インバウンド特集レポート

フードツーリズムの新しい動き 「食」はインバウンドのキラーコンテンツか?③

2014.12.23

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飲食店のインバウンドの取り組みに終わりはない!

クリエイト・レストランツ・ホールディングスはインバウンドについて積極的だ。2010年当時は、インバウンド売り上げは年商1億にも満たなかったが、昨年の2013年は3億円の売り上げを達成した。今年は目標の4億強に対して、達成しそうな勢いだと営業推進部の瀧本由佳氏。

もともと、お台場のヴィーナスフォートのポルトフィーノという洋食レストランに外国人が訪れていて、個人・団体と、直接、店舗に予約が入っていた。口コミで人気になったようだ。
そこで、インバウンドが今後も伸びると見込んで、会社として積極的に取り組むようになり、新しくインバウンド担当として瀧本氏が抜擢された。

外国人が多く訪れる地域に絞り、まず当時は、都内の10店舗からスタート。店舗情報を整理したパンフレットを作成し、都内の旅行会社を中心に足を運んだ。ランドオペレーターへの営業である。立地、メニューなどが明記された営業ツールなどを配布。

東日本大震災や尖閣諸島問題などで、中国からの観光客が減り、当初は売り上げとしては伸び悩んでいた。しかし、2012年から需要が回復。
現在は、全国の観光地にインバウンドの強化店として40店舗まで増やした。

当初は、店舗のスタッフがうまくコミュニケーションを取れなくて困ったそうだ。責任者もインバウンドへの理解がなかった。
最初は簡単なマニュアルを作成し、初めて受け入れる店舗は、瀧本氏が同行してサポートした。
外国人の需要が増えてきたことで、スタッフも慣れていったようだ。ガイドさんとコミュニケーションもうまく取れるようになった。

同社では、ビュッフェが人気だという。日本の料理はボリュームが足りないことが要因かもしれない。
次の取り組として、台湾そして東南アジア各国のお客様向け、カニとしゃぶしゃぶ食べ放題の特別プランを営業強化している。通常よりも料金が高めの設定になっているが、日本を代表するメニューとして人気が出るだろう。

食べ放題を強みとしているが、新しい試みとして、「飲食×体験」を始めたのだ。
着実にインバウンドの業績を伸ばしている飲食店といえども、新しい取り組みに余念がないようだ。

 

料理教室で日本の食文化を体験!

飲食店とはやや異なるが、家庭で行う日本食の料理教室が人気になっているとトリップアドバイザーの広報担当。これも「飲食×体験」と通じるものがある。

その一人、松田有加さん(”Cooking School YUKA MAZDA” )は、東京の港区の自邸で料理教室を開催し、トリップアドバイザーで高い評価を誇っている。料理研究家として書籍も出されている方だ。

元々は、日本人向けの料理教室をしていたが、外国人向けも始めることに。
きっかけは、日本はグローバル化といいながら、準備が整っていない現状にはがゆさがあり、そこで自分にできることはないかと考え、英語と料理となったそうだ。
海外生活もあり、そこでは、外国人を受け入れる環境が整っていて、たとえ田舎の路地裏であっても歓迎の心遣いがある。いっぽう、日本は閉鎖的と感じていた。

自分ができることとして、始めた外国人旅行者向け料理教室。
最初は、ホテルに案内をして、その後、口コミで別のホテルからもオファーが増えた。参加されたお客様からアドバイスをもらい、トリップアドバイザーにも掲載するように。

メニューは、日本の家庭料理。天ぷら、寿司、肉じゃが、焼き鳥などを教える。原材料には良いものを使い、必ず自分で買い物に行って吟味する。

肉じゃがには神戸ビーフを使い、神戸の観光についてもレクチャーするそうだ。その後、神戸に行かれた方もいたとか。京風に白味噌を使う場合、京都の食文化について説明するなど、解説も深いのだ。出汁の取り方について、国に帰っても再現できるように、きめ細かいアドバイスをする。包丁の研ぎ方も教え、その後、日本の包丁を買われて帰る方もいるようだ。まさに料理を通した食文化の架け橋をされている。

海外から料理のプロの方も来られ、幅を広げるために学ぶそうだ。また日本食料理屋さんを始めたいという方も。
今後、ますますニーズが高まりそうだ。

 

マーケットインの考え方が、外国人には重要!

ところで冒頭で述べた「博多一風堂」であるが、最後に言及すべき点がある。ベジタリアンメニューも開発しているのだ。
横浜のラーメン博物館で「NARUMI-IPPUDO」を2014年10月下旬に開店。ここで提供するのが、野菜のみで完成させたスープだ。一風堂の代名詞でもある「とんこつ」を“封印”した。
それは「『まさか…!』のコクと深み~ベジタリアンヌードル~」というメニューで、880円で売り出し、外国人客にも人気だという。
スープを一口すすった瞬間、「これは本当にベジタリアンラーメンなのか?」と驚くコクと深みがある。

10月にロンドン1号店を出したほか、来夏にはパリにも進出する計画だ。まさにヨーロッパに向けたベジタリアン対策もしていたのだ。

現地側がどんなニーズがあるのかを掴み、日本食のさらなる進化をさせる。それこそが、食のインバウンドにつながるのかもしれない。日本食が世界無形遺産だからといって、決してあぐらをかいてはいられないのだ。

Text:此松武彦

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