インバウンド特集レポート
中国発の電子マネーの決済システムが日本で普及し始めている。中国ではキャッシュレス化が加速度的に進んでおり、現金を持たずとも、スマートフォンさえあれば生活できそうな勢いだ。その流れが日本にもやってきており、外国人が多い小売店や商業施設では、電子マネー決済の導入が進む。
Part1では、驚くべきスピードで電子マネー化が進む中国市場の状況について紹介。Part2では、日本でも普及が進む中国発の2大モバイル決済サービスの一つ、アリペイについて詳しく紹介。
Part3(本編)では、アリペイに続くもう一つの中国の2大モバイル決済システムであるWeChat Payを紹介。中国でシェアを急速に伸ばしているWeChat Payの一次代理店である株式会社アプラスにてペイメント事業開発部で部長を務める福永氏にお話を伺った。
中国で圧倒的な存在感を誇るWeChatからうまれたWeChat Pay
WeChat Payも、アリペイと拮抗してユーザーを獲得しており、両方のスマホアプリを持っている中国人が多い。アリペイとWeChat Payの使い方に大きな違いはない。中国の旧正月にも、日本の紅白歌合戦に似た人気番組があるが、WeChat Payを運営するテンセント社は、この番組の広告枠でWeChat Payに登録したらお年玉を受け取ることができるプレゼントキャンペーンを実施して、一気に利用者を拡大した。
アリペイがECサイト「アリババ」内で買い物するユーザー向けに始められた電子マネーであるのに対して、WeChat Payは日本のLINEにあたる「微信(中国語:Weixin、英語名:WeChat)」の支払い決済システムとしてテンセントホールディングス(騰訊控股有限公司)が始めたものだ。
中国最大のチャットサービスである「微信(WeChat)」は、中国国内で圧倒的な存在感を誇っている。日本で普及しているLINEにもLINE Payというお金の支払いができる機能があるが、「微信(WeChat)」の決済機能にあたるサービスがWeChat Payだ。
子供へのお小遣いも電子マネー化⁉
電子マネーWeChat Payスタートのきっかけは、「微信(WeChat)」を利用することで貯まるポイントだった。当初は友人同士でポイントを交換できるコミュニケーションツールとして使われていたが、やがて、テンセント社がタクシーの配車サービスを手掛ける会社と提携したことで、タクシー代金の支払い決済にもポイントを利用することができるようになった。
現在では多くの決済機能を持っているサービスに発展し、WeChat Payを銀行口座とリンクさせておくことで携帯電話の料金の支払いや、店舗での支払いはもちろんのこと、親から子供へ渡すお小遣いもWeChat Payでという家庭もけっして珍しくないという。
WeChat Payのサービスがスタートしたのは、2013年8月。その後、中国国内での導入店舗は交通機関なども含め一気に広がり、2016年末時点で100万店舗が登録しているという。日本での展開は、多くの中国人旅行者が日本を訪れる国慶節にタイミングを合わせた2015年9月末からスタート。当初は、大丸松坂屋といった百貨店や量販店等の中国人の利用が多い店舗で導入された。
現在は約6億人がWeChat Payを利用
現在、中国での微信(WeChat)の登録者数は9億人、そのうち、6億人がWeChat Payを利用しているそうだ。
アリペイやWeChat Payなどを含めた中国におけるすべてのモバイル決済額は2016年から2017年にかけて、わずか1年で100兆円から300兆円に急成長したという。そのうちアリペイのシェアは52%、WeChat Payは41%のシェアを持っている。2016年のアリペイのシェアは60%あったので、いかにWeChat Payが急激にシェアを広げているかが分かる。
WeChat Payの強みは、皆が毎日のように使うSNSサービス「微信(WeChat)」から発展したということだ。毎日、1人あたり90分は微信(WeChat)を使うといった統計データもあり、そこに連動したWeChat Payは、使い慣れたサービスという優位性もある。
日本の小売店からの問い合わせも急増中、さらなる拡大も期待
日本でWeChat Payのサービスが開始した2015年、サービス導入店舗は約200店だったが、2017年には、1万店舗を超えるのではないかと福永氏は予測している。
中国人観光客のほとんどが持っていると言われる銀聯カードによる決済は、日本国内の加盟店が40万店舗以上あることを考えるとWeChat Payの伸びしろはまだまだ大きいとの予測からだ。
最近では、WeChat pay未導入の店舗からの問い合わせも増えているという。店舗側にとってWeChat Payは、決済手段だけではなく、微信(WeChat)のアカウントを利用した情報サービスの提供、来店促進につなげることも期待できる。
中国人観光客に人気のドン・キホーテでは、37店舗でWeChat Payの利用が可能となっているが、この半年で、WeChat Payでの支払いが6倍以上増加。利用者の急増を実感しているという。
また羽田空港を運営する日本空港ビルディング株式会社によると、羽田空港の免税店では、WeChat Payの導入率が75%に。
東京にある、とある和太鼓教室では、観光客向けの体験レッスン代を支払うのに、WeChat Payでも決済できるなど、利用シーンの広がりを見せている。
Part1~3では、中国の2大モバイル決済サービス、アリペイとWeChat Payを紹介してきた。
このように、中国人向けの電子決済サービスが盛り上がっているが、欧米で人気がある決済サービスPay Pal(ペイパル)も、日本での普及が広がっている。Pay Palで広報を担当する新保氏にお話を伺った。
…
(Part4:最終回へ続く):近日配信
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