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2025年8月の訪日宿泊プラス転換 埼玉+61%など地方で伸び続く、7月減少を挽回

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観光庁が発表した2025年8月の宿泊旅行統計(第2次速報)によると、外国人延べ宿泊者数は1385万人泊で、前年同月比で3.8%増となった。前月の7月は4.2%減と、コロナ後で初のマイナス成長だったが、8月は再びプラスに転じた。都市部で明暗が分かれる中、地方部では高い伸びを示す地域が目立っている。

 

外国人宿泊数、地方が引き続き成長牽引し全体を下支え

延べ宿泊者数全体は6598万人泊で、前年同月比0.4%減。内訳は日本人5214万人泊(1.5%減)、外国人1385万人泊(3.8%増)で、外国人の構成比は21.0%となった。

三大都市圏における外国人延べ宿泊者数では、東京都が3.7%増と増加傾向を示す一方、大阪府は11.4%減と2桁のマイナスが続いた。地方部の外国人延べ宿泊者数では2桁増の県が複数あり、全国全体の宿泊需要を下支えしている。

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沖縄・神奈川が大幅増、大阪・千葉・山梨など2桁減

都道府県別の外国人延べ宿泊者数では、東京都が463万9080人泊で引き続き最多。以下、大阪府(191万2400人泊)、京都府(152万2940人泊)、沖縄県(99万690人泊)、北海道(96万4990人泊)が続いた。

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このうち、東京都(+3.7%)、京都府(+11.8%)、沖縄県(+50.1%)、北海道(+10.1%)、神奈川県(+30.7%)は前年を上回ったが、大阪府(-11.4%)、千葉県(-19.6%)、山梨県(-29.5%)などでは引き続き前年割れがみられる。

沖縄県では、韓国や台湾などのリゾート需要に加え、国際線やクルーズの復調がプラス要因となっており、神奈川県や京都府も、欧米を中心とした個人旅行需要の底堅さが寄与しているとみられる。

▶︎都道府県別外国人延べ宿泊者数(2025年8月[第2次速報])と前年同月比

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※前年同月比は、確定値との比較。なお、福島県、新潟県、佐賀県、沖縄県は標準誤差率が20%を超えており留意が必要。

地域別に見ると、三大都市圏(※1)の外国人延べ宿泊者数は前年同月比1.6%増の934万人泊だった。これに対し、地方部は同8.5%増の450万人泊となった。

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埼玉・鳥取・沖縄など高伸長、地方部が存在感示す

前年同月比の伸び率でみると、1位は埼玉県で61.6%増。以下、鳥取県(+59.5%)、沖縄県(+50.1%)、島根県(+45.7%)、三重県(+43.6%)が続いた。上位10県のうち、関東近郊や九州・中部など地方部の県が多数ランクインしており、地方誘客の取り組みが反映された形だ。

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埼玉県は宿泊者数そのものは2万人泊程度と小さいものの、成田や東京からのアクセスの良さを活かした日帰り+1泊需要などが伸びた可能性がある。鳥取県では韓国・台湾路線の復便や観光地のプロモーション強化が引き続き効果を見せている。三重・岩手・富山などでも前年比40%台の高い伸びが見られた。

 

中国がトップに返り咲き、韓国・香港はマイナス続く

国籍・地域別の宿泊者数では、中国が338万7470人泊(+19.1%)でトップ。次いで台湾(168万3330人泊、+6.7%)、韓国(119万4660人泊、-11.3%)、アメリカ(95万50人泊、+6.3%)、香港(51万7080人泊、-25.9%)となっている。この上位5カ国・地域で全体の65.5%を占める。

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中国市場は航空路線の回復やビザ要件の緩和などが下支えとなり、FIT層を中心に増加傾向が強まっている。反面、韓国・香港は引き続き前年割れが続いており、SNSによる地震情報の拡散に加え、団体依存型の回復鈍化や競合国とのシェア争いの影響が指摘される。

欧州や東南アジア市場は好調を維持しており、ロシア(+93.4%)、ドイツ(+41.1%)、インド(+31.3%)、フィリピン(+24.1%)、などが伸び率で上位となった。

地域別構成比はアジアが60%(うち東アジアが57.5%)、欧州が11.7%、北米が9.7%となった。

 

【編集部コメント】

地方部の高成長が牽引、訪日市場の再点検を

外国人宿泊者数は8月に再び増加へ転じ、地方部の成長が顕著となった。特に埼玉・鳥取・沖縄など地方圏の伸びが目立ち、都市部偏重からの分散が進んでいる。韓国・香港からの集客が苦戦する一方で、欧州・東南アジアからの訪問が堅調である。自地域でも、対象市場の見極めと誘客施策の磨き直しが求められる時期に来ているのではないだろうか。

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