データインバウンド
【訪日外国人の傾向を知る】台湾編:10年で訪日客5倍、LCCで地方訪問。健康ブームでアウトドアへの注目度アップ
2019.03.11
刈部 けい子親日家として知られる台湾からの2018年の訪日客数は、前年比4.2%増の475万7,300人で、全体の3位だった。
台湾出国者の3人に1人が訪日
人口2,358万人の台湾では海外旅行が人気で、2018年の出国者数は1,664万人。人口比出国率は約70%に上る。日本のそれが14.1%だから、どれほど多いのかわかるだろう。グラフにあるように、台湾人の海外旅行者の数は2009年からの10年間で倍増し、中でも訪日客は5倍近くに増えている。台湾の国民の5人に1人、また台湾人の海外旅行者の3人に1人は日本を訪れている計算になる。ある調査では、1年に複数回日本を訪れた人が50%近くいたというように、当然リピーターも多い。
訪日台湾人の8割が2回目以上のリピーター、韓国に続く2位に
中国、韓国、台湾、香港の東アジア4カ国・地域は訪日客全体の73%を占める巨大市場だが、訪日回数を調べると特徴がある。初訪日の数は香港が最も少なく17%で、台湾は20%。すなわち、台湾からは8割が訪日リピーターということになる。一方、中国はまだ6割が初来日となっている。
また、訪日客数と訪日リピーター比率から割り出した訪日リピーターの構成比では、韓国が30%と最も多く、台湾は25%で二番目だ。いずれもしても、台湾が大きなリピーター市場であることを示している。
団体旅行や旅行会社の店頭申し込みも一定数あり
また、団体と個人の割合は3対7で、個人の方が多いが、同じようにリピーターの多い、韓国、香港では団体利用が1割であるのと比べると、まだ団体利用が一定数あるというのが特徴的だ。それに伴い、旅行の申し込み方法でも、店頭が4割、オンラインが5割となっており、7割がオンライン利用の韓国・香港とは事情が異なっている。つまり、FIT化は進んでいるが、旅行会社との接点がまだまだ大きい市場ともいえるだろう。
同行者については、家族や夫婦で旅行する人が、訪日回数に関わらず50%前後を占めており、訪日10回以上のヘビーリピーターでもそれは変わらない。ただ、訪日回数が増えてくるにつれ、友人との旅行が減り、一人旅が増えている。他人に合わせるのではなく、自分が本当にやりたいことをする旅を追求しているのがわかる。また、それに伴い、宿泊日数も増えている。訪日1回目の台湾人の平均は4.8泊だが、訪日10回だと5.6泊になり、ヘビーリピーターの29%は7日〜13日も日本に滞在している。
LCC利用で「賢くどこよりもお得に」
台湾からの訪日客は、LCC(ローコストキャリア)の利用が多い。台湾最大の旅行博ITF2018における日本インバウンド・メディア・コンソーシアム(JIMC)ブースでのアンケート調査によると、LCCの利用は実に58%と、過半数を超えており、そのうち毎回利用するという人が15%もいる。2011年のオープンスカイ協定以降、LCCの就航が相次ぎ、地方路線も急増したことで、FIT化が進んだ。団体旅行で初訪日した後、LCCを利用して再訪するケースも多く見受けられる。台湾からの訪日旅行客に響く「賢くどこよりもお得に」というキーワードにはぴったりの旅行形態といっていいだろう。
地方分散が進む台湾、宿泊者数伸び率は東北6県がトップ10にランクイン
台湾―日本間の直行便が就航しているのはFSC(フルサービスキャリア)とLCCを合わせて全国で25空港と多い。そのうちLCCが就航しているのは17空港もある。特にタイガーエアは旭川、花巻、茨城、佐賀など日本の14空港から台湾の台北(桃園)や高雄を結んでいる。欧米豪では出入国は東京や大阪からが一般的だが、台湾からはこうした地方都市への就航により、リピーターの足が地方へ分散する傾向が高まっている。
例えば2018年1月〜9月の宿泊統計では、伸び率は上から、宮城県、山梨県、岩手県、茨城県、福島県、秋田県、山形県、岡山県、徳島県、青森県となり、東北では全6県がトップ10に入った。一方で、東京や大阪など大都市圏では軒並み前年割れとなっている。
台湾人旅行者に人気のアプリにも、旅行スタイルの特徴が表れている。観光アプリは別として、乗換案内と天気アプリの利用が多いのだ。つまり、自分たちでどこで何をしたいかを決め、そこへ行くための二次交通について調べる。さらに、花見や紅葉のシーズンには天気予報が欠かせない。
サイクリングやマラソン大会などアクティビティが人気
また、健康ブームの台湾では、日常的に運動する人口が全人口の85%を超え、旅行にもアクティビティやアウトドア志向が高い。特に最近は、海外へのマラソン大会に参加する人も多く、参加経験者の中では87%が日本のマラソン大会に出場している。例えば、埼玉県さいたま市のウォーキングイベント、さいたマーチでは2017年は数人程度の参加者だったが、2018年は台北メトロなどの宣伝活動の結果、80名が参加し、2019年もさらなる増加を期待しているという。
国内で非常に人気の高いサイクリングを海外で楽しみたいという層も多く、日本でもしまなみ街道のツアーは特に人気が高い。また、観光目的での日本滞在中に日帰りでサイクリングツアーへ参加したいという希望も聞かれるという。
リピーター市場として成熟しているからこそ、今後は様々なテーマ旅行の提案が効果的といえる。また、他の人が経験していないことをやってSNS上で自慢したいという傾向が大きいので、シェアする気になるようなありきたりでないコト体験がアピールしそうだ。
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