インバウンドコラム
シンガポールに日本を紹介するリアルスペースを開設。これまでのメディアとしての活動にプラスして、実際にシンガポール人とフェイストゥーフェイスで関わる場を設けた。
目次:
シンガポールの郊外SCに日本の催事場“WAttention Plaza”をオープン
シンガポールは国そのものがテストマーケティングの場
楽天うまいもの市場レポート
現地で人気の商品をフックに観光誘致を!
シンガポールの郊外SCに日本の催事場
“WAttention Plaza”をオープン
弊社では日本文化を世界に紹介する無料情報誌「WAttention(ワテンション)を、
世界10か国で展開している。
さらに昨年、シンガポール大手外食産業のRE&S社と協同して、
日本の物品のテストマーケティングの場として、
「WAttention Plaza(www.pje-sg.com)」の運営をはじめた。
これはいわば、テーマを“日本”に特化した常設の物産品即売会場で、
全部で13コマのブースで構成されている。
そのうちの8コマは排水・給水があるため(さらに5コマにダクト有)、
その場で簡易調理する飲食の提供も可能である。
今まで、フリーマガジンという紙媒体に加え、WEBサイト、SNSといったメディアを通じて、海外に進出する日本企業や公共団体、地方自治体の現地でのプロモーションをサポートしてきたが、この「場所」の誕生により、日本製品や日本食材を実際に対面でデモンストレーション販売する場を提供することが可能になった。
昨年11月のグランドオープン以来、
日本伝統工芸フェア、楽天うまいもの市場(アセアン初)を開催したほか、
愛媛県、北海道などの自治体が、物産及び観光PRを行う場として、
WAttention本誌メディアでのPRとセットで活用している。
WAttention Plazaの大株主であるRE&S社は、
27年以上にわたり、シンガポール内に60店舗もの様々な業態の和食レストランを展開・運営する、現地で成功を収めている企業だ。
その実績により日本との太く確かな流通ルートを確保しており、
専用のコンテナを利用してWAttention Plazaに出店する団体の製品を混載で運べる。
小ロットであっても格安で日本からシンガポールまで運ぶことができるのが大きなメリット。
また、RE&S社は、WAttention Plazaに隣接して、
寿司、ラーメン、焼き鳥など、様々な日本食が楽しめる和食専門レストラン街「Shokutsu 10」も運営している。
WAttention Plazaがある場所は、Jurong Point (ジュロンポイント)だ。シンガポール郊外ウエスト地区最大の駅、Boonlay駅直結の大型ショッピングモールである。そこのB1にある。
同駅はウエスト地区のバスターミナルにもなっており、
また近くには、シンガポール大学、ナンヤンポリテックという名門校もあるため
乗降客数はシンガポール最大規模。
SCを訪れる人の数は、月間500万人を超え、
シンガポールの人口520万人(!)にも迫る勢いとなっているのだ。
実際、朝から晩までひっきりなしに人の往来があり、
特に宣伝をしなくても、毎日3万人ほどの人がWAttention Plazaの前を通る計算になる。
シンガポールは、国そのものがテストマーケティングの場
シンガポールは、小さな島丸ごとひとつの都市国家。 島内南部に位置する市街中心部から東、西、北にベットタウンが広がり、
国民の8割はその郊外に住む。
そこから中心部に通勤するのが一般的である。
そのため、シンガポール市場を本気で狙うのであれば、
中心部よりも、本当のシンガポール人の多くが暮らしている
郊外でプロモーションを行う方が効果的であると個人的には考えている。
もちろん、中心部の住人には比較的高所得者が多いのは事実だが、
観光立国であるシンガポールでは、オーチャードなどの中心部のショッピング街にいるのは、観光客や在住外国人のシェアが圧倒的なのもまた事実である。
シンガポール人市場を獲得し、恒常的に日本の物品を現地に輸出・販売したり、
PRしたいのならば、マスゾーンのハートを掴んでいくことが重要だ。
さらにいうなら、一人当たりのGDPがアジアでもっとも高いシンガポールのマスゾーンをターゲットにしたテスト販売は、日本が注目するインドネシア、ベトナム、インドなどの巨大市場に参入する前の、試験的なプレ参入としても非常に有効であると考えている。
WAttention Plazaでひとつの商品を販売したとする。
万が一、思ったように売れなかった場合、価格が高いのか、色が悪いのか、それとも商品の魅力が十分に伝わらないのか?
相手の文化や価値観に触れ、どう変化させれば彼らに受け入れられ、現地でヒット商品になり得るのか?
どうすればその価値を理解してもらえるのか?
大きな失敗をする前に、様々な考察をすることができる場所、それがWAttention Plazaなのである。
また出展企業自らが、お客様とじかに接することで、人任せでの販売では絶対に見えてこない“モノやコト”が必ずあるはずだ。
以前、日本の食と観光は切っても切り離せないと書いたが、WAttention Plazaのような場所で、観光プロモーションとあわせて地域の食材の販売を行うことも、様々な意味で非常に有効ではないだろうか。
楽天うまいもの市場レポート
2014年11月25日から10日間にわたり、楽天がシンガポールで、人気のグルメやスイーツを集めた物産展「楽天市場 うまいもの大会」をWAttention Plazaにて開催した。
同物産展は、2010年以来日本国内で複数回開催されているが、海外で開かれたのは同年の台湾(10月)についで2回目。楽天の呼びかけにより、東南アジアでの事業拡大に意欲的な11店が出展を果たした。
当初、中心部ではない郊外というロケーションに不安の声も聞こえたが、売り上げ規模は台湾での同イベントを超える結果となった。
詳細は、東洋経済オンラインで紹介されているので参考にしてほしい。
こちら⇒ http://toyokeizai.net/articles/-/57163
一番売れた製品としては、
1位が六花亭マルセイバターサンドなどを扱う「北海道お土産探検隊」、
2位が北海道のカニ弁当を扱う「札幌蟹販」、
3位が宇治抹茶を使った生チョコレートなどを扱う「伊藤久右衛門」となっている。
こうしてみると、日本国内でも人気の高い商品であると同時に、
その商品ブランドの地域がシンガポールの人々から認知されている、
もしくは実際に観光に訪れたことのある場所であることが、商品の人気を後押ししているようだ。
シンガポールでは“北海道”というブランドは、
食品の産地としても観光地としても一番人気であることは間違いない。
抹茶=京都のイメージも同様である。
現地で人気の商品をフックに観光誘致を!
「楽天市場 うまいもの大会」の結果をみるにつけ、
商品の魅力を訴求するには、関係地域のバックグラウンドのストーリーを伝えることが、成功への重要な鍵となってくる。
楽天の事例のように、各地を代表する人気を持つ商品をフックに、
日本のインバウンド誘致に結び付けられるようなプロモーションを
WAttention Plazaを舞台として積極的に行って欲しいと願っている。
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