インバウンドコラム
EU、デジタル証明書の運用を7月1日からスタート
EUは、バケーションシーズンを前に、域内を自由に移動できる共通のデジタル証明書「EU Digital COVID Certificate」の発行を承認した。現在は、国によって異なる入国基準を設けているため、バケーションシーズンに混乱が生じないよう、足並みを揃えるのが狙いだ。証明書の発行は各国でそれぞれに行うため、他国間でデータを共有することはない。証明書では、ワクチン接種の完了や、検査の陰性結果、感染から回復したことが証明できる。EUは今後、このデジタル証明書を域外の渡航者にも発行する考えだ。全面的な運用は7月1日から開始予定だが、加盟国は前倒しで導入することができるため、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、クロアチア、ポーランドの7カ国は、すでにこの仕組みを試験的に導入している。
EUは6月3日、第三国からEU域内への不要不急の渡航を認めるホワイトリスト(低リスク国)に、日本を含む8カ国を新たに追加した。ただし、入国時に陰性証明書の提示や隔離措置を求めるかどうかは加盟各国が個別に判断するため、注意が必要。また、EU諸国から日本へ帰国する際は、陰性証明書の提示と14日間の隔離措置が義務付けられる。
フランス、外国人観光客の受け入れを条件付きで再開
フランスは6月9日、EU域内と日本やオーストラリアを含む7カ国からの観光客に対し、条件付きで国境を再開した。EUが承認した4つのワクチン(ファイザー、アストラゼネカ、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン)のいずれかを完全に接種し終えたことを証明する公式の証明書を提示することが条件となる。さらに、入国時には、搭乗の72時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書、または48時間以内に受けた抗原検査の陰性証明書の提示が求められる。11歳未満の子供は、ワクチンを接種した大人とであれば一緒に入国できるが、11歳以上は陰性証明書を提示しなければならない。今回の規制緩和に伴い、条件を満たしていればこれまで入国時に必要だった7日間の自主隔離と、その間の2回のPCR検査が免除される。ただし、インド、南アフリカ、ブラジルを含む高リスク国・地域からの入国は、引き続き禁止されている。
同日には、飲食店の店内での営業がおよそ7カ月ぶりに認められたほか、夜間の外出制限の開始時間が午後9時から午後11時に緩和された。フランスでは、6月11日の時点で人口の約45%が少なくともワクチンを1回接種し、約21%が必要回数のワクチン接種を完了している。6月15日からは、12歳から18歳を対象としたワクチン接種が開始する。
イギリス感染者数再び増加。イングランドのロックダウン解除は4週間延期
イギリスではすでに人口の約61.6%の人々が少なくともワクチン1回目の接種を終え、約44.6%が必要回数のワクチンを完了している(6月11日時点)。ワクチン接種の増加に伴い、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は4月、5月で激減。6月1日には、昨年3月以降で初めて新型コロナウイルス感染症による死者がゼロとなった。
しかし、6月に入ってインドで特定された変異株(デルタ株)への感染が拡大し、感染者数が再び増加傾向となっている。デルタ株に感染した人の約3分の2が、ワクチンを1回も接種していないことがデータで明らかになっている。6月21日にはイングランドでのロックダウンの解除が予定されていたが、ボリス・ジョンソン英首相は14日、「ロックダウン緩和を4週間延期する」と語った。緩和が21日以降にずれ込めば各方面からの反発は必至だが、ジョンソン首相は13日の時点で「一度解除した制限を再び戻すことはできない」ため、政府は慎重に方針を決める必要があると話していた。
