データインバウンド
2026年旅行トレンド 沖縄が世界2位、スポーツ観戦やロケ地巡りが主流。次世代が旅に求める価値観とは?
2025.10.28
やまとごころ編集部2026年の旅行トレンドを予測するグローバルレポート『Unpack’26』が、エクスペディア・グループ(Expedia、Hotels.com、Vrbo)により発表された。自社の予約・検索データに加え、日本を含む世界18地域・2万4000人を対象に実施した調査結果をもとに構成されている。本記事では、レポートで紹介された中でも注目度の高い5つのトレンドを取り上げる。
2026年の注目旅行先ランキング、沖縄が世界2位に。文化・自然体験が高評価
「今年の注目旅行先」ランキングは、エクスペディアの検索データに基づき、世界中の旅行者が関心を寄せる目的地を示している。検索増加率トップは、アメリカ・モンタナ州のスキーリゾート地「ビッグスカイ」。冬はスキーやスノーボード、夏はハイキング、ジップライン、マウンテンバイクなど、年間を通じて多様なアクティビティが楽しめる点が評価された。
2位には日本の沖縄がランクイン。美しい海や自然、マリンスポーツに加え、世界遺産や伝統文化など地域特有の体験への関心の高まりが背景にあるとみられる。
▶︎2026年版注目旅行先
ランキングに掲載された旅行先のうち「★」が付いた6カ所は、「スマート・トラベル・ヘルスチェック」認定を受けている。これは、旅行者にとって魅力的な体験を提供しつつ、地域社会や環境への負担軽減に配慮した観光地を評価する制度で、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の指針を基に策定された。オーバーツーリズムの緩和にもつながる取り組みである。
ローカルスポーツ観戦が人気上昇 地域文化への没入体験を重視
2026年はサッカーワールドカップなど国際スポーツイベントが注目される一方で、ローカルスポーツを観戦する旅「Fan Voyage(ファン・ボヤージュ)」が人気を集めている。これは、その土地ならではのスポーツを観戦・体感することで、旅の一部として文化を深く味わうスタイルだ。
調査では、旅行者の57%が「旅行中に地元のスポーツを観戦したい」と回答。特にZ世代・ミレニアル世代(18〜44歳)では68%に上り、日本の相撲、タイのムエタイ、カナダのカーリングなどが例に挙がった。
この傾向は、単なる「観戦」にとどまらず、「地域・文化・コミュニティに入り込む体験」、すなわち“地元の人になったような感覚”を得ることに重きが置かれている。
日本人旅行者は伝統や文化を重視、観戦体験に学びや共感を求める傾向
また、旅行時にその地域ならではのローカルスポーツを観戦したい理由について、日本人の旅行者は、「その地域の伝統や文化を学びたい(55%)」が最も多く、次いで「観戦時の雰囲気やエネルギーを感じたい(51%)」「自分が住んでいる地域では見られないスポーツを観戦したい(51%)」という回答が続いた。スポーツそのものよりも、地域の文化や人々の暮らしを体感することに価値を見出している傾向がうかがえる。

エクスペディアがすすめる「スポーツ観戦の旅」10選は以下の表にある通りだ。これらはいずれも「観戦+その場所の生活・文化を垣間見る」ことができる旅の要素として位置づけられており、スポーツそのもの以上に“その場に居る/体感する”という価値が注目されている。
▶︎エクスペディアがすすめる「スポーツ観戦の旅」10選
相撲は体験アクティビティも含め、訪日客に人気がある。そのほか、あまり馴染みがないと思われるものを紹介すると、アメリカのバナナボールは野球の進化系と言われるスポーツ。多くの人が野球に感じる「遅すぎる、長すぎる、退屈」という点を、制限時間2時間にしてエンタメ性を高め、今や大リーグの球場で行われる試合はチケット争奪戦という。また、ルチャ・リブレはメキシコ風プロレス。アイルランドのハーリングは国技で、ケルト族に起源をもち、スティックとボールを使用して行う屋外スポーツだ。これらの没入型の旅行体験は、文化観光と地元のスポーツのスリルを融合させ、忘れられない休暇の思い出を作り出すだろう。
歴史建築を活用した「リノベ宿」が注目 Z世代中心に体験型宿泊が拡大
世界では、歴史的な建物を活かしつつ、最新の設備を整えてリノベーションしたホテルを選ぶ旅行者が増えている。かつて学校や駅、銀行として使われていた建物を改装した個性豊かなホテルに滞在するトレンドを、Hotels.comは「Salvaged Stays(リノベ宿ステイ)」と呼ぶ。
この「リノベ宿ステイ」の魅力は、快適さはもちろん、建物の歴史や文化を感じながら滞在できることにある。画一的なホテルでは満足できないというニーズが顕在化している。実際、旅行者の72%が、次の滞在先として歴史的な魅力と現代的なデザインを組み合わせたホテルを予約する可能性が高いと回答している。
既存建築の再活用は、サステナビリティの観点からもCO2排出削減や地域資源の保全に貢献するとされる。
特に若年層(Z世代・ミレニアル世代)を中心に、宿泊の質だけでなく“滞在先そのものが体験になる”という価値を求めており、マーケティングや宿泊商品設計にもその視点を取り入れるといいだろう。
京都市立清水小学校を再生した「ザ・ホテル青龍」の事例
Hotels.comがおすすめする「リノベ宿ステイ」ができるホテル10選のトップに上がったザ・ホテル青龍 京都清水は、1933年に東山の傾斜地に建てられた元京都市立清水小学校の校舎を改装したものだ。スパニッシュ瓦やアーチ型の窓など、校舎の意匠をできるだけ保存・活用し、広い敷地に48室のみの5つ星ホテルとして再生された。
▶︎Hotels.comがすすめする「リノベ宿ステイ」ができるホテル10選
ホテル・ホッピングが世界的に増加 日本では“ワクワク感”重視の傾向
ひとつのホテルに滞在するだけではもはや十分ではない。旅行者は、同じ旅行で複数のホテルを予約することが、その旅行先を深く探索する最善の方法と考えており、こうしたトレンドを「Hotel Hop(ホテル・ホッピング)」と呼ぶ。都市内で複数のホテルを巡ることで、エリアごとの特色や雰囲気を楽しむ、いわば“ホテル版バーホッピング”のような滞在スタイルである。
世界の旅行者の半数以上(54%)が「ひとつの旅行先で複数のホテルに宿泊したい」と回答しており、「ホテル・ホッピング」が新たな旅行トレンドとして注目を集めている。
世界では「お得さ」、日本は「旅のワクワク感」を重視
その理由として最も多かった世界の回答は「さまざまなエリアを観光するため(50%)」、次いで「よりお得な値段で宿泊するため(35%)」などが挙げられた。
一方、日本人の回答に限定すると、半数以上(56%)の人が「旅に変化とワクワク感を加えるため」と回答しており、この割合は世界で最も高い結果となった。1回の旅行でも常に新鮮な体験や刺激を求めていることがわかる。

