データインバウンド

宿泊旅行再開は秋ごろが6割 最優先は感染症対策 4割近くが料金の上乗せを容認 —自粛解除後の旅行意向を調査

2020.06.11

刈部 けい子

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5月25日、緊急事態宣言が全面的に解除されたが、旅行に対する意識はどのように変わったのか。

熊本県観光協会連絡会議は4月27日~29日の第1回に続いて、第2回となる新型コロナウイルス感染症収束後の旅行・観光に関する意識調査を行い、結果を発表した。今回の調査は年5月31日(日)~6月2日(火)の3日間に日本全国の一般消費者の方を対象として無記名でのWEB アンケート方式で行われ、3041件の有効回答を得た。

第1回は緊急事態宣言期間中の調査となったことから、収束時期の想定や行動再開の意欲などについて、期間を定めず回答者の考えをまとめたが、緊急事態宣言解除後の調査となった第2回では、今年度中の行動意欲や感染症対策への考え等を尋ねている。

約2カ月に渡る外出自粛期間の反動からか、第1回の調査よりも旅行に前向きな意識が見られた一方で、お客様に「安心」を提供するための必須条件として各事業者が取り組むべき感染症対策の具体的な要望・傾向、また従来とは変化する客のニーズも見えてきた。

感染対策の実施と情報公開は必須

「宿泊施設における基本的な感染症対策に加え、「ないと嫌だ」と思うもの」を訊ねてところ、一番数の多かったのは「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」で52%がないと嫌だと答えた。使い回しのものに対する感染リスクへの不安は根強いようだ。さらに回答数の多い順に「スタッフ、お客様のマスク着用必須」「利用者数の制限」「客室への空気清浄機の設置」「入館時の検温実施」「感染発生時の対応マニュアル公開」や「部屋食」など、基本的な感染症対策として挙げた選択肢10項目のうち、実に7項目について3割以上の回答者が「ないと嫌だ」と答えている。基本的な感染症対策を望んでいる人は多く、全体的に意識が高いことが伺える。

客側のニーズ変容を敏感に察知する必要性

「伝統的な旅館のおもてなし対応で、コロナ禍においてなくても良いと思うもの」の問いには、当然のサービスと思われていた7項目全てにおいて、実に3割以上の人が「なくても良い」と答えた。「スタッフ一同でのお迎えやお見送り」「仲居さんによるお茶やおしぼりの提供」「荷物運び」など客との接客機会が多いサービスは必ずしも求められていないばかりか、今後はしないことが却ってコロナ対策としてむしろポジティブに捉えられるかもしれない。

おもてなしに対しての考え方は時代と共に変わるが、この度のコロナ禍によって顕在化のスピードが速まったように感じられる。客側のニーズが変容している今だからこそ、宿泊施設におけるおもてなしの意味やスタッフの配置、経費のかけ方の優先順位などを根本から見直すよいきっかけになりそうだ。

最優先は価格よりも感染症対策

感染症対策に伴う料金意識について訊ねた問いには、「通常と同じ料金であるべき」との回答が44%ともっとも多かったが、37%は「100~500円程度なら上乗せされていても良い」と答えている。合計すると8割以上が通常と同じ料金あるいは多少上乗せし ても許容範囲と答えているのは、感染症対策の徹底を最優先に望む現れと取れる。

単価を維持しながら延泊、リピーターという形で観光消費額を上げる、また付加価値をつけて単価そのものをあげるなどの工夫は、是非とも検討すべき課題と言えるだろう。

一極集中を避けたい意識を汲み上げる

「今年度、いつ頃に宿泊を含めた旅行をしたいですか?」の問いで最も多かったのは、9月~11月の秋ごろで59%。直近の6~7月を挙げた人が25%と秋に続いて多く、旅行に前向きな層も一定数存在することが伺える。6月19日以降に県境をまたいだ移動が緩和されれば、ある程度の人数が宿泊を伴う旅行に出かけそうな勢いが見える。対して、お盆のある8月や年末年始を挙げた人は10~12%と少なめで、お盆や年末年始の一極集中を避けたい傾向が見られるようだ。

今年度の旅行の対象範囲について尋ねたところ「日本中どこでも旅行に行く」と答えた人が47%と最も多く、きっかけさえあれば県境やエリアをまたいで日本全国での旅行を考えている層が多いのは観光事業者にとって嬉しい結果である。次に多いのは、自分の住む都道府県の隣県やエリア内の29%、続いて「可能になれば海外まで行きたい」が15%と、旅行に対する意欲の高さが伺える。前回の調査において、旅行は近場から始まり、徐々に距離が長くなる傾向が見て取れたが、それから1ヶ月後の今回の調査では、今年度中に日本中どこでも旅行したいと答えた人達の割合が半分にまで達し、日本国内での感染拡大が抑制されたことで旅行への願望、行動も早まっていることが予想される。

自粛期間中は様々な立場で、アフターコロナ、あるいはウイズコロナの新しい観光のあり方についていろいろ考えただろう。緊急事態宣言も解除された今は、考えを実践していくタイミングとなった。まだ検討していない場合は、早急に実施に向けた検討を始められたい。

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