データインバウンド

アドベンチャートラベル市場144兆円に拡大 1人42万円支出、文化体験派が最多

印刷用ページを表示する



世界のアドベンチャートラベル(AT)市場が過去最大の規模へと成長している。Adventure Travel Trade Association(ATTA)が発表した最新調査によれば、2023年のアドベンチャートラベル市場は9660億ドル(約144兆円)に達し、旅行者の志向や旅行スタイルの多様化が鮮明になっている。調査は、過去1年以内に海外旅行を経験、または今後1年以内に予定している世界13カ国(北米、アジア、南米、ヨーロッパ)5000人の海外旅行者を対象に、2025年第一四半期に実施された。

 

年平均成長率は6%、アドベンチャートラベル関心層は67%に

アドベンチャートラベルは、従来の身体的活動を主体とした旅行スタイルから、文化、自然、地域との交流を重視する方向へと変化している。ATTAの調査によれば、海外旅行者の67%が「アドベンチャーに関心あり」と回答。旅行の主目的としてアドベンチャーを選択する層も30%から40%へと拡大した。

市場規模も2017年の6830億ドル(約100兆1400億円)から、2023年には9660億ドル(約144兆円)へと成長し、年平均成長率は約6%。今や旅行市場における主要なジャンルの1つとして定着しつつある。

▶︎アドベンチャートラベルを選択する層は拡大している

アドベンチャーにオープンな旅行者が増えている

 

旅行者は4タイプに分類、最多は文化体験派の27%

調査では、旅行者をアドベンチャー志向に応じて4タイプに分類。

・アドベンチャー重視派(14%)
スリルや挑戦を求める旅行者。登山やキャンプ、都市からの離脱など日常を離れた体験に関心が高く、持続可能性やコストにも一定の配慮を見せる。

・自然愛好家(12%)
静かで没入感のある自然体験を好む層。森林浴やエコツアーを通じ、文化や地域との調和を重視する。

・文化体験派(27%)
地元の料理・芸術・歴史に深く関わる体験を求める旅行者。価格と品質のバランスを重視し、デジタルを活用して自ら体験を選び取る姿勢が特徴。

・バランス型旅行者(14%)
都市観光と自然体験、文化交流などをバランスよく組み合わせ、柔軟に旅を楽しむ層。

 

なかでも最多を占めたのは「文化体験派」の27%。また、「アドベンチャー重視派」「自然愛好家」「バランス型旅行者」を合わせた40%は、アクティビティや自然との接点を求める中核的なアドベンチャートラベル層とされている。

 

平均滞在11日・1人あたり支出は約44万円、サステナブルな行動も浸透

アドベンチャーに関心の高い旅行者は、滞在日数・支出額の両面で高いポテンシャルを持つ。調査によれば、彼らの平均旅行日数は11日間、1人あたりの旅行支出は約3000ドル(約44万2000円)に達する。1泊あたりの支出は約265ドル(約3万9000円)となり、観光地や事業者にとっては高単価なセグメントとして注目される。

また、アドベンチャートラベルの拡大とともに、旅行者のサステナビリティへの意識も高まりを見せている。必ずしも最優先の選択肢ではないが、地元産品の購入、オフシーズンの訪問、廃棄物削減といった具体的行動が浸透しつつある。なかでも人気が高いのは、小規模で地域に根ざした体験型アクティビティ。人とのふれあい、自然・文化とのつながりを重視するスタイルが主流となっている。

 

地域初の「本物」の体験が拡大、デジタルの発達で選択肢も多様に

アドベンチャートラベルへの関心が世界的に高まる中、観光地や旅行事業者が提供する体験の幅も大きく広がっている。以前は数種類に限られていた地域密着型のアクティビティも、現在では数十、場合によっては100を超える選択肢が用意されるようになり、旅行者の多様なニーズに応える形となっている。

この流れを後押ししているのが、Airbnb Experiences、GetYourGuide、TourRadarなどのオンライン旅行プラットフォームだ。旅行者は、興味に合った本物のアドベンチャー体験を簡単に検索、予約できるようになった。

加えて、地域の小規模事業者や文化団体の参入も進み、地域の文化や自然、暮らしと深く関わる“本物の体験”が各地で提供されている。こうした動きにより、アドベンチャートラベルは「どこでも楽しめるスタイル」として世界的に広がっている。

 

観光地・事業者への示唆|本物性・文化体験・長期滞在が鍵

調査では、観光地やツアーオペレーターに向けてた提言として、以下の点が示されている。

文化・ストーリー性の訴求:本物の体験や伝統文化の紹介が、旅行者の関心を惹きつける

多層的な体験設計:自然・アクティビティ・文化を組み合わせたプランが有効である

地域連携と持続可能性:地元職人やシェフ、保護団体などとの協働が、体験の本物性と持続可能性を高める

長期滞在志向への対応:11日以上の旅行スタイルに対応した滞在・商品造成が求められる

 

【編集部コメント】

文化体験と本物性が地域の強みに

世界的に拡大するアドベンチャートラベル市場。その背景には「文化とのつながり」や「自然体験」を求める旅行者の意識変化がある。

特に注目すべきは、文化体験派の台頭と、平均11日、3000ドルを超える高付加価値な消費傾向。これは地域の中小観光事業者にとって、自らの資源を“本物の体験”として届ける好機でもある。

地元の人々との関わりや、自然・文化資源を生かした体験設計が強みとなり得る。まずは既存の体験に小さな「文化の文脈」を加えることから始めてみてもよいかもしれない。

*記事内では、1ドル148円で換算

(出典:ATTA Adventure Travel Market Sizing and the New Adventure Traveler

 

▼関連記事はこちら
アドベンチャートラベルの定義や市場動向、地域の導入事例などを確認

ATTAが発表した2025年のアドベンチャートラベル市場のトレンドとは?

 

最新のデータインバウンド