また、どのような旅行で「複数ホテル宿泊」を検討するかという設問では、世界の旅行者では「都会での滞在(53%)」や「リゾート島での滞在(48%)」が上位に挙がった。一方、日本人は半数以上(59%)の人が「グルメ旅行」と回答しており、世界で最も高い割合となっている。

東京では「静と動」の二面性を体験
東京でホテル・ホッピングを行う例として挙げられたのは、浅草の旅館と渋谷のホテルを組み合わせるケースだ。
伝統的な旅館「茶室 ryokan asakusa」と、モダンな「ホテルインディゴ東京渋谷 by IHG」に泊まることで、東京の「静」と「動」、「伝統」と「現代カルチャー」という対極的な魅力を体験できる。
▶︎ホテル・ホッピングにおすすめの旅行先とホテル
「ホテル・ホッピング」は特にZ世代やミレニアル世代に人気で、4人に1人(25%)が仕事のついでに観光もする「ブレジャー」の旅行は、複数のホテルでの滞在を楽しむ絶好のチャンスだと考えているようだ。ホテルを移動することで得られる多様な視点や体験が、次世代旅行者にとって旅そのものの価値を高めている。
ロケ地巡り旅が主流に Z世代・ミレニアルが物語体験を求める
2022年以降、3年連続で注目のトレンドになっている「ロケ地巡り旅」(Set-Jetting)。世界の旅行者の53%が「この1年でロケ地巡りへの関心が高まった」と回答し、Z世代・ミレニアル世代では81%が「映画やテレビ番組で見たロケ地をもとに旅行を計画している」と答えた。この傾向は、すでにニッチではなく主流の旅行スタイルとなりつつある。
日本人旅行者も、「実際にロケ地巡り旅を予約したことがある」と回答した割合は半数近く(49%)に上り、世界で2番目に多い割合となっている。
「本」に影響を受ける日本、SNSが牽引する世界
また、旅行先を決めるのに影響を受けたものについて、世界の旅行者では「SNS(49%)」が最も多く、次いで「動画配信サービスの番組や映画(40%)」が続くのに対し、日本では「テレビ番組(46%)」が最多で、次いで「本(26%)」という結果になった。「本」と回答した割合は日本が世界で最も高く、独自の傾向が見られた。

▶︎エクスペディアがすすめる「ロケ地巡り旅2026」の旅行先
| ロケ地 | 作品 | ジャンル |
| イギリス、ヨークシャー | 「嵐が丘」「ダウントン・アビー」 | 映画、ドラマ |
| イタリア、トスカーナ | 「ジェイ・ケリー」 | 映画 |
| サモア | 「モアナ ライブアクション」 | 映画 |
| クロアチア、ダルマチア海岸 | 「People We Meet on Vacation」 | 映画 |
| ギリシャ、ペロポネソス半島 | 「オデュッセイア」 | 映画 |
| アメリカ、ロサンゼルス | 「こんなのみんなイヤ!」 | ドラマ |
| ニュージーランド、ウェリントン | 「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」 | 映画 |
| フィリピン、パラワン島 | 「The Last Resort」 | 映画 |
エクスペディアが推奨する2026年のロケ地巡り先には、イギリス・ヨークシャーのなだらかな丘陵地帯やクロアチアの壮大な海岸線など、世界中の魅力的な旅行先が並んだ。物語の舞台を追体験する旅が、旅行者にとって定番のスタイルとして定着しつつある。
【編集部コメント】
「体験」を編集する時代に、沖縄2位が示す旅行価値の転換点
エクスペディアの『Unpack’26』が示すのは、「どこへ行くか」より「どう過ごすか」が価値の中心になっているということだ。沖縄の世界2位ランクインは、自然・文化・体験が調和したデスティネーションとしての成熟を象徴している。リノベ宿やホテル・ホッピング、スポーツ観戦、ロケ地巡りといったトレンドはいずれも、“旅の中で物語をつくる体験”を重視する若年層の心理に根ざしている。観光事業者にとっては、宿泊・食・文化といった要素をいかに「編集」し、体験として提示できるかが鍵となる。単なる施設提供ではなく、旅の文脈全体を設計する発想が求められる。自社の強みを活かした“体験の共創”をどう描くか、今こそ考えたい。
(出典:Expedia, Unpack’26 The Trends in Travel)
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