データインバウンド
世界一安全な国ランキング 1年間の統計に見る新型コロナ時代の勝者
2021.12.13
アメリカの大手総合情報サービス会社ブルームバーグが2020年11月より毎月発表している「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」。調査対象の53の国・地域を比較し、新型コロナウイルス感染抑制、死者数、ワクチン接種率、渡航再開具合などのデータ指標に基づいて、コロナ禍における世界で最も安全な国・地域の番付を行ってきた。
今回は、統計開始から丸1年が経過した節目に発表された総集編の結果をもとに、各国、地域のコロナ禍における状況及び、戦略や政策を振り返る。
ワクチン接種率・変異株・経済正常化などの影響で毎月変化したランキング
今回こうして1年を総括して明確に言えることは、過去の良い成績が必ず将来の成功に結び付くとは限らず、そのまた逆も然りということだ。ワクチン接種状況やデルタ変異株の出現、そして最近では経済正常化への動き、こうした要素が各国の安全性に大きな影響を及ぼし、その結果としてランキングは月ごとに大きな変動を見せた。
統計を開始した2020年11月のランキングでは、感染抑制のために厳格な隔離措置や国境管理を実施したニュージーランドが1位となり、日本、台湾が続いた。その後、最速でワクチン接種が進んだアメリカ、スイス、イスラエルが上位に浮上し、現在は高いワクチン接種率と社会・経済活動の正常化の双方を実現しているアイルランド、スペイン、UAEが上位を占めている。
このような変化続きのパンデミック下において、1年間トップを維持した国・地域はない。かつて2020年の大半の期間で感染抑制に大成功し、1位になったニュージーランドやシンガポールでは、デルタ変異株の流行で新規感染者なしの「ゼロコロナ」方針が崩されると、ロックダウンを始めとする厳しい制限が復活した。ワクチン接種率が人口の半分に達して6月に1位に躍り出た米国と、世界最速でワクチン接種が進み今年初頭に規制緩和に踏み切ったイスラエルでは、正常化へいち早く歩みを進めていたものの、ワクチン未接種者を中心に夏から再び感染が拡大した。
順位の変動はランキングの下位層でも見られた。急激な感染拡大によりメキシコ、ブラジルは21年序盤にかけ最下位だったが、中南米諸国でもようやくワクチン接種が進み、高水準の自然免疫を獲得したこともあって、デルタ変異株の流行拡大を免れた。一方で、ワクチン接種が遅れた東南アジア諸国は、今年後半から最下位層に沈んだ。
年間MVPは7カ国、一貫性を保ち安定順位をキープ
上位層でも下位層でもこうした順位の変動があるものの、安定した順位を維持している国が7カ国あった。ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アラブ首長国連邦(UAE)、カナダ、韓国、スイスで、1位に輝かずとも27位以下に落ちることがなかった。これらの国々はワクチン接種率、デルタ変異株との闘い、経済活動再開の全ての指標で、常に平均点以上をマークしており、シーズンMVPに最も近いと言える。共通の強みは、しっかりと施された医療分野の安全対策と、政府を信頼して規則に従おうとするなど、感染抑制への社会的結束だった。
一方で、ランキングの中間点を上回ることがなかった国が、アルゼンチン、イラン、メキシコ、ブラジル、ペルー、ポーランド、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカ共和国の9カ国。これらはパンデミックにより最も打撃を受けていて、未だワクチンが公平に行き届いておらず苦難が続いている国が大半である。
日本は年間総合12位
それでは、日本の動きはどうだったのだろう。ランキング開始当初は2位に入り、その後も感染抑制が効いているとして評価され、4月までは10位以内を維持した。しかし、6月のランキングで「ワクチン接種後の越境可能ルート」と「フライト能力」の2項目が新たに追加され、経済活動再開と正常化への進展が評価に反映されると、感染再拡大により移動制限がかけられた国々は順位を落とし、日本も6月は23位、8月はワースト順位の33位まで下げた。その後、緊急事態宣言の終わった10月には16位まで順位を戻しており、結局、1年間の総合ランキングでは12位だった。
1年間のMVP (上位7カ国は半分より下に下がることはなかった)
最近では先進国を中心に3度目のワクチン追加接種と子供への接種が促進され、パンデミックからの脱却へ向け歩みを進めていた。ところが、つい先日、南アフリカで確認されたオミクロン株が急速に世界に感染拡大し、各国が相次いで緊急の入国制限をかけている。新たな変異株の猛威が再び制限に縛られた世界に逆戻りさせてしまうのだろうか?引き続き、COVID耐性ランキングから目が離せない。
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