インバウンドコラム

withコロナ時代に向けた観光地の取組:オンラインを活用したコンテンツ配信で家にいながら観光気分を味わう

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猛威を振るう新型コロナウイルスの影響を受け、世界中の都市では厳しい外出規制が敷かれ、多くの人が自宅待機を余儀なくされている。自由に外出できないストレスから、人間関係や心身のバランスにも悪影響が出ている。さらに、多くの観光施設や商業施設は閉鎖が続いており、観光客と彼らを受け入れる施設の双方が、身動きの取れない状況に直面している。そのようななか、世界各地の観光地ではオンラインを活用したコンテンツ提供や配信がスタートしている。

今回は、旅行コミュニティプラットフォームAirbnbや、ニューヨーク市観光局、横浜美術館が始めた取り組みを紹介する。

 

Airbnb、オンライン体験提供で世界各地のホストの収入維持に貢献

Airbnb体験では、世界各地に住む地元ホストが自らの専門分野を活かしたユニークな現地体験プログラムを提供してきたが、新型コロナ感染拡大を受けて、4月30日まで一時休止となっている。そこでAirbnbでは自社のプラットフォームを活用し、約50件のバーチャル体験プログラムのオンライン提供を始めた。

オリンピックメダリストによるバーチャルサイクリングツアーや、NY在住アーティストによるスケッチ教室などがPC、スマートフォン、タブレットから予約でき、Zoomを介して自宅に居ながらにして、世界のトップアスリートや専門家と一緒にバーチャル体験ができる。日本の僧侶と一緒に瞑想する体験では約1時間のセッションで参加費は1人1000円。また、メキシコのコーヒーマスターから学ぶ美味しいコーヒーの淹れ方教室は1人358円で参加できるなど、世界30カ国以上から専門性を持った注目のホストが登場する。

また、孤立しやすい高齢者向けには参加費無料の体験プログラムも用意している。

Airbnbはオンライン体験実施に当たり、世界各地のホストにZoomの利用を無償提供する。また、参加者同士が直接触れ合わずに実施することで健康面の安全を確保すると同時に、ホストの収入維持をサポートしたい考えだ。

 

NY観光局、世界中の観光客に向けバーチャルでの文化体験を提供

ニューヨーク市観光局では市内の関係機関の協力のもと、文化関連施設やアトラクションをウェブサイトを通じて仮想体験をできる「バーチャルNYC」を開設した。多くの美術館や劇場が集まり、世界のエンターテインメントの中心地であるNYでも閉鎖状況が長引くにつれ、心理的に逃避したいと望む一般消費者は増えている。こうした状況を受けて、バーチャルNYCは、ニューヨーク市民や世界の観光客に向けて、自宅に居ながらにして楽しめるオンラインコンテンツを一堂に集めたサイトとなっている。ジャンルは美術館・博物館、映画、音楽、舞台芸術、演劇、ビジュアルアート、家族向け教育プログラムなど多岐に渡る。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)では所蔵コレクション約70点の作品について、受講者に無料で教えるオンラインコース「What is Contemporary Art?」を提供する。

また、メトロポリタン劇場は、毎晩異なるトップオペラパフォーマンスのアンコール上演をウェブサイトで配信している。各ビデオは毎晩現地時間の19時30分(JST 8:30)に投稿され、その後20時間閲覧可能だ。

世界最大の舞台芸術複合施設であるリンカーン・センターでは、室内音楽コンサートを毎日午後12時30分(JST 1:30)に、50年間のアーカイブから選んで配信している。その他にも、映画やブロードウェイ・ミュージカルなども無料のオンラインコンテンツが定期的に公開されており、自宅のリビングルームがコンサート会場になったようなバーチャル体験が楽しめる。

パブリック・ツアーのプログラミングと研究活動を行う「Turnstile Tours」では、公式ウェブサイトでは、毎日午前11時にニューヨーク市内のヴァーチャル・ツアーを主催している。海外旅行が難しい状況の中でも、一大観光地であるNYではオンラインを活用して観光気分が味わえるような新しいコンテンツが続々と登場している。

 

自宅でアートを楽しむ横浜美術館のオンラインコンテンツ

2月末から臨時休館が続いている横浜美術館ではオンラインで楽しめるコンテンツを公式ウェブサイトにて公開している。

この春に開催予定だった展覧会やアートイベントも中止や延期を余儀なくされたが、開催に向け準備を進めてきた作家インタビューや作品解説を中心に写真、テキスト、動画で見ることができるようになっている。例えば、東京スカイツリー®のデザイン監修でも知られる、抽象彫刻のパイオニアである澄川喜一氏のアトリエ訪問記やインタビュー動画、学芸員による所蔵作品の解説動画もyoutubeで配信している。

健康を守りながらも観光気分を味わえる手段としてオンラインコンテンツへのニーズは高まりを見せている。新しい動きの加速の一つとして、今後の動向にも注目したい。

(執筆:高沢由香 編集:堀内祐香)

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