データインバウンド
国家ブランド指数ランキング、世界第3位の日本は何が評価されたのか?
2021.12.06
世界で最もブランド力のある国はどこか?パリに本社を置く大手調査会社イプソスが今年10月に「国家ブランド指数」ランキングの2021年版を発表した。結果はドイツが5年連続で首位をキープし、2位にカナダ、3位に日本が続いた。昨年2位だったイギリスが4位に順位を下げ、日本は昨年から1ランクアップでのトップ3入りという嬉しい結果となった。今年もアジアの調査対象国で唯一のトップ10入りを果たした日本。その強みはどこにあるのか?結果を見ていきたい。
「国家ブランド指数」とは?
アンホルト-イプソス国家ブランド指数(Anholt-Ipsos Nation Brands IndexSM (NBI))はイギリスのサイモン・アンホルトが考案して2005年にスタートし、2018年以降は買収元のイプソスにより実施されている、国家のブランド力を評価する世界的調査である。この調査では「国民性」「観光」「文化」「輸出」「ガバナンス」「移住・投資」という6つの分野における魅力度を評価してランク付けしていて、今年は調査対象国を例年の50カ国から60カ国に増大。パネル国20カ国から18歳以上を対象者としてインターネット上で調査を行うが、アンケート実施数は昨年の2万件から6万件に拡大し、過去最大規模の調査となった。このような世界的調査における国家イメージの指標は、各国のブランド力強化に向けた的確な戦略策定に役立てることができ、年々関心の高まりを見せている。
ドイツは5年連続、7回目の首位。カナダは史上最高の2位に
首位に輝いたドイツは、5年連続、全体で7回目の1位となった。「輸出」「移民と投資」「ガバナンス」「文化」の分野で評価が特に高く、アンケート結果ではドイツ製品の購入、投資先としてのドイツ企業への魅力、ドイツ人の雇用適正、政府の貧困対策、という点に特に好意的な回答が寄せられた。各分野に複数のカテゴリーがあるなか、これら5つのカテゴリーではドイツがトップ2位内に入っている。東京五輪のメダル獲得数では9位にとどまったものの、スポーツの評価に影響はなかったようだ。
2位はカナダで、「ガバナンス」「国民性」「移民と投資」の各分野で1位に輝き、「輸出」「観光」「文化」においても安定的な評価を獲得した。カナダ政府は昨年2021年から2023年の3年間で合計120万人以上の移民を受入れる計画を発表しており、経済低迷と人手不足を移民や海外労働者の積極的な受入れで補う方針を強めていることも、高評価につながったであろう。
イギリスはトップ3圏外へ。アメリカも評価を落とすも回復の兆し
昨年2位だったイギリスは、5位にランクダウン。科学技術への貢献やスポーツ・現代文化・高い教育資格に対して好意的に捉えられているものの、「国民性」と「ガバナンス」での評価の低下は、人々の歓迎ムードの欠如と環境保護への政府の対処が要因と言える。アメリカは「政治」「観光」「移民と投資」の分野で低評価となり、コロナ禍での混乱が続いてはいるものの、新しい大統領就任が影響したのか、前年から2ランク上げて8位になり、それぞれの項目での評価が改善された。
※2021年の調査から追加対象となった、10カ国:アイスランド、スロバキア、モロッコ、ラトビア、イスラエル、ドミニカ共和国、エクアドル、モンゴル、タンザニア、パレスチナ
日本とイタリアが躍進。共に観光、文化、国民性で高評価
日本は総合3位となり、2018年に総合2位にラインクインしたとき以来のトップ3入りとなった。今年の調査では、「輸出」「観光」「文化」「国民性」の4分野が高評価となり、得票数は昨年の67.81から70.52に上昇し、2位のカナダとは0.12ポイントと僅差だった。
アジア屈指の観光立国を目指す日本だが、旅行先としての世界の評価はおしなべて高い。たとえば、米国の大手旅行雑誌「Condé Nast Traveler(コンデ・ナスト・トラベラー)」が先月発表した2021年の読者投票ランキング「Readers’ Choice Awards」では、「世界で最も魅力的な大都市トップ10」の上位3都市を東京、大阪、京都と日本が独占。同誌の国別ランキングでも日本が3位に入るなど、コロナ禍においても旅行先としての人気は健在だ。
また、大規模スポーツイベントの開催は国のイメージアップに繋がり、国を一ブランドとして確立する絶好の機会となる。無観客開催ではあったが、東京五輪開催地であることが好印象となり、ランクアップに寄与したと言えよう。さらには、「無くした財布がそのまま戻ってくる」と驚かれる日本人の誠実さ、いまだに根強いMade in Japanの商品に対する信頼性なども高評価に繋がる。
イタリアは日本同様「観光」「文化」「国民性」への評価が高く、6位から4位に順位を上げた。
なお、アジアではほかに、23位(前年23位)に韓国、25位(同24位)にシンガポール、31位(同35位)に中国、33位(同32位)に台湾、34位(同31位)にタイ、40位(同34位)にインド、43位(同41位)にインドネシアが入った。
今回の調査では、「お金を考えなければ世界を旅したい」という旅行意欲が、過去最高値をマーク。コロナ禍で一時低下していたが、ワクチン接種率の高まりや入国規制の緩和などで、再び上向いたようだ。やまとごころ.jpが過去に掲載した記事では、新型コロナウイルスの終息後に行きたい旅行先として5割近くが日本を挙げていた。世界的な旅行意欲の復活は訪日への大きな後押しに、なるのではないだろうか。
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