水際対策では、各国の新型コロナウイルス感染症の危険度を高い順から「レッド」「アンバー」「グリーン」の3段階で評価しており、「レッド」に該当する国からの来訪者は、居住権がある場合にのみ一定条件のもと入国が可能となるが、基本的には入国できない。一方、「グリーン」に該当する国から入国する際は、到着後2日目またはそれ以前に新型コロナウイルス感染症の検査を受ける必要があり、結果が陽性でない限り検疫する必要はない。
スペイン、海外からの観光客受け入れを再開
スペイン政府は、5月24日から日本とイギリスからの観光客に対し、隔離とPCR検査の陰性証明書なしでの受け入れを再開した。ただし、日本からスペインへの直行便は現在運休中で、経由地で陰性証明書の提示を求められる場合がある。6月7日からは全世界に対象を広げ、ワクチン接種証明書の提示を条件に、観光客の入国を認めている。ワクチン接種は少なくとも14日前に完了していること、もしくは過去6カ月間の間に新型コロナウイルス感染症に感染し、回復していることが条件となる。7月から9月にかけた夏のバケーションシーズンに向けて、観光を再開させたい考えだ。しかし、感染状況が依然として深刻なブラジル、インド、南アフリカからの観光目的での入国は認めていない。
ドイツ、デジタル・ワクチン接種証明書「CovPass」アプリを導入へ
ドイツのイェンス・シュパーン保健相は6月10日、スマートフォン用のデジタル・ワクチン接種証明書となる「CovPass」アプリを公開し、6月末までには、予防接種を完了したすべてのドイツ人が利用できると発表した。ドイツでは人口の約48.2%が少なくとも1回のワクチン接種を受けており、約25.7%が必要回数のワクチン接種を完了している(6月11日時点)。そのため、6月7日には、ワクチン接種の対象者を16歳以上の全ての希望者に拡大した。
ドイツ政府は6月6日、日本からの入国制限を解除し、到着後の隔離措置を撤廃した。日本から制限なしで入国が可能となったのは4カ月ぶりとなる。
イタリア、EU域外の外国人観光客の受け入れ再開へ
イタリア政府はEU域外の外国人観光客に対し、国境を再開する。すでにEU域内の外国人観光客の受け入れは始めているが、アメリカ、カナダ、日本からの旅行者を対象に、受け入れを再開する方針を明らかにした。夏のホリデーシーズンに向けて、観光の早期再開を目指すのが狙い。イタリアは新型コロナウイルスワクチン接種を証明する「グリーンパス(ワクチンパスポート)」をEUに先駆けて導入し、5月中旬から発行している。
IATA、欧州の国境規制緩和を歓迎。安全な観光再開に向けキャンペーン開始
国際航空運送協会(IATA)は6月9日、スペインとフランスの両国がワクチン接種済みの旅行者に対して国境の規制を緩和したことや、比較的安価な抗原検査を広範囲に使用するとの決定を歓迎した。一方で、欧州全体で統一された対策が実施されなかったことへの失望感や、データに基づくリスク管理のアプローチが、世界各国の政府間で調整されていないことへの不満も示した。
また、こうした中、国際航空運送協会(IATA)を含む4つ旅行および観光業界団体が、「ディスティネーションサマー」キャンペーンを開始。EUや各国政府と協力し、責任ある規則や公式の情報に従いながら、安全な観光の再開を訴え、デジタル健康証明書を利用して域内外の人々が再び往来できるよう促していくという。
サッカー欧州選手権、厳正な対策のうえ有観客で開幕
2020年6月開催予定が1年延期されていたサッカー欧州選手権、ユーロ2020が6月12日に開幕した。春まで各国で行われていたリーグ戦は無観客だったが、欧州で様々な旅行制限の緩和が進んでいる中、10カ国11都市で開催される今大会も制限付きながら観客を入れて実施されている。
観客数については開催都市の感染状況により25%〜50%の入場が許可され、海外からのサポーターの入国にあたっては、ワクチン接種、陰性証明書、限定的滞在日数など、各国ごとの水際対策に従うものとして、たとえ入場券を持っていても例外はない。国によっては海外からの入国を認めていないところもある。ユーロ2020の専用サイトで国別、スタジアム別の感染対策なども確認できるようになっている。
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