データインバウンド
2025年5月の訪日宿泊者数、鳥取・宮崎で高い伸び率。クルーズ寄港や航空増便が後押し
2025.08.01
やまとごころ編集部観光庁が2025年5月の宿泊統計(第2次速報)を発表した。
それによると、5月の延べ宿泊者数は5564万人泊(前年同月比2.3%増)となった。そのうち、外国人延べ宿泊者数は1586万人泊(同16.7%増)で、全体の28.5%を占めている。日本人宿泊者は3978万人泊(同2.4%減)と減少が続いており、インバウンド需要が宿泊市場を下支えしている構図が鮮明になっている。

三大都市圏の外国人宿泊者数は堅調、地方は20.7%増と高成長に
都道府県別でみると、東京都が549万930人泊で最多。次いで大阪府(227万6950人泊)、京都府(186万9790人泊)、福岡県(77万2810人泊)、沖縄県(76万230人泊)が続いた。

三大都市圏(※1)の外国人宿泊者数は1111万人泊で前年同期比15.0%増だったのに対し、地方部は475万人泊で20.7%増と、成長率で上回った。地方誘客の取り組みが一部で成果を上げているとみられる。
▶︎都道府県別外国人延べ宿泊者数(2025年5月(第2次速報))と前年同月比

※前年同月比は、速報値との比較。なお、新潟県は標準誤差率が20%を超えており留意が必要。
外国人宿泊者数の伸び率トップは鳥取、三重と宮崎も好調
5月の外国人宿泊者数を都道府県別にみると、鳥取県が2万1950人泊で前年同月比160.7%増と最も高い伸び率を記録した。
次いで、宮崎県(73.1%増)、三重県(61.8%増)、秋田県(61.0%増)、新潟県(58.9%増)と、地方部での高成長が目立った。一方、石川県(3.9%減)、福井県(17.0%減)、長野県(5.3%減)、岐阜県(5.6%減)など、北陸・中部内陸部では減少傾向が見られている。

4月に続き、鳥取県と三重県の伸び率は好調を維持した。
三重県では、鳥羽港への国際クルーズ船の相次ぐ寄港が宿泊者数の押し上げに寄与したとみられる。5月には、シーニック・エクリプスⅡ、ZHAO SHANG YI DUN、ル・ソレアルなど複数のクルーズ船が寄港。これらの多くは欧米の高付加価値旅行者層をターゲットとしており、寄港による地域の認知度の向上や、関係者による事前・事後の宿泊、観光消費の波及が期待される。クルーズ船の寄港は宿泊を伴わないケースもあるが、一部乗客による前泊・後泊や、寄港関連の業務滞在など、間接的な宿泊需要を生む可能性がある。鳥羽港では初寄港となる船も多く、地域への関心の高まりがうかがえる。
5月の伸び率で2番目となった宮崎県では、宮崎市がインバウンド向けのプロモーションを強化している。とくに韓国・中国市場の回復に加え、台湾・香港市場への重点的なアプローチを進めており、2025年2月に発表された「宮崎−台北線」の増便が台湾からの誘客を後押ししたとみられる。
引き続き中国・米国が牽引役
国籍別では、中国が244万人泊(32.0%増)で先月に引き続きトップ、次いでアメリカ(171万人泊、27.9%増)、台湾(151万人泊、9.3%増)、韓国(150万人泊、1.1%増)、オーストラリア(56万人泊、18.2%増)と続く。中国やアメリカなど大規模市場に加え、ロシア(10万人泊、127.5%増)、インド(20万人泊、70.6%増)、スペイン(18万人泊、58.1%増)などが大きな伸びを示した。
一方、シンガポールと香港はマイナス成長となった。特に香港は、日本での地震に関するSNS上の情報の影響などもあり、前年同月比17.1%減と大きく落ち込んだ。
▶︎国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(2025年5月[第2次速報])
![国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(2025年5月[第2次速報])](https://yamatogokoro.jp/inbound/wp-content/uploads/2025/07/05cd10632bbcb7142a3042d4f1aead21-925x1024.jpg)
※1 )三大都市圏とは、「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫」の8都府県を、地方部とは、三大都市圏以外の道県をいう。
<編集部コメント>
観光資源だけでは足りない?宿泊需要を動かす「動線づくり」
一見すると都市部の数字が目立つが、今回は地方部の20.7%増という成長率に注目したい。鳥取、宮崎、三重では、クルーズ船の寄港や航空路線の増便が宿泊需要に波及しており、交通インフラの戦略的整備が訪問者数の増加に直結していることがうかがえる。こうした動きは、単なる「観光資源の魅力」だけでなく、アクセス改善やプロモーションの精度が訪日客の動線を左右することを裏付けている。エリア特性と市場特性を見極めたうえで、宿泊・交通・体験コンテンツを連動させる発想こそが、地方誘客の再現性を高める鍵となるのではないだろうか。
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査 2025年5月・第2次速報、6月・第1次速報
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