インバウンドコラム
著者:竹田 英司
出版社:同友館
著者の竹田氏は地域に深く関わり、地場産業を活かしたツーリズムの研究を行う長崎県立大学の准教授。
本書では、一貫して「地域の稼ぐ力」にフォーカスし、調査・分析・提言を行っている点が興味深い。
具体的には、波佐見、有田、多治見における消費者意識・購買行動調査を通して各地の現状や課題を浮き彫りにしている。また、当該地域のキーパーソンへのインタビューも多数掲載されており、彼らが課題をどのように捉え、どんなビジョンを描いているのか、そういった臨場感が伝わる内容となっている。
また、団体向けの画一的なマス・ツーリズムではなく、個人向けに多様な「コト消費」「モノ消費」「トキ消費」の3つを合わせた生産地の産業観光化にこそ「地域の稼ぐ力」を伸ばすカギがあると説く。
強く共感したのは、これからは「地域に観光客数を増やすのではなく、観光消費額を増やす」という視点。観光消費額が増えなければ地域にお金が落ちず、地域の平均所得も上がらない。その消費額をどの分野でどれくらい上げる必要があるのかを調査結果から具体的に示唆している。
本書は、特に調査・データ分析から地域課題を浮き彫りにして、新たなビジョンや方向性、具体的な対策を考える仕事に従事する方にお勧めしたい。また産業観光に携わる方はもちろん、まちづくりや地方創生に興味を持つ方にも示唆を与える内容になっていると言える。
文:株式会社やまとごころ 代表取締役 村山 慶輔
最新記事
稼ぐ手段として注目される「ものづくり」の保存・継承・活用の未来を考える手引き『文化財の未来図』 (2024.05.08)
「サービス」を極める達人の神髄を探る「サービスの達人に会いにいく プロフェッショナルサービスパーソン」 (2024.04.24)
住民のプライド醸成し地域の未来を動かす「瀬戸内国際芸術祭と地域創生: 現代アートと交流がひらく未来」 (2024.04.10)
人との繋がりを原動力に地域連携、ブランディング構築への道筋描く「地域を動かすアイデアとクリエイティブ」 (2024.03.27)
訪日ビジネスで成果を出す54の秘策 公開 「小さな会社のインバウンド売上倍増計画」 (2024.03.13)
いま改めて読んでおきたい、2023年に紹介した観光・インバウンド書籍18選 (2023.12.28)
人口7万7千人の町が掲げる小さな世界都市戦略「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」 (2023.11.22)
周りのリソースをフル活用し、出来ることを積み重ねる「山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由」 (2023.11.15)