データインバウンド
順調に回復する世界のクルーズ市場、人気はテーマ型クルーズやリバークルーズ
2022.11.04
やまとごころ編集部世界のクルーズ産業はコロナ禍の低迷から順調に立ち直りつつあると、米国に拠点を置く市場調査・情報企業であるグランド・ビュー・リサーチ社の新しい報告書が伝えている。
世界のクルーズ市場はパンデミックで大きな打撃を受けた。大半のクルーズが各地で足止めされ、出発予定のクルーズはキャンセルされた。クルーズライン国際協会(CLIA)の発表によると、2020年の世界のクルーズ旅客数は前年比80.0%減だったという。ただし、規制緩和が進んだことによってクルーズが再開され、今後は緩やかながらも確実な回復を遂げるはずだ。
世界のクルーズ市場規模は2021年に72.5億米ドルだったが、2022年から2028年にかけて年平均成長率(CAGR)11.0%で拡大すると予測されており、2028年までに151億ドルの規模になるとされている。移動、食事、宿泊、エンターテインメントを含むクルーズでのバケーションが、陸上での代替バケーションと比較して、より手頃な価格で楽しめるというのが大きな要因だろう。
Z世代をも惹きつける可能性のある、クルーズの魅力とは?
リピーターも多く、初心者をも惹きつけるクルーズの魅力とはなんだろう。クルーズとは、広い内海や海をクルーズ船で移動しながら、特定のルートでさまざまな観光地を訪れる、数日間の休暇旅行のことを指す。この種の航海では、観光客の興味を引く目的地とともに、船上での滞在に重点が置かれる。
特に最近になって人気なのが、ヨガなどのウェルネス、子供向け、行き先を伏せたミステリーツアーなどのテーマ型クルーズで、そこで提供される船内特別プログラムは、目的地だけでなく、海上で過ごす時間をさらに魅力的なものにしているようだ。
また、成長が予測される2022年~2028年においてクルーズ市場で注目されるのが、Z世代によるレジャー旅行や航海の増加、そして贅沢な生活を送ることを好む人口の増加だ。CLIAは、予測期間中に、Z世代がクルーズ業界の最大の消費者としてミレニアル世代を上回る可能性があると報告している。
また、リバークルーズの人気の高まりは、世界のクルーズ市場を牽引するものと見られている。リバークルーズは、沿岸部だけでなく、国内を旅行する魅力的なパッケージを提供しており、特にヨーロッパ諸国でますます人気が高まっている。ドナウ川、ライン川、セーヌ川沿いの美術館や歴史的建造物を満喫する1週間程度のクルーズなどが有名だ。
▲ドナウ川クルーズ
一方で、海洋クルーズによる環境汚染に対する懸念の高まりがクルーズ市場の成長を抑制する側面もある。特に大勢の乗客や乗組員を載せるクルーズ船は、大量の廃棄物や汚染物質を発生させており、海洋クルーズ船は、世界全体の海洋汚染の約77.0%を引き起こしていると言われているからだ。環境保護団体や市民団体による啓発活動は、クルーズ市場の成長に影響を与える可能性があるため、発生した廃棄物の持続可能でクリーンな処理に関する開発・研究が進んでいる。
北米が牽引するクルーズ市場
下のグラフを見てもわかるように、2021年の世界のクルーズ市場は、北米が全体の収益シェアの約50%を占め、主導権を握っている。その要因について、報告書によると、北米大陸ではクルーズ市場が成熟していること、カーニバル・コーポレーション&PLCやロイヤル・カリビアン・グループなど、大手クルーズ運航会社の存在、そして旅行や観光に対する消費支出の増加を挙げている。収益シェアの2位は欧州で25%を占めた。さらにアジア、中南米が続く。
(図出典:Grand View Research, Inc.)
またリバー・クルーズは最も高い成長率が見込まれ、2022年から2028年までの年平均成長率は13.3%と予測される。アナリストによれば、この成長率の上昇は、リバークルーズのパッケージの人気上昇と、パンデミックの影響による外航船の運航能力の低下によってもたらされるとのことだ。
このように世界のクルーズ市場はパンデミック後を見据え動いている。韓国も10月24日から国際クルーズの受け入れを再開、外国人旅行者の下船も認めた。一方、2020年以降、日本発着の外国船による国際クルーズ(乗船地、または下船地、寄港地のいずれかに海外を含むクルーズ)は運航停止が続いている。10月11日からの水際対策の大幅緩和に合わせて沖縄観光コンベンションビューローが国際クルーズの早期再開の要望書を官房長官に提出するなど、運行再開を望む声は高まっているが、まだ少し時間がかかりそうだ。
なお、クルーズではないが、11月4日から、福岡と釜山を結ぶ航路が、2020年3月9日の運休から2年7カ月ぶりに再開するという。
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