インバウンドコラム

米国、デルタ株の感染拡大で入国制限を延長、夏季休暇シーズンを迎え英国やEU圏は米の対応に不満

2021.08.04

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米デルタ株の感染急拡大。ワクチン接種希望者増加

ワクチン接種が進む米国では、6月には、1日の新規感染者が1万人程度にまで低下していたが、感染力の強いデルタ株の影響もあって7月に再び増加傾向に転じ、7月末には1日10万人を超える日もあった。

米政府は、米国でデルタ株が新規感染者の約83%を占め、新型コロナウイルス感染症による入院者数が前週より32%増加したと発表している。米国では春にワクチン接種率のピークを迎え、その後は鈍化が続いていたが、ここに来てデルタ株の蔓延で接種を希望する市民が増加した。現在は、陽性者のほとんどがワクチン未接種者であるため、「ワクチン未接種者のパンデミック」とも言われている。

同国では、8月2日に国内で1回以上ワクチンを接種した成人の割合が70%に到達。バイデン大統領は7月4日の独立記念日までに接種率70%を目指していたが、およそ1カ月遅れて目標を達成したことになる。

 

米、ワクチン接種やマスク着用の義務化

米国疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスに伴い、5月にホワイトハウスはワクチン接種済みの人は屋内外を問わずマスクを着用する必要がないとの指針を発表した。しかし、最近のデルタ株の感染急拡大により、米国では職員や従業員らにワクチン接種やマスク着用を義務化する動きが広がっている。

米IT大手のグーグルとフェイスブックは7月28日、オフィスで勤務する従業員に、原則としてワクチン接種を義務付ける方針を示した。ワシントン・ポスト紙も全従業員にワクチン接種をするよう義務づけたほか、ニューヨーク市なども、職員のワクチン接種または新型コロナウイルスの定期的な検査を義務化した。

ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)は7月27日、感染リスクが「高い」もしくは「かなり高い」とされる地域にある連邦機関に対し、職員や請負業者、来訪者ら全員に庁舎内でマスク着用を義務付けるよう指示した。国防総省や国土安全保障省も7月28日、職員らに施設内でのマスク着用を義務付け、ホワイトハウスに出入りする報道官にも施設内でのマスク着用を求めた。アップルも7月29日、米国の大半の小売店で、顧客とスタッフに対し、マスク着用を再び義務付けている。

 

米、外国人旅行者の入国禁止措置を延長

デルタ株の感染急拡大を受け、米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は7月26日、デルタ株の感染拡大防止のため、外国人旅行者の入国禁止措置を延長すると発表している。同国では航空会社や旅行業界から、夏のホリデーシーズンが終わるまでに制限を解除してほしいとの声が上がる中、サキ氏は「感染力が強いデルタ株が国内外で拡大している」「特にワクチンを接種していない人の間で感染が増加しており、今後数週間はその傾向が続くと見られる」と、延長の理由を述べた。

 

カナダはワクチン接種済みの米国市民の入国を許可

なお、米国では入国制限の延長に伴い、隣国のカナダ、メキシコとの不要不急の陸路入国制限についても、8月21日まで延長される。一方、カナダ政府はワクチン接種を完了したアメリカ人の入国を8月9日から許可すると発表した。これにより米国市民は、旅行目的であってもワクチン接種完了後14日以上経過したことを証明する書類があれば、14日間の隔離なしでカナダへの入国が許可される。

 

米国の入国制限延長に対し、英国とEU諸国が不満を表明

また、米国の入国制限の延長を受け、英国とEU諸国は不満を表明した。現在、EU諸国の人々は米国への入国を禁止されているが、米国人はワクチン接種証明書または陰性証明書があればEU諸国を訪れることができる。英国人も米国への入国を禁止されているが、ワクチンを完全に接種した米国人旅行者は8月2日から隔離なしで英国に入国することができるようになった。ヨーロッパ諸国はワクチン接種率で米国を上回っているため、相互主義の姿勢を見せるよう、米国政府に呼びかけている。

 

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