インバウンドコラム
大阪産業創造館主催、「インバウンドフェスタ2019」が3月5日に開かれた。この9月、日本で開催されるラグビーワールドカップを皮切りに、2020年の東京オリンピック、2025年には大阪・関西万博の開催、カジノをふくむ統合型リゾート施設(IR)の誘致も進んでおりインバウンド需要を呼び起こすイベントが盛りだくさん。新たにビジネス展開していきたい大阪の中小企業が中心に集まり、当日は満員御礼の参加者171名。大阪発のセミナーと参加者の声を交えてレポートする。
「訪日観光客を呼び込む!」大阪ミナミの挑戦からオール大阪の挑戦へ
くいだおれの街、大阪。千日前道具屋筋商店街は、プロの料理人を支える調理具や器、食品サンプルをそろえた老舗の商店街である。同商店街振興組合の理事長であり、約300の商店街を束ねる大阪市商店会総連盟の理事長・千田忠司氏が登壇。はじめに「時代を先取りしたミナミの努力“モノからコトへ”オール大阪のスタンダード」と題し、バブル崩壊から現在に至る商店街の歴史を語った。
「千日前道具屋筋も高度成長からバブルにかけて成長し、にぎわってきました。しかし、バブルが崩壊。インターネットの普及などで流通が変化し、商店街の客足がどんどん減ってしまった。商品を売るだけでなく、文化を発信していこうと、2000年から『人づくり・まちづくり・モノづくり』を掲げました。よさこい踊り『まいど連』の立ち上げや、修学旅行生の体験学習をはじめたんです」と、千田氏。
さらなる活性化のため、アジアからの観光客に目を向ける。2007年、中国で普及していた「銀聯(ぎんれん)カード」を商店街にいち早く導入。2010年には翻訳文例集の「多言語指差しシート」を取り入れた。現在、商店街を歩くと、タブレットを介して店員と外国人観光客がコミュニケーションをとっている姿が見られる。免税対応には、独自開発したアプリ「iPad免税チャート」 も活用しているそうだ。
「大阪は人が財産です。商都・大阪の復活をめざし、個人の魅力、個店の魅力、商売人の心意気を示すことが大切やと思っています。ありがたいことに、昔ながらの対面販売が喜ばれるんですよ。まちの資源を活かし、若い人にも『斬新や』と感じてもらえることをやっていく」と、前を向く。
まちづくり観光のプラットフォームとして、2017年に「大阪活性化事業実行委員会」を立ち上げた。千田氏を筆頭にめざすは、オール大阪での魅力発信。これは、国土交通省の「地域DMO」の候補法人として登録される、民間から生れ出た日本初の取り組みである。
「今年はビジネスチャンスであるとともに、変化の一年やと思います。これまでの携帯電話に代わって、スマートフォンが普及しているように、世の中が猛スピードで動いている。例えば、WiFi環境の整備やキャッシュレス、留学生とのタイアップ、ムスリムフレンドリーなど、環境の変化に対応する力が求められているのではないでしょうか。大阪は、海外からもアクセスしやすい交通網がある。アジアのハブ都市になるべく、共にはげみましょう」と、締めくくった。
つながりが商機を生む、参加者交流会
セミナー終了後の交流会も熱気に溢れており、旅行・宿泊業やITソリューション企業など多業種およそ80社が集まった。冒頭のあいさつは、同日セミナー講師をつとめた浅草観光連盟事務局次長の飯島邦夫氏。その後、参加者が「国境を越えて通信販売をおこなう越境EC」「お土産体験サービス」「インバウンド対策関連」の3グループにわかれ、情報交換が行われた。
交流会の参加者にこれからの意気込みをうかがった。
「東京・浅草と千日前の事例を聞いて、グローバル化の大きな流れを感じました。私たちはサムライと忍者のコト体験をおこなっていますが、異業種との情報交換に刺激を受けました。さらなるネットワークを育み、日本文化を広く発信していきたいです」(一般社団法人日本殺陣道協会会長八木哲夫氏)
「参加2回目です。大阪がインバウンドの追い風であることをさらに感じました。当社はWebデザインとシステム開発を得意としていますが、ITには言葉の壁を超える力があると考えています。訪日客のマニアックなニーズにも応えられるよう努めていきたい」(有限会社トゥーウェイズプロジェクトマネージャー村上謙太氏)
最後に、主催者側の大阪産業創造館マーケティング支援チームの津久井柚花氏にお話をうかがった。「毎年形式を変えて開催してきたフェスタも今年で3回目となりますが、予想以上に反響が大きく交流会もキャンセル待ちがでるほどでした。これからも海外ビジネスセミナーをはじめ企業同士の横のつながりを育む交流会を企画し、大阪のインバウンドビジネスを盛り上げていきたい」。
<イベント概要>
主催者:公益財団法人大阪市都市型産業振興センター大阪産業創造館
後援:公益財団法人大阪観光局
開催日程:2019年3 月5日
開催場所:大阪産業創造館3階・4階
参加者:171名
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