インバウンドコラム
欧米各国では、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。クリスマス休暇で人流が活発になったほか、感染力の強いオミクロン株の流行がその背景にある。今回は、米国の感染状況と、オミクロン株の影響などについてまとめた。
米国、1日の新規感染者が100万人突破で過去最多に
ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、米国では1月3日、新型コロナウイルスの新規感染者が100万人を突破し過去最多を更新、10日にはさらに113万人となり記録を塗り替えた。1日の感染者数として世界最多でもある。
1日あたりの死者は平均1700人で、過去最多を記録した2021年1月20日の約4400人に比べると半数以下となっているが、重症者数や死者数は感染者数が増加した数週間後に増加する傾向にあるため、保健当局と政府当局は今後医療ひっ迫の恐れがあると警告している。バイデン大統領は4日に行った演説で、「ワクチン未接種者の間で流行が続いている」とし、改めてワクチンを接種するよう呼びかけた。1月10日には入院者が13万2646人に上り、過去最多に達している。
医療機関で深刻な人手不足、学校や公共サービスに影響も
米国の医療機関は、オミクロン株の急拡大による深刻な人手不足に陥っている。米厚生省が発表したデータによると、深刻な人手不足を報告した病院は20%に上り、過去1年間で最も深刻な人手不足に見舞われていることがわかった。ワクチン接種の普及や、オミクロン株の重症化リスクが低いこともあり、深刻な病床ひっ迫は起きていないが、医療従事者がオミクロン株に感染して隔離される事態が相次ぎ、その影響で医療現場が人手不足に陥っているとみられる。
米国疾病予防管理センター(CDC)は2021年12月27日、無症状の感染者に対する自己隔離期間を、10日間から5日間に短縮すると発表した。ただし、5日間の隔離が終了した翌日から5日間はマスクの着用が義務付けられる。カリフォルニア州では、公共施設の屋内でマスク着用が義務付けられているが、1月15日に期限を迎えるこの措置を、2月15日まで延長すると発表した。
オミクロン株への感染拡大で、学校などにも影響が出始めている。全米各地の学校では、冬休み明けの対面授業が延期され、オンライン授業に切り替える動きが相次いでいる。また、教師らが感染し、職員不足による学校閉鎖のペースも加速しているという。シカゴ市では、教職員組合が「感染対策が不十分」との理由で、対面授業を行わないという決定を下し、行政と対立している。
ニューヨーク市では12月30日、地下鉄職員がオミクロン株に感染したことで、運行に必要な人員が確保できず、3路線を運休した。ニューヨーク市警も同日、約6600人の職員が病欠し、そのうち1500人が新型コロナウイルス検査で陽性だったという。
ファイザー社製ワクチン、ブースター接種の推奨間隔を短縮
米国内では現在、新型コロナウイルスに対する主だった行動制限を課しておらず、その代わりにワクチンの普及で医療機関の負担軽減を目指しているが、国内のワクチン接種完了者は人口の62.8%に留まっている。
米国疾病予防管理センター(CDC)は1月4日、「6カ月後」としていた新型コロナウイルスワクチンのブースター接種の推奨間隔について、ファイザー社製のワクチンを受けた人は接種完了から「5カ月後」に短縮すると発表した。また、CDCは1月5日、ファイザー社製ワクチンのブースター接種の対象を、2度目の接種から最低5カ月経過した12〜17歳に拡大すると決定した。バイデン大統領は1月3日、自身の公式ツイッターで、「ワクチンと追加の接種を受けてほしい。ワクチン接種は無料で簡単な上に、命を救う。愛国心を持つ国民としての責務だ」と投稿している。
入国前の検査要件を「出発前1日以内」に短縮
米国では、オミクロン株の水際対策として特別な措置は講じていないが、2021年12月6日に新型コロナウイルス検査による陰性証明書の検査日を、これまでの「出発前3日以内」から「出発前1日以内」に変更した。入国する際は、これまでと同様に、ワクチン接種完了証明書と陰性証明書を提出する必要がある。
一方、日本政府は米国全土とグアム準州を「水際強化措置に係る指定国・地域」および「オミクロン株に対する指定国・地域」に指定しているため、米国から帰国する際は、検疫所指定の宿泊施設で3日間または6日間の待機が求められる。6日間の待機が義務付けられているのは、ニューヨーク州、ハワイ州、イリノイ州、マサチューセッツ州、カリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州から日本へ入国した場合で、この7州以外の米国内から入国した場合は3日間の待機となる。いずれにおいても、退出後は自宅での自主隔離(入国翌日から起算して14日間)が義務付けられている。
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