インバウンド特集レポート
本格的なインバウンド再開から1年が過ぎた。円安と旺盛な海外旅行需要、日本人気などに支えられて訪日客数は急速に回復、インバウンド消費も大きく伸びた1年だった。2023年を振り返り、2024年はどのような1年になるのか。各市場の専門家による市場予測と観光・インバウンドに携わる事業者に向けてのメッセージを紹介する。
誠亞國際有限公司 代表 矢崎 誠
台湾からの訪日旅行、団体からFIT重視の動きも
2023年1月から10月の訪日台湾人数は、コロナ前の2019年同時期と比較すると82%まで回復している。これは全出国者数の比較である66%を大きく上回っており、コロナ後も日本は人気海外旅行先No.1の座をキープしている事が分かる。特に2023年9、10月の訪日客数は2019年同月の人数を超過しており、訪日市場はほぼ完全復活したと言っていい水準となっている。
旅客の動きを見ると、世界的に航空運賃が高止まりしていることから、特に30代以上の層を中心に、一回の旅行期間を少し長く設定する、また円安メリットを活かして単価の高い食事を楽しむなど、旅行の「プチ贅沢化」の傾向が見られており、2024年以降も続いていくと考えられる。
航空業界では新規参入のスターラックス航空が本格的に日本市場へ進出するとともに、LCCのタイガーエア台湾も積極的に地方空港便を就航させるなど、競争が活発化している。また、大手航空会社ではFIT需要が望める地方定期便路線について団体座席枠を減少させるといったFIT重視の動きも見られている。
旅行業界においては団体旅行販売を中心とする業界構造からは脱却していないものの、その中でも「手配旅行(社員旅行・インセンティブツアーなど)」「小グループツアー」「航空座席買取型の募集型企画旅行」の割合が増加し、従来の定期便利用の募集型企画旅行は減少傾向にある。また、日本国内の団体宿泊施設や観光バスの予約が困難である点や、社内の人手不足を挙げる会社も多く、今後も取り巻く環境は厳しいと予想される。
地方誘致は、空港からの周遊経路を確認と、ターゲットの精査を
2024年の訪日客数は、順調にいけば過去最高を記録することが予想される。特にアフターコロナの都市型(東京・関西)旅行需要が安定し、地方の需要が加速するであろう。ただしこれは、地方路線がどれだけ増便・就航するかがキーポイントとなるため、地方空港の受入体制の回復も重要な要素となってくる。
そのため、訪日誘致に当たっては最新の就航状況を把握し、自エリアのみならず、旅客が空港到着から出発までどのように周遊しているのか、また市場がFITメインなのか団体メインなのかを精査の上実施していくことが肝要である。
また受入面では、現在多くの観光事業者が人手不足に直面しており、今後業界に不慣れな新人が増加する可能性がある。AIやインターネットツールを活用した業務効率化を推進する一方、ベテラン層が有しているインバウンドに関する基礎知識や外国人対応ノウハウに関する教育を強化していく必要があるだろう。
著者プロフィール 2004年に前職のJR北海道にて初代インバウンド営業担当として任命され、以来18年間訪日旅行プロモーション業務に従事。2014年に「誠亜国際有限公司」を創業し独立。香川県観光協会、高知県観光コンベンション協会、三重県観光局、神戸観光局の現地レップなど、主に自治体関連のインバウンドプロモーション事業サポートを中心とした事業を展開する。台湾在住歴15年。著書に『はじめての台湾マーケティング』(Kindle版)。 |
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