インバウンドコラム

第6回 インバウンド消費よりも大きい中国越境EC市場とは (その2)

2016.01.14

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前回のコラムでは中国人消費者による3つの消費のうちの1つ、越境EC市場について述べましたが、今回はもう1つの市場であるソーシャルバイヤーについて見ていきます。

目次:
3つに分類される並行輸入
今後はソーシャルバイヤーにとっては厳しい現実?

◆3つに分類される並行輸入

以下は中国人消費者による3つの消費市場を述べた際にご覧頂いた指標ですが、
2015年時点で2000万人を超える中国人消費者が自らバイヤーとなって世界中の商品を中国にいる消費者に届けています。

では彼らはどこでこれらの商品を販売しているのでしょうか。
大きく分けると以下の3つに分類されます。

1.友人・家族・同僚へのプレゼント

この場合、ソーシャルバイヤーと言っても手数料を上乗せして販売することは余りありません。

今の中国人の方は友人・家族・同僚が海外に行く際に「これ買ってきて!」と言うことが非常に多いです。これは中国の関税・増値税が高い為に海外で購入した方が安い、という側面と海外なら偽物はないであろう、という2つの側面から起きています。

よく東京銀座や大阪心斎橋など中国人旅行客が多いエリアに行くと中国人旅行者が携帯を見ながら買うべきものを探していたり、携帯に口を充てて微信(Wechat)を通じてボイスメッセージを発信しながら買い物しているを目の当たりにすると思いますが、これらの動作は他人に頼まれた商品を購入していることが多いです。

2.友人・家族・同僚及びその友達への販売

このケースでは購入する人は利益を上げることを目的としています。

直接の友人知人であればそのまま販売することも多いですが、殆どが微信(Wechat)を通じてやりとりが為されます。微信(Wechat)には単純な決済機能に加えて個人で簡単にECショップを開くことが出来る機能があり、多くのソーシャルバイヤーに活用されています。

以下の写真は実際にソーシャルバイヤーが微信を活用して商品を販売している例です。

モーメンツ(図中左:Facebookのタイムラインと同じで友人の投稿が閲覧出来る場所)で入荷商品を紹介し、購入者を募っています。図中真ん中及び右の写真は実際に注文された商品をこれから配送します、というお知らせの投稿です。

ちなみにこの方は中国に住んでいますが、日本に住んでいる友達から商品を送ってもらい、ソーシャルバイヤーとして活動しています。

3.大勢の消費者への販売

3つ目のケースは最も売上を上げているソーシャルバイヤー層が行っている方法で、タオバオ(中国最大のECサイト)を活用した販売です。

タオバオを活用した販売の場合は対象となる消費者は中国全土の消費者になります。

タオバオを通じて年間数千万円〜数億円以上売上を上げている方(法人成りしているケースも多い)が多く存在します。

以下の図はタオバオ内で「日本 並行輸入」と調べて売上順に並べた際の図です。

このようにドラッグストア商材を中心に売れており、上位店舗はどの店舗も単品で月数千個以上売り上げています。

◆今後はソーシャルバイヤーにとっては厳しい現実?

ここまでソーシャルバイヤーに非常に大きな勢いがあることを見てまいりましたが、
2016年以降はソーシャルバイヤーにとっては厳しい現実が待ち受けているかもしれません。

現在、ソーシャルバイヤーのビジネスの多くは所謂グレーゾーンを活用しています。

例えば今までは郵便局でEMSを利用して中国に配送すると殆どの場合で関税がかかりませんでした。また、現在は旅行者が中国に戻った後に通関を通っても殆どが素通りでした。

しかし、中国政府がこの辺りに除々にメスを入れており、今後より一層の監視強化が見込まれています。

もう1つ、ソーシャルバイヤーにとって大きな壁となるのが中国資本越境ECサイトの台頭です。
数年前まで日本の商品はソーシャルバイヤーを通じて中国国内に運ばれることが多く、2014年に天猫国際が出来てからはケンコーコムやキリン堂といった日本資本が参入し、中国人消費者の選択肢を広げました。

2015年には中国資本が越境ECに本格参入しており、既に中国国内では各越境ECサイトの顧客争奪戦が繰り広げられており、至る所で越境ECの広告を目の当たりにします。

特に日経新聞の1面にも取り上げられた「Bolome」という越境ECアプリは「日本の店頭価格」で販売することを強みとしており、店頭で買って中間マージンを利益としていた多くのソーシャルバイヤーにとってはかなり厳しい状況に立たされています。 (余談ですが、弊社は昨年12月に「Bolome」と提携を発表しており、日本のメーカーさまの出店支援をしております。)

次回は2015年に急速に中国人消費者の売上を上げたメーカー「医食同源」にフォーカスし、彼らがどのようにして売上を上げたのかを考察します。

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