インバウンドコラム

米国と豪州、インバウンド誘致再開。入国前のコロナ検査は旅行先の選択に負の影響

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日本政府は6月1日より、新型コロナウイルス対策の一環として講じている入国規制を緩和すると発表した。現在は1日当たりの入国者数の上限を1万人としているが、これを2万人に引き上げる。

また、現在は全ての入国者を対象に入国時の検査を行なっているが、6月1日以降は各国・地域を3つのグループに分け、低リスク国からの入国に関してはワクチン接種の有無にかかわらず検査と隔離が免除される。4月には訪日外国人客が前年同月比13倍となる13万9500人を記録し、25カ月ぶりに10万人を突破した。徐々に「開国」の動きが見られるなか、観光庁は5月18日、米国、豪州、タイ、シンガポールの4カ国から旅行関係者ら計50人程度を招き、5月中に少人数ツアーの実証事業を行うと発表している。今回は、実証事業の対象に選ばれた4カ国の中から、米国と豪州の動きをお伝えする。

 

米国で導入する入国時のコロナ検査が旅行先の選択にネガティブな影響

米国調査会社のモーニング・コンサルタントは5月12日、海外から米国に入国する渡航者に義務付けている新型コロナウイルス検査が、米国を渡航先として選択する可能性を低下させているという調査結果を発表した。

同調査によると、渡航前検査で陽性反応が出た場合のリスクを恐れ、米国を旅行先として選択する可能性が低くなったと回答した人が57%となった。一方で、ワクチン接種完了者の渡航前検査の義務が撤廃された場合は、米国を訪れる可能性が高くなると考えている人は46%に上った。渡航前検査が米国への渡航の足かせとなっていることが浮き彫りになった。

米国旅行協会(USTA)のCEOであるロジャー・ダウ氏は、「他の国々が検査要件を撤廃し、観光産業の再建に乗り出している一方で、米国は競争上不利な状況にあり、パンデミック以前のレベルまで回復するのに長い時間がかかるリスクがある」と述べている。

 

米国リゾート地で日本人受け入れに本腰、ハワイ州知事訪日で取り組み強化

米国のハワイ州とグアム州は、日本人観光客の誘致に向けて動き出した。

ハワイ州のデービッド・イゲ知事は5月9日から13日の日程で岸田首相や林外相などを表敬訪問し、日本人観光客の増加に対する期待を表明した。ハワイ州産業経済開発局の統計によると、ハワイ州の日本人旅行者数は2019年に157万人だったが、新型コロナウイルス感染拡大以降、2020年は28万人、2021年は2万人まで減少している。イゲ知事は訪日に先立ち、「日本は、海外旅行者の受け入れという観点からみて最も重要な供給国で、日本との関係を再開させることを楽しみにしている」と述べ、訪日時には日本人観光客の受け入れ態勢が万全であることをアピールした。

 

グアム日本人向けに各種キャンペーンで旅行需要を喚起

グアム政府観光局も、日本人観光客の誘致に向けて動き出している。

4月には同局のカール・T・Cグティエレス局長兼 CEOらが来日し、観光再開に向けた需要喚起策や日本市場への期待を語った。需要喚起策の一環として、日本人が日本へ帰国する際に必要とされるPCR検査を無料で提供するプログラムを9月まで行う。オンラインによる事前予約を行ば、島内にあるクリニックで無料検査を受けることができる。このほか、5月からは「GoGo!グアムキャンペーン」を展開している。日本人観光客がグアムを訪問できるようになって55年となることを記念したもので、現地のホテルやレストランなどで、「55%引き」や「55名にプレゼント」など、「55」という数字にちなんだサービスを旅行者に提供している。

なお、同局の最新データによると、グアム州のワクチン接種率は96%で、3回目接種も50%を超えている。2022年4月には屋外でのマスクの着用義務や集会などの人数制限などの規制撤廃が行われ、グティエレス局長は「旅行者を迎える準備が整った」と述べている。

米国では今年1月に感染のピークを迎え、その後減少したが、4月に入ってから再び増加している。ニューヨーク市は5月17日、新規感染者数の増加に伴い、警戒レベルを4段階中下から2番目の「中程度」から3番目の「高」に引き上げた。米国では今月、新型コロナウイルスによる死者が、世界で初めて100万人を突破した。

 

オーストラリア、3年ぶりに大規模な観光商談会を開催

オーストラリアは2022年2月より、ワクチン接種を完了した海外からの渡航者を隔離なしで受け入れ、4月には渡航前のPCR検査による陰性証明書の提示義務を撤廃している。

オーストラリアのシドニーでは5月16日、海外からの観光客を呼び戻すため、3年ぶりの大規模な観光商談会がスタートした。商談会にはオーストラリアの旅行会社やホテルをはじめ、各国の旅行会社などが参加した。商談会を主催したオーストラリア政府観光局のホグ副局長は「日本の人たちにオーストラリアは安全な旅行先だということを理解してもらうとともに、日本の水際対策が緩和されることを期待する」と述べている。商談会には日本を含む世界23カ国から、約1100人が集まったという。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年には、年間約50万人の日本人観光客がオーストラリアを訪れ、オーストラリアからは62万人以上の観光客が訪日している。

 

日本ーオーストラリアの航空路線、7月以降活発化

オーストラリアの「開国」を機に、日本とオーストラリアを結ぶ航空路線の動きも活発化してきている。JALは7月から「羽田=シドニー」線を増便し、カンタス航空は「羽田=シドニー」線を9月13日に、「羽田=メルボルン」線と「羽田=ブリスベン」線をそれぞれ10月末に再開する。カンタス航空傘下のLCCであるジェットスター航空も、「成田=ケアンズ」線、「関西=ケアンズ」線、「成田=ゴールドコースト」線を7月中旬に再開する。

オーストラリアでは1月に新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者が急拡大し、その後一旦は減少したが、再び増加して高止まり状態が続いている。現在はピーク時の約40%となる1日約3万人の新規感染者が確認されている。

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