルイス氏は、「今回の基準は、ホスピタリティ業界におけるウェルネスの定義に一貫性と透明性をもたらすものであり、信頼性とイノベーションを促進する」と強調した。
現在、世界中のホテルから認証申請を受け付けている。
<編集部コメント>
“ウェルネス認証”が宿泊施設の信頼性を左右する時代に
かつて「サステナブル」が広く浸透した一方で、その中身を伴わない“サステナブルウォッシュ”が課題となった。いま、同様の構造が「ウェルネス」の分野でも起き始めている。定義が曖昧なまま濫用される言葉に対し、信頼性を担保する基準として注目されるのが今回の国際認証だ。
ウェルネスは、サステナブルに続く観光業界のキーワードとして存在感を増している。旅行者が癒しや心身の回復を求める傾向は今後も続くとみられ、施設にとっては、いまからどのように取り組み、受け入れていくかが問われる段階にある。サステナブルの普及過程をひとつの参考にしながら、ウェルネスの実践と発信を進めていくことが、今後のヒントとなりそうだ。
(出典:Wellness Tourism Association, core wellness standards for-hotels)
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アジア太平洋地域(APAC)の富裕層旅行者もウェルネスを重視しています
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