データインバウンド
2025年WeChat投稿ランキングTOP10、中国市場で刺さった海外観光局の発信とは
2025.12.25
やまとごころ編集部中国市場向けの観光プロモーションにおいて、WeChatは依然として最重要プラットフォームの一つだ。では、中国人ユーザーに「読まれる」コンテンツはどのようなものなのだろうか。
本記事では、Dragon Trail Internationalのデータをもとに、WeChat上で公開された観光局投稿の閲覧数ランキングTOP10を分析し、中国市場で反応を得た観光コンテンツの共通点を読み解く。
本ランキングは、WeChat上で公開された国・地域・都市別の観光局の投稿を対象に、記事が公開された週の閲覧数を基準として集計されたもの。
WeChatは、世界全体で13億人以上のユーザーを抱え、中国国内では月間アクティブユーザーが10億人を超える生活インフラとして定着している。
なお、閲覧数上位24記事のうち23記事がマカオまたは日本関連だったため、より多様な目的地やテーマを紹介する観点から、本ランキングでは一部の記事を除外して編集している。除外対象には、マカオ政府観光局による台風情報や、日本旅行時の健康保険に関する定期案内、日本と中国を結ぶ新路線の発表、マカオの月間イベントカレンダーなど、実務的な告知投稿が含まれる。
1位はフィリピン、日本とマカオは上位常連
トップ10には、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの3地域のデスティネーションが名を連ねた。人気のトピックとしては、旧正月の祝祭やその他の文化的な祭り、新しいフライトや旅行政策の発表、中国国内でのイベントや求人情報などが含まれている。

1位は、フィリピン政府観光省が投稿した北京でのダイビング展示会「DRTエキスポ」の告知記事だった。同省は16のパートナーと共に、ダイビングセンターやリゾートの魅力を専門性の高い視点から発信。広範なプロモーションだけでなく、特定の趣味を持つ熱心な層へ深くアプローチしたことが、10万回近い閲覧を記録し、年間で最も高い関心を集めた。

続く2位は、日本政府観光局(JNTO)が全国各地の夏祭りを紹介した記事である。青森ねぶた祭、盛岡さんさ踊り、仙台七夕まつりといった、その土地ならではの「本物の日本文化」を体験できるイベントは、中国人旅行者にとって極めて強力なフックであることを証明した。

3位には、「マカオへの旅がさらに便利に!」と呼びかける、マカオ政府観光局による入境ルールの緩和に関する速報がランクインした。近隣都市の住民を対象とした政策変更は実用性が非常に高く、多くのユーザーが「思い立ったらすぐ行ける旅」の具体的な情報を切望している現状が浮き彫りとなった。

タイは安全性をアピール、オーストラリアは求人募集でランクイン
4位以下は、地域ごとに紹介する。
まず、アジア圏に目を向けると、香港政府観光局(6位)は旧正月に合わせてWeChat内で利用できる「デジタルお年玉袋」の限定カバーを配布し、プラットフォームの文化に即した手法でユーザーの参加意欲を刺激した。

7位に入ったのはタイ政府観光局の投稿だ。タイではここ1年ほど、安全面への懸念から中国人観光客の減少に直面していた状況にあり、中国政府が日本への渡航安全警告を出した数日後というタイミングで、タイへの再訪を呼びかける手紙を公開した。安全性を懸念する層に対し、監視カメラ設置やモバイル決済対応を認定する「Trusted Thailand(信頼のタイ)」プログラムを丁寧にアピールすることで信頼回復に努めている。
また、マレーシア政府観光局(10位)は中国本土以上の熱気があるという現地の旧正月の雰囲気を強調し、連休中の訪問を強力に促した。

欧州地域では、アクセスの改善と地域独自のブランディングが鍵となっている。スカンジナビア観光局(4位)は北京とオスロを結ぶ直行便の再開を発表し、2025年の欧州における成長率トップクラスの目的地として注目を浴びた。スペイン政府観光局(9位)は、同国が2025年に受けた数々の栄誉や記念碑的な文化イベントを列挙し、今訪れるべき理由を多角的な視点で訴求している。

最後にオセアニア地域では、ニュージーランド政府観光局(5位)が人気俳優の李現(リー・シエン)を観光大使に起用し、彼がマオリ文化や大自然を満喫する動画を通じてブランドイメージの刷新を図った。オーストラリア政府観光局(8位)は、上海オフィスでの求人広告がランクインするというユニークなケースだった。これは、観光業界でのキャリアに関心を持つ層へのリーチが、意外な形での話題作りに繋がった好例といえる。

2026年に向けたデジタル戦略の指針
WeChat投稿ランキングを分析すると、ユーザーの行動を促すための戦略ポイントとして以下の6つが浮かび上がった。
1. 安全性の可視化による信頼の再構築
「安全」を前提とせず、公的認証や具体的なプログラム名を通じて「安全に配慮した地域・施設」であることを明文化・可視化することが、来訪意欲のボトルネック解消を解消する不可欠なステップとなる。
2. 独自の日常を「予約」へ繋げる動線設計
祭事などの文化コンテンツは、単なる紹介に留めず、観覧席の確保や限定アクセス権の提示など、その時期にしか味わえない「本物の体験」を具体的に予約したくなる導線をセットで提示するとよい。
3. プラットフォーム文化への最適化
「デジタル紅包(お年玉袋)」のようなWeChat特有の機能や、限定クーポン、AR観光案内といったUX(ユーザー体験)の提供が、ユーザーの参加意欲を高め、認知拡大への近道となる。
4. 実用情報の速報性
ビザや航空路線のアップデートといった「旅行の前提条件」を迅速に提供することが、アカウントの信頼性を高め、具体的な予約アクションへと繋げるトリガーとなる。
5. アンバサダーによる共感の創出
著名人やKOLを起用し、彼らの視点で現地の風景を追体験させる動画コンテンツは、ブランドへの共感を生み、「同じ景色を見たい」という強い動機付けを行う上で有効だ。
6. ニッチな熱量へのダイレクトな訴求
特定の趣味を持つコミュニティに刺さる専門性の高い発信こそが、最大のエンゲージメントを生む。ターゲットを絞った「マニアックな情報」を恐れずに発信することが、効率的な突破口となる。
【編集部コメント】
2025年WeChat閲覧ランキングに見る、中国市場で響いた観光情報の本質
今回のランキングは、情報の「拡散力」ではなく「刺さる構造」を考えるヒントに満ちている。専門性の高いダイビング展示会が首位を獲得したことは、特定の趣味・関心層を狙った深い発信が大きなエンゲージメントを生む証左だ。安全性の明示や実用性の高い速報情報が求められている現状からも、旅行意思決定における情報の“鮮度と信頼性”の重要性が浮かび上がる。
また、WeChat特有のお年玉機能を活用した事例などは、単なる機能の利用に留まらず、「そのプラットフォームをユーザーがどのような心理・文脈で利用しているか」というデジタル文化への深い適応を示している。これはWeChatに限らず、どのSNSにおいても「その場にふさわしい振る舞い」でユーザーの参加を促す、汎用性の高いコミュニケーション設計と言える。
夏祭りや文化イベントのような日常の非日常化も含め、今後は「一方的な告知」から「ユーザーの熱量や習慣に溶け込む設計」がさらに問われるだろう。自社の情報発信も、単なる翻訳や転載ではなく「誰の、どんな文脈に届けるか?」という視点から再構築してみる価値がある。
(出典:Dragon Trail International, 2025’s Top 10 WeChat Posts by Tourism Destinations)
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