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アジア太平洋地域への旅行者、2023年Q4の回復顕著。日本は近長距離市場双方から注目

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ポストコロナの世界の旅行市場が目覚ましく回復する中で、アジア太平洋地域への旅行の回復は当初、厳しい渡航規制などがあって遅々として進まなかった。しかし、潮目はようやく変わりつつあり、2023年の最終四半期には国際線到着者数が力強く回復し、2019年の水準に近づきつつあるとのことだ。太平洋アジア旅行協会(PATA)と大手旅行情報会社ForwardKeysが共同で、新しいレポートを発表した。
(図版出典:ForwardKeys)


アジア太平洋への旅行、回復に地域差あり

ただし、アジア太平洋地域への旅行の回復はすべての国で一様に起こっているわけではない。当然ながら、一部の国は他より先んじている。中でも回復が早いのは南アジアで、第4四半期は2019年同期比5%減となっている。この急速な回復は、2019年の水準を4%上回ると予想されている国際線座席数の堅調な回復に支えられている。

▶︎南アジアがリードするAPAC地域の回復:2023年第4四半期国際線到着者数予測(2019年同期比)

 

第4四半期のAPAC地域上位デスティネーションはインドと日本

地域別デスティネーションで最も回復力があるのは南アジアのインドで、観光客到着数の減少は2019年同期比わずか1%。航空券の予約状況から、2023年第4四半期の観光客到着数は2019年レベルに達する見込みだ。

日本も2019年同期比11%減となり、パンデミック前のレベルに近づくと予想される。日本は、近距離市場(特に韓国、シンガポール、オーストラリア)と長距離市場(特に米国、カナダ、ドイツ、フランス)の両方から旅行者の関心を集めることに成功している。円安で、幅広い旅行者層に行きやすい目的地となっていると言えるだろう。

日本を含む北東アジア地域全体としても、2019年同期比29%減と、南アジアについで回復が進んでいる。特に2023年の第3四半期までは2019年同期比51%減だったため、回復に拍車がかかっていることがわかる。

▶︎
2023年第4四半期の国・地域別国際線到着者数伸び率
(2019年同期比)

 

オセアニアは停滞気味

全体的に風向きは良好だが、アジア太平洋地域の旅行業界にとって、航空便利用は依然として大きな課題となっている。パンデミックにより、便数の減少や航空運賃の高騰が起こり、現在もその影響は続いているからだ。同地域への旅行や同地域内の旅行は、以前よりも割高で時間がかかり、同地域の完全な回復を妨げている。

それが顕著に見らるのがオセアニア(2019年同期比37%減)だ。同地域の航空旅行への依存度の高さ、航空運賃の高騰、主要市場(主に中国)の回復の遅れが、オーストラリアやニュージーランドといった主要デスティネーションの回復を難しくしている。その結果、多くの旅行会社が国内市場に重点を移している。とはいえ、フィジー、フランス領ポリネシア、サモアのような小規模のデスティネーションは、サブリージョンの成功例として際立っている。

 

状況の変化に敏感に

こうした課題はあるものの、アジア太平洋地域には、今後数カ月間の旅行回復を後押しする重要な資産がある。それはつまり、中国人旅行者の戻りが堅調なこと、インドのアウトバウンドおよびインバウンド市場が成長していること、旅行需要を喚起するための地域全体のDMOによる絶え間ない努力があることなどだ。

福岡、ニャチャン(ベトナム)、ナンディ(フィジー)といったAPACの都市は、2019年同期比でそれぞれ55%増、17%増、11%増と、第4四半期の海外からの到着者数がパンデミック前の水準を上回っている。希望を感じる数字だと言えるだろう。

なお、ForwardKeysのインサイトエキスパート、ナン・ダイ氏はこうした状況を受け、「2019年以降、地政学的な出来事、技術の進歩、持続可能性への注目の高まりの影響を受け、観光にまつわる状況が進化していることを念頭に置くことが重要だ。この地域の観光地や旅行関係者もまた、2024年に向けて、こうした変化を考慮する必要がある」と話す。

 

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