インバウンドコラム

新たな「観光立国推進基本計画」決定。インバウンド消費5兆円、持続可能な観光重視、人数目標設定せず

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政府は、2023年3月31日の閣議において新たな「観光立国推進基本計画」を決定した。本来は2021年3月末で改定される予定だったが、コロナ禍で観光を取り巻く環境が見通しづらいことなどを理由に延期が続いており、2年遅れての決定となった。ここではその内容について解説する。

 

新たな観光立国推進計画、計画は3年。観光立国復活を目指す

2017年以来6年ぶりの策定となった「観光立国推進基本計画」だが、計画期間は令和5年から7年(2023年〜2025年)度の3年間となった。なお、前回、2017年策定時は、2020年度までの4年計画として立てている。

今回決定された計画では、コロナ禍を経ても観光は国の成長戦略の柱と再認識し、国際的な相互理解や平和維持にも不可欠であると定義。コロナ前からの課題や、コロナ後の環境変化を踏まえ、観光をより持続可能な形へシフトさせ、地域社会と経済に活力を与える観光立国への復活を目指す。

 

観光立国の持続可能な形での復活に向けた3つのキーワード

2025年における計画実現に向けて設定したキーワードは3つ。

「持続可能な観光」

まず、持続可能な観光では観光による地域社会・経済に好循環をもたらす仕組みを推進する。地域に根差した司令塔となるDMOなどの観光人材の育成、従事者の待遇改善や持続性を高める観光コンテンツの育成や地域づくり。観光地や産業に高付加価値を与えることで、文化も保全する体制整備などに取り組んでいく。

「消費額拡大」

消費額拡大では、インバウンド回復戦略を掲げ、外国人の旅行消費の早期達成額を5兆円と設定した。受け入れ態勢やコンテンツに磨きをかけ、2025年までに単価を20万円、地方宿泊数を2泊に引き上げるなど、全てにおいて2019年(令和元年)の実績を上回る数字を目指す。また、国際会議の開催件数も、アジア主要国において占める割合を2019年のアジア2位(30.1%)からアジア最大の開催国(3割以上)にするとし、アウトバウンドや国際相互交流復活による相乗効果も狙っていく。

「地方誘致促進」

地方誘客促進では国内交流を拡大させ、日本人の地方旅行実施率の向上、滞在長期化を促進し、2025年までに3.2億人の宿泊者数達成を狙う。国内旅行消費の早期達成額は20兆円、2025年までには22兆円到達と、宿泊者数・国内消費額ともに2019年の実績値を上回る数字を掲げている。具体的にはワーケーション、第2のふるさとづくり、国内旅行需要の平準化などが挙げられた。

 

持続可能な観光地100地域、国際認証あるいは表彰取得50地域目指す

これらは2025年の大阪万博開催に向けて脚光を浴びる日本が、世界的水準を超える観光の先進地となることを念頭に置いた、人数に依存しない指標となっている。「日本版持続可能な観光ガイドライン」を活用しながら、「住んでよし、訪れてよし」な地域社会を実現させるとした。

持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数も、2022年の12地域(うち国際認証・表彰地域数は6)から飛躍させ、2025年には100地域到達(うち国際認証・表彰地域数を50)を目指すなど、地域力の底上げにより、全国へ観光の恩恵を行き渡らせることが目標の戦略指数となっている。これらの施策は政府が点検・評価を頻繁に行うとともに、関係省庁に対しては観光庁が、当該結果について施策に反映させるよう働きかけを行っていく。

 

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