データインバウンド
コロナ禍での国内旅行の特徴は? 少人数、自然、SNS投稿回避の傾向が明らかに—JTB総研
2022.06.30
やまとごころ編集部株式会社JTB総合研究所は、コロナウイルス感染症のパンデミック発生以降、日本人の旅行意識調査を定期的に実施してきたが、それらの調査をもとに、今回「コロナ禍における日本人の国内旅行実態調査」の結果をまとめた。コロナ禍の前後で日本人の国内旅行はどのように変化したのか比較するため、全国15~79歳以上の男女2万人を対象に予備調査を実施し、そのうち、2019年~2021年9月に国内旅行に行ったと回答した2016人を対象に本調査を行った。調査時期は2021年10 月6日~12日、インターネットアンケート形式で行われた。
(図・表出典:株式会社JTB総合研究所「コロナ禍における日本人の国内旅行実態調査」より)
コロナ禍で旅行した人は3割、パンデミック前より旅行頻度が多い層
まず2万人を対象に行った予備調査では、コロナ禍の2020年4月以降に旅行したと回答した人は全体の30.5%、旅行していない人は69.5%だった。コロナ禍でも旅行した人はどのような層なのか、コロナ禍前の旅行頻度に着目すると、全体平均では年2~3回が24.1%なのに対し、コロナ禍でも旅行した人は年2~3回が40.8%もいた。また、全体平均では年4~5回が7.5%に対し、コロナ禍でも旅行した人は16.9%と2倍以上だった。つまり、もともと旅行頻度が高い層が、コロナ禍でも積極的に国内旅行へ出かけていた実態が浮き彫りとなった。
Go Toトラベルキャンペーン期間中に最も旅行したのは男女ともに60~70代
続いて、コロナ禍でも旅行したと回答した人を対象にした本調査で、いつ旅行したか直近の時期を聞いたところ、2021年7月~9月が30.6%と最も多く、次いで、Go Toトラベルキャンペーンが実施されていた2020年10月~12月が12.9%だった。
Go Toトラベルキャンペーン期間の2020年10月~12月を世代・男女別に詳しくみていくと、男女60代が突出して多かった。次いで、男女70代も全体平均より多く、Go Toトラベルキャンペーンを利用して国内旅行に出かけたのは男女60代、70代が多いことがわかった。一方、20代~30代の層はGo Toトラベルキャンペーン期間の2020年10月~12月は消極的だったが、2021年7月~9月では全体平均の30.6%を上回っており、キャンペーンの有無に関わらず、コロナの感染状況が落ち着いてきてからは国内旅行に意欲的な傾向が明らかとなった。
近場のマイクロツーリズムが主流も、三大都市圏の旅行先は分散の傾向
コロナ禍での旅行先をみると、緊急事態宣言の影響もあって居住地域内での旅行が主流となったことも明らかとなった。特に北海道では82.5%、東北地方で79.8%、九州で69.9%と高かった。コロナ前(2020年3月以前)と比較すると、北海道は44.7ポイント増、東北地方は42.8ポイント増と大幅に増加した。一方、関東地方では33.7%、近畿地方で34.6%と他地域に比べて居住地内旅行は3割程度にとどまり、各地への分散傾向がみられた。
観光地巡りより、リラックスする旅が人気
旅行の理由をコロナ禍前後で差がでたものに着目してみていくと、コロナ禍前より増加したのが、「リラックスする、のんびりする」が9.8ポイント増、「温泉」が5.9ポイント増、「家族と楽しく過ごす」が3.7ポイント増だった。一方、コロナ禍前より減少したものは、「名所や史跡などを見る」が10.5ポイント減、「街歩きやショッピング」・「イベント・祭り・観劇・観戦など」は5.3ポイント減だった。
「帰省」に関して細分化してみると、コロナ禍前(2019年~2020年3月)が4.7%いたのに対して、2020年4月~12月には1.3%まで減少し、2021年以降の旅行では5.8%に復活した。コロナ禍初期の混迷期は、感染症対策の観点から帰省を自粛していたが、ワクチンの普及とともに感染状況が落ち着いてからは久しぶりに家族と会うために旅行するという様子がうかがえる。
利用する交通機関は「乗用車・レンタカー」がコロナ禍前より16.7ポイント増えて、66.1%と最も多かった。そのほかの交通機関は軒並み減少し、「JR新幹線」は7.6ポイント減の18.4%、「飛行機(従来の航空会社)」は8.0ポイント減の13.9%だった。
家族旅と1人旅は上昇、友人・知人との旅行は減少
同行者は、夫婦・パートナーのみと回答した人がコロナ禍前よりも4.2 ポイント増えて、35.0%と最も多かった。次いで、1人がコロナ禍前よりも0.7ポイント増えて17.7%だった。友人・知人と回答した人は前回よりも3.9 ポイント減り、11.3%に留まり、コロナ禍では家族以外の人との旅行は控えている様子がうかがえる。
4人に1人は、周囲の目を気にして密かに旅行を実施
コロナ禍でも旅行した人に、どのような点を意識して旅行を実施したか聞いたところ、全体では「少人数の旅行」が35.9%と最も多く、その他には「自然など密が避けられる場所」が26.0%、「旅行に行ったことを周囲に話さないようにした」が25.5%といった声が挙がった。「旅行に行ったことを周囲に話さないようにした」という回答者は男性層よりも女性層に多く、特に女性29歳以下~50代においては30%を超えていた。また、「SNSなど旅行についての投稿を避けた」は男女29歳以下・30代で意識が高く、感染対策のみならず、周囲からどう見られるかを気にしながらの旅行実施であったことがわかった。
このようなコロナ禍での旅行を経験した人に対して、今後自由な移動が可能になった場合、どのような旅行が実施されるべきか聞くと、「GoToトラベルなどの割引・低価格政策は必要だ」が35.6%、「ワクチン接種証明や陰性証明により行動の自由や特典が受けられるとよい」が31.1%、「キャッシュレス化を一層進めるべき」が22.8%といった声が上位に挙がった。「団体ツアーの参加は減らしたい」は全体では18.2%だったが、女性70代では40%近くにのぼった。また「コロナ禍前のように訪日外国人が多数訪れる状況に戻ってほしくない」が15.6%いるなど、知らない人と接することや混雑した場所を避けたい意向が表れた。
株式会社JTB総合研究所による「コロナ禍における日本人の国内旅行実態調査」の結果はこちら
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