データインバウンド
2019年インバウンド消費4.8兆円、7年連続過去最高。ラグビー開催が消費増に寄与するも伸び率低迷
2020.02.03
やまとごころ編集部観光庁は2019年の外国人旅行消費額総額(速報値)が、4兆8113億円となったと発表した。2017年に4兆円を初めて突破したものの、その後伸び率は1桁台に落ち込み、2019年も前年比6.5%増にとどまった。ただし、2019年の訪日客数は前年比2.2%増の3188万2000人だったので、前年比で言えば、消費額のほうが伸びはよかったことになる。
消費額トップは中国、伸び率トップはイギリス
国・地域別に訪日外国人旅行消費額を見ると、訪日客数トップの中国が全体の36.8%を占める1兆7718億円で1位。ついで台湾が5506億円(同11.4%)、韓国が4209億円(構成比8.7%)、香港が3524億円(同7.3%)、アメリカが3247億円(同6.7%)と続き、これら上位5カ国で全体の71.1%を占めた。
訪日客数で前年比25.9%減だった韓国は、消費額でも前年比28.4%の減少だった。他に、台湾(前年比5.4%減)、インドネシア(同3.6%減)、イタリア(同3.0%減)も消費額の前年比はわずかながらマイナスだった。
一方で最も多く伸びたのはイギリスで前年比38.8%増。後述するが、ラグビーワールドカップ開催で訪日客が増え、滞在期間が長かった分、消費額も増えたと見られる。ほかにも、ロシア(前年比23.4%増)、タイ(同22.6%増)、フランス(同21.7%増)が20%台の伸びを示した。
旅行消費額を費目別に見ると、買物代が全体の34.6%と最も多く1兆6668億円、ついで宿泊費(構成比29.4%)、飲食費(同21.6%)、交通費(同10.3%)、娯楽サービス費(同3.9%)となっている。前年と比べると、買物代のシェアが0.3ポイント減少したのに対し、宿泊費は0.2ポイント、娯楽サービス費は0.1ポイント増加している程度で、費目別の構成比に大きな変化は見られなかった。
1人当たりの旅行支出が多いのはオーストラリア
訪日外国人旅行者1人当たり旅行支出は15万8458円で、前年(15万2594円)と比べると3.5%増となり、これまでの3年連続減少にストップがかかった。
1人当たりの旅行支出が最も多いのは前年同様オーストラリアで24万9128円。ついでイギリス(24万1530円)、 フランス(23万7648円)と続き、ワールドカップラグビー出場国がトップ3を占めた。既報の通りラグビー観戦目的の訪日外国人の平均支出は一般インバウンド客の2.4倍高かったため、大会開催が1人当たりの旅行支出全体を押し上げたことがわかる。また、5位の中国を除くと、トップ10までは欧米が並ぶ。
なお、クルーズ客の場合、1人当たりの旅行支出は3万9710円。宿泊は船内のため出発前に決済しており、訪日中の支出はほとんどが買物代となっている。
費目別の各1位は、宿泊費、飲食費、娯楽サービス費がイギリス(10万3364円、6万2180円、2万2183円)、交通費がスペイン(3万6828円)、買物代が中国(10万8800円)となっている。イギリスは前年も宿泊費が1位だったが、今回は買物代を除く各費目で前年よりも支出が増えた。交通費ではスペインをはじめ滞在日数の長い欧豪で3万円台が多く、アジア勢は1万円台が多い。買物代では中国が突出しており、支出の半分を買物代が占めた。
なお、2019年10-12月期の1人当たりの旅行支出は前年同期比7.8%増の17万119円となり、10-12月期として、いわゆる「爆買い」時の同期を超え、過去最高額となった。
2020年に8兆円の目標は変わらず
なお、田端観光庁長官は記者会見で、2020年の消費額の見通しについて、「2019年の消費額は全体として6.5%増となったが、これは、比較的単価が高い、滞在が長い欧米豪や中国の方々が好調に増加してきたということが要因として考えられる。今年開催のオリパラやJNTOが行うYour Japan 2020キャンペーンの中で、地方へ訪れたいという意向が多いといった調査もあるようなので、東京での観戦後、地方へ行っていただき、滞在長期化にしっかり取り組んで行くことで、全体としての消費額のプラスの要因になっていくものと考えている。滞在が短いと言われるアジアの方々の滞在をもう1泊から2泊長くしてもらうとか、地方でも星空ツアーなど新しいメニューで夜の体験をしてもらうなど消費に繋がる観光コンテンツの向上などやるべきことがたくさんある」と話した。
また、2020年に訪日客4000万人、消費額8兆円という目標は変わらないとして、「我々としては目指すべきものとしては、滞在を長くしていただくこと、また、いいものには消費をしていただけるので、価値向上に向けコンテンツ形成をしっかりやっていく」とした。
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