インバウンドコラム
観光業が国の主要産業である東南アジア諸国では、観光客誘致のために入国規制を緩和する動きが加速している。観光立国としていち早くワクチン接種済みの観光客の隔離を撤廃したタイでは、4月1日にさらなる入国緩和が実施された。4月13日からはソンクラン休暇(旧正月の水かけ祭り)の連休に入るため、人流の活発化が予想されるが、2022年はどのような対策が講じられるのだろうか。現在の感染状況とともに見ていこう。
4月1日より入国時の陰性証明書の提出を撤廃。連日1万人以上の外国人観光客が入国
タイではこれまで、外国からの入国者に対して渡航前72時間以内に実施したPCR検査の陰性証明書の提示を義務付けていたが、4月1日よりこの措置を撤廃した。ただし、タイ入国時のPCR検査および、入国後5日目のATK検査(抗原セルフテスト)は引き続き実施を義務付けている。
陰性証明書の提示義務が撤廃されたことに伴い、4月1日以降にタイの玄関口であるスワンナプーム国際空港から入国した外国人観光客は、1日当たりの平均が1万1000人を超え、3月の1日当たりの平均約7003人に対して約66%増加した。同空港を利用する国際線のフライト数も1日当たり約141便となり、3月の約137便から約2.9%増加した。一方、観光業界からは到着初日のRT-PCR検査が外国人観光客にとって大きな足かせになっているという声も上がっており、タイ政府は5月にこの検査をATK検査に置き換える措置について議論を進めているという。
タイに入国するためには「タイランドパス」に英語で事前登録する必要があるが、タイ国政府観光庁はその登録方法を日本語で解説する動画をYouTubeにアップした。タイランドパスの登録には、パスポート、ワクチン接種証明、到着初日にRT-PCR検査の結果待ちで宿泊するホテルの支払済予約証明書、2万米ドル以上の治療補償がある医療保険の確認書が必要となる。
国内旅行も活性化しており、タイ国政府観光庁によると、2022年の第1四半期は国内旅行が2970万回に達し、前年同期比73%増の1350億バーツ(約5000億円)の観光収入がもたらされたという。また、今年通年の観光収入は6560億バーツ(約2兆4000億円)に上ると予測している。
今年のソンクラン祭も水かけ禁止。ソンクラン休暇中の観光客数は334万人と予測
タイでは4月13日〜4月15日まで水かけ祭りとしても知られる旧正月「ソンクラン」休暇に入るが、バンコク都庁は3月29日、バンコクでは新型コロナウイルス感染症対策センター(CCSA)の方針に従って、水かけは禁止となる旨が発表した。「バックパッカーの聖地」といわれるバンコクのカオサン通りの事業団体などは水かけを許可するよう求めていたが、少人数でソンクラン祭のイベントを催すことは許可したものの、飲酒や水かけは禁止されることとなった。
観光地として知られるパタヤとチェンマイの飲食店は、ソンクラン祭の期間中、アルコール飲料の販売を午前1時まで許可するよう当局に求めている。現在は午後11時までの酒の販売が許可されているが、パブなどでは夜の9時、10時からの来客が多いため、売上が伸びないという。
水かけは禁止となったが、アユタヤやソンクラー、バンコク、チェンマイ、サムットプラーカーンなどでは、ソンクラン祭に様々な祝祭が予定されている。タイ国政府観光庁は、ソンクラン休暇中に旅行をするタイ人と外国人観光客は334万人に上り、それに伴う観光収入は少なくとも110億バーツ(約400億円)で、ホテルの平均占有率は41%になると予測している。
人の往来が活発化するソンクラン休暇を前に、政府は予防対策を呼びかけ
タイ政府の新型コロナウイルス感染症対策センターは9日、新型コロナウイルスの新規感染者が2万5298人だったと発表した。抗原検査で陽性となったのは2万2431人で、合計すると4万7729人に上る。今年2月末以降、新規感染者数が過去最高の水準となる中、タイのプラユット首相は6日、新型コロナウイルス感染症の収束は目処が立っていないと強調し、ワクチンの早期接種を呼びかけた。
チャーンビラクル保健相は、ソンクラン休暇中に旅行や帰省を計画している人は、前段階から混雑した場所を訪れないことや、3回目のワクチン接種をするなど、予防対策を講じるよう呼びかけた。同氏は、厳格な措置を講じなかった場合、ソンクラン休暇後には1日の新規感染者が10万人に達する可能性があると警告している。
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