インバウンドコラム
入国規制の緩和が進む東南アジアの中でも、先陣を切って外国人観光客の受け入れを再開し、感染状況を鑑みながら段階的に規制緩和を行ってきたタイでは、5月に入ってさらなる入国規制の緩和が行われた。今回は、観光大国と呼ばれる同国の現在の状況とともに、インバウンド誘致を進める中でどのような数字目標を立てているのかを紹介する。
タイ、入国規制がさらに緩和。6月1日には「タイランドパス」も撤廃へ
タイでは、新型コロナウイルスの水際対策として導入してきた入国申請システム「タイランドパス」について、6月1日で廃止する見通しであることがわかった。タイ政府はオミクロン株の感染が6月までに収まった場合、7月1日から新型コロナウイルスを季節性インフルエンザなどと同様に、「エンデミック(風土病)」として扱う準備を進めている。この措置に伴い、旅行規制も完全に解除する必要があるとの見解を示している。
タイ政府は入国規制の緩和を段階的に進めており、4月1日には渡航前のPCR検査が撤廃された。さらに、5月1日には「テスト・アンド・ゴー」制度が廃止されている。これにより、ワクチンを2回以上接種していれば、入国時と滞在5日目に義務付けられていた新型コロナウイルス検査と、陰性結果が出るまでのホテルでの待機が免除され、ワクチン未接種者でも、渡航前の検査で陰性を証明できれば隔離が免除となる。6月1日に「タイランドパス」が廃止された場合、外国人観光客の誘致により一層拍車がかかるものと見られている。
一方、海外旅行者から300バーツ(約1140円)の観光税を徴収する計画も約3カ月後に実施の予定となっている。これは規制緩和で医療保険への加入義務が撤廃された場合、患者の医療費をカバーするための措置だという。
タイ、2023年のインバウンド客数は2000万人まで回復する見通し
タイのプラユット首相は5月3日、タイを訪れる外国人観光客が、2023年には新型コロナウイルス感染拡大前の約半分に相当する2000万人に回復するとの見通しを示した。最近では入国規制の緩和によって大勢のインバウンド客がタイを訪れており、タイ国政府観光局は、2022年末には1カ月あたり100万人に達する可能性もあるとの見解を示している。同政府は2022年、700万人から1000万人のインバウンド客の誘致を目標としている。
タイ観光・スポーツ省によると、2021年にタイを訪れた外国人旅行者は約43万人で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年比で93%減少した。しかし、タイ空港公社(AOT)の統計では、2022年1~3月期にタイを訪れた外国人旅行者数は、すでに約150万人にまで回復している。
決済カードブランドVISAが発表した、旅行の意識に関する調査「Visa Global Travel Intentions Study 2021」によると、タイは魅力的な旅行先として世界4位にランクインした。トップ3は米国、英国、インドだった。
世界の旅行者がオンラインで探しているタイ国内の旅行先はバンコク、プーケット、チェンマイがトップ3となり、タイを訪問する目的は、1位がレジャー(30%)、2位がリラックス(25%)、3位がアウトドアアドベンチャー(18%)だったという。
タイ政府の新型コロナウイルス感染症対策センターは5月8日、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者が8081人だったと発表した。オミクロン株の流行でピーク時には1日当たりの新規感染者が2万7000人を超えていたが、現在は減少傾向にあり、7日連続で1万人を下回っている。
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