インバウンド特集レポート
訪日客からの人気を集めるお菓子。前回は、彼らがどこでどんなお菓子を買っているのか、空港やその近辺の商業施設の売り場の様子などを紹介した。ところで、日本のお菓子が人気の理由は何だろう。外国向けメディアの関係者や海外のネット情報などから、人気菓子の数々を紹介してみたい。そこから何が見えてくるだろう。
日本を訪れる外国人のうち、9割近くを占めるのがアジア系の人たちであり、免税店や街場の量販店でみやげ買いにいそしんでいる姿を見かけるのはたいてい彼らである。だからといって欧米客がお菓子を買わないわけではない。
国や地域を問わず人気の抹茶味のお菓子
欧米客の中で最も訪日客数の伸び率の高いロシア人がそうだ。
「ロシア人は日本のお菓子をよく買いますね。抹茶系なら、何でも人気です。ロシアにはない面白い味をするお菓子。たとえば、桜味や抹茶味、わさび味のキットカットとかポッキーとか。大福餅も人気があるけれど、持ち帰りにくいので、ホテルで食べたりします。それから、日本のチョコレートは質が高いと話しています。アルフォートとか、生チョコのROYCEは特に人気が高く、日本の代表的なお菓子だとロシア人は思っています」
(※ ロシア語の日本情報誌「KIMONO」の副編集長のアナスタシーア・ストレブコーワさん:過去記事参照:訪日ロシア人が20%以上増える理由とは? 「ありのままの日本」を伝えるロシア語メディア編集者に聞く日本の魅力)
▲ROYCEの生チョコレートはロシア人も大好き。実際、日本に近い極東ロシアの町では販売店もあるが、かなり高い
▲アルフォート(ブルボン)もさまざまな味があり、人気商品となっている
▲ポッキーの抹茶味も外国人観光客に人気
▲チョコと大福を合わせた「幸せ和ショコラ」、しかも抹茶味
どうやら抹茶味は洋の東西を問わず人気のようだ。最近、日本でもネット通販でロシアのチョコレートが人気と聞くが、彼らは日本製のほうがいいと思っているらしい。日露の味の違いを双方がそれぞれ評価しあっているのだとすれば、面白いことだ。
中国、台湾のブログに見る人気の日本のお菓子
では、1人あたりの買物代が最も高い中国(2018年11万2104円 観光庁調べ)はどうだろう。中国のネット上で日本の人気菓子のランキングを見つけることができる。たとえば、2019年空港で買える日本の人気菓子大集合(2019超人气日本机场必买拌手礼大合集)という中国のブログ記事があるが、この記事には以下のお菓子が推薦されている。
白色恋人(白い恋人)
Tokyo Banana 东京香蕉蛋糕(東京ばな奈)
THE STARWVERRY CAKE from GINZA(銀座のいちごケーキ)
Tokyo Milk Cheese Factory(東京ミルクチーズ工場のクッキー)
LeTAO 北海道小樽草莓白巧克力(小樽洋菓子舗ルタオのプチショコラ アソートセット)
Campanella巧克力饼干(東京カンパネラ)
S’more 烤棉花糖(焼マシュマロ・タルト スモア)
治一郎年轮蛋糕(治一郎のバームクーヘン)
吉野堂小鸡蛋糕(名菓ひよ子)
Pocky 日本限定(ポッキー)
Royce生巧(ROYCE 生チョコレート)
Potato Farm 薯条三兄弟(じゃがポックル)
伊藤久右卫门(伊藤久右衛門の抹茶大福)
Pablo(チーズタルト専門店パブロ)
KitKat
スイーツ好きの女性ならご存知のラインナップかもしれないが、中国客はこれらのリストを見ながら空港でみやげ買いにいそしんでいることがわかる。だが、驚くのはまだ早い。台湾のネット上にはさらに詳しいお菓子情報がある。たとえば、ある台湾のKOLが書いた東京必買い2019年みやげ菓子(東京必買2019日本夯翻天!東京零食藥妝伴手禮)という記事だ。
バターサンド専門店Press Butter Sand
Newyork Perfect Cheese
東京ばな奈
ザ・メープルマニア
東京カンパネラ・スカイツリー
東京ミルクチーズ工場のクッキー
神戸「ワッフル・ケーキの店 エール・エル」(東京駅限定)
カファレル(イタリアのチョコレート菓子)
銀座チョコレートサンド
東京レンガぱん
Yoku Moku
ディズニー菓子
一部中国ブログと共通するお菓子もあるが、さすがは台湾発の情報だけに、「バターサンド専門店Press Butter Sand」「Newyork Perfect Cheese」のような行列のできる店の商品まであるのは驚きだ。彼らは行列してまで土産を買うのだろうか。またYoku Mokuは台湾にも出店していて、日本では少し安いので購入して帰る人が多いらしい。
ご当地お菓子がランクイン、日本土産に詳しい台湾の事情
もっと詳しい情報源もある。2018年版日本必買いお菓子55選!(日本必買零食55選!2018年最新推薦零食・土産介紹)という記事はJapaholic(日本中毒)というサイトで紹介されていたもので、2018年時点のおすすめお菓子のランキングだという。
商品数が多いので、ここではすべてを挙げないが、1位が「日経トレンディ」の 2015年ご当地ヒット大賞を受賞した「イカ天 瀬戸内レモン」(まるか食品)がランキングしているように、ご当地菓子があること。
しかも、日本のトレンドをよくフォローしていることがわかる。また、デパ地下で購入するような高級菓子だけでなく、コンビニ菓子やスイーツ、各種大手製菓メーカーの看板商品、さらには「博多明太子 芳醇生さきいか(明太子花枝)」のような乾き物まである。台湾の人たちは日本のお菓子についてどこまで詳しく知っているのかと驚かされてしまう。
この点について、中国出身のインバウンドKOLとして活躍している宗杏梅さんに聞くと「さすがは台湾人。日本に住んでいる私よりずっと日本のことに詳しい。中国では、北海道のようにブランドを確立している地方ならまだしも、ご当地菓子はまだ知られていないし、関心が及んでいない」という。
日本のお菓子が外国人に人気の理由
日本のお菓子が人気の理由について、彼女は次のように話してくれた。「最近少しよくなったとはいえ、中国のローカル菓子は甘すぎるし、国営企業のつくる老人向けという印象があり、若者に好まれるのは欧米からの輸入菓子しかなかった。でも、値段はかなり高い。その点日本のお菓子はそんなに高くないのに、おいしい。箱もきれいで高級感があり、みやげにもらえると誰もが喜びます」
また、中国人は海外旅行に行くと、みやげを多くの人に配らなければならないが、日本のお菓子は個別にパッケージされている商品が多いので、重宝するという。
それにしても、中国や台湾では、なぜこれほど詳しい日本のお菓子情報が流通しているのだろうか。誰がそれを発信しているのか。次回はそうした裏事情を紹介しよう。
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