インバウンドコラム
観光庁は、令和3年(2021年)度の予算概算要求概要を発表した。
一般会計は前年度より約2%減の167億5700万円、東北復興枠は前年予算並みの3億円、国際観光旅行税を活用したより高次元な旅行施策の展開については新型コロナウイルス感染症の拡大等により同税の歳入見通しが減少したことを踏まえ、前年度比43%減と大きく減額となる290億円にとどめ、全体では460億5700万円となった。
ここでは、予算概算要求概要の中身について詳しく見ていく。
(図出典:令和3年度観光庁関係予算概算要求概要)
一般会計要求の4つの項目
1) 戦略的な訪日プロモーションの実施と観光産業の基幹産業化(89億3600万円)
戦略的な訪日プロモーションの実施では、2030年に訪日外国人旅行者数6000万人等の達成に向け、誘客可能となった国等でJNTOによる訪日プロモーションを順次実施に83億円を要求。その他、教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進に3000万円、MICE誘致の促進には前年比65%増の2億6800万円、観光産業における人材確保・育成事業に1億2000万円、通訳ガイド制度の充実・強化に前年度比20%増の6500万円、健全な民泊サービスの普及に1億5300万円を見込む。
2) 観光資源を活用した地域への誘客の促進(9億1000万円)
このうち、広域周遊観光促進のための観光地域支援事業に7億6000万円を設定し、観光地域づくり法人(DMO)を中心に、地域が一体で行う調査・戦略策定、滞在コンテンツの充実、受入環境整備、旅行商品流通環境整備、情報発信等の支援を行う。
また、観光地域づくり法人による宿泊施設等と連携したデータ収集・分析事業にも1億5000万円を充てた。データ収集から分析、分析結果をもとにした戦略策定、策定した戦略に基づいた各施設による改善に繋がるプラットフォームやCRM機能導入の支援を通じ、旅行消費の拡大とリピーター確保につなげる。
3) 訪日外国人旅行者の受入環境の向上(56億4300万円)
まず訪日外国人旅行者受入観光整備緊急対策事業として56億2000万円を確保し、訪日外国人旅行者向け対策に積極的に取り組む地域の団体や事業者を対象に、多言語による情報発信の強化や無料Wi-Fiの整備、キャッシュレス決済普及、バリアフリー化の推進、感染症対策等の取り組みを支援する。また、観光分野における感染症対策における先進的な取組をモデル事業として支援するための補助の設定にも言及している。
その他、ユニバーサルツーリズム促進事業には、前年比60%増の2300万円を要求し、高齢者、障碍者等を含めた誰もが楽しめる旅行の普及定着を目指していくとしている。
4) 観光統計の整備(6億5300万円)
昨年度に引き続き、観光施策の企画・立案等のために重要な観光統計を得るための予算を計上し、地方への誘客や消費の拡大等、観光地域づくりを支援する。
1)~4)であげた4つの施策のうち3つは減額か同額となっているが、3)訪日外国人の受け入れ環境に関する予算は前年度比プラス4%となっており、引き続き訪日外国人旅行者への受入を積極的に進めたい意向が読み取れる。
前年度比43%減、国際観光旅行税の使い道は
なお、前年度比43%減の290億円と大きく減少した国際観光旅行税だが、2019年には、主に1.最先端技術による出入国審査やICT活用による多言語対応、公共交通利用の確認などといったストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、2.デジタルマーケティング強化による日本の多様な魅力の情報へのアクセスの容易化、3.DMO改革や文化財、国立公園などの環境整備などによる、地域固有の文化や自然を活かした体験滞在の満足度向上、の3つの事業に充てられた。
2021年度は、既存施策の財源の単なる穴埋めでなく、受益と負担の関係から負担者の納得が得られることや、先進性が高く費用対効果が高い取り組み、地方創生など日本が直面する重要な課題への施策に対して充てられる。
新たな旅のスタイルの普及を図る3つ方針
なお、観光の再生と新たな展開と銘打った事項要求では、新型コロナウイルス感染症や2020年7月の豪雨災害の影響から厳しい状況にある観光産業への支援を継続しつつ、新たな旅のスタイルの普及・定着を図る視察を推進する3つの方針が示された。
1) 働き方改革とも合致した「新たな旅のスタイル」の普及・促進
新たな旅のスタイルである、リゾート地や温泉地等で余暇を楽しみつつ仕事を行うワーケーション、出張等の滞在を延長して余暇を楽しむプレジャー、企業等の本拠から離れて設置されたサテライトオフィスで仕事を行うスタイルの普及促進を行う。現在は年末年始やお盆、ゴールデンウィーク等に集中する旅行需要を平準化し、混雑等による感染リスクを軽減しながらより多くの旅行機会を得る施策の普及も進めていくと述べている。
2) DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出
オンラインツアーなどデジタル技術を活用した新しい魅力的な観光コンテンツの創出、顔認証を用いた手ぶら観光やビッグデータの利活用による観光地経営などを挙げている。デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した従来の枠組みに捉われない新たな観光サービスの変革や観光需要の創出も進めていく考えだ。
3) 宿泊施設を核とした地域の新たなビジネス展開の支援
テクノロジー導入による非接触型チェックイン機能や混雑の見える化などによる感染症対策、ワーケーション普及や宿の高付加価値化の支援などを通じ個々の宿泊施設の魅力を高めると同時に、宿同士の連携や観光施設や交通事業者などの事業者連携の支援を通してエリアとしての魅力を高め、長期滞在を実現する新たな観光ビジネスの展開も支援するという。
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