データインバウンド
2025年10月訪日宿泊3.7%増の1648万人泊、地方部の伸び率14%増で分散進む
2025.12.26
やまとごころ編集部観光庁が発表した2025年10月の宿泊旅行統計(第2次速報)によると、秋の観光シーズンを背景に、外国人延べ宿泊者数は前年同月比3.7%増の1648万人泊となった。9月からは400万人泊ほど増え、1729万人泊だった2025年4月以来の高い水準となっている。
日本人宿泊の鈍化をインバウンドが補う構図
宿泊者数全体では前年同月比1.6%減の5861万人泊だった。これは、日本人延べ宿泊者数が4213万人泊で、前年同月を3.6%下回ったことが主な要因だ。10月もインバウンド需要が宿泊市場を底上げを担う構図が鮮明となっている。


注目すべきは地域別の動向だ。三大都市圏が構成比の66.2%を占める一方、地方部は33.8%と着実にシェアを拡大。前年同月比で見ると、三大都市圏が0.8%減と足踏みするなか、地方部は14.1%増と二桁の伸びを見せており、地方分散が加速している状況がうかがえる。

都市部から周辺・リゾートエリアへ広がる滞在スタイル
都道府県別では、東京都や大阪府、京都府といった主要都府が引き続き大きなボリュームを占める。一方で、上位の東京や大阪が前年割れとなるなか、沖縄県や北海道、神奈川県、愛知県などが高い伸びを示した。特に沖縄県や神奈川県は前年比で大幅な増加となっており、都市部を拠点にしつつ周辺地域やリゾートエリアを組み合わせるなど、訪日客の滞在スタイルの多様化が進んでいるのが見て取れる。


鳥取・島根は好調な伸び続く、広域連携や情報発信が奏功か
前年同月比の伸び率に着目すると、鳥取県や島根県、新潟県、三重県など、インバウンドの母数が比較的小さい地域が10月も伸び率上位に並んだ。この背景には、いくつかの共通した構造が見て取れる。

一つは、自治体単位ではなく、広域でインバウンド誘客に取り組む体制づくりが進んでいる点だ。山陰エリアでは複数県・関係団体が連携し、海外の旅行会社やランドオペレーターと継続的に接点を持ちながら、周遊型の商品造成や受入環境の整備を進めてきた。こうした「地域全体で訪日需要を受け止める仕組み」が、母数の小ささを補う形で宿泊者数の伸びにつながった可能性がある。
もう一つの要因として考えられるのが、SNSやデジタルを活用した情報発信、そして国・地域を意識したプロモーションの積み重ねだ。三重県に見られるような特定市場を念頭に置いたプロモーションや、地域資源を明確なストーリーとして発信する取り組みは、必ずしも大規模な集客ではなくとも、実際の宿泊につながる確度の高い需要を呼び込んでいると考えられる。
中国市場が首位を堅持、アジア圏が需要の中核
国・地域別の外国人宿泊者数を見ると、中国が最多の247万8800人泊(前年同月比15.8%増)を維持。以降、米国(169万9250人泊、同3.2%増)、台湾(167万5310人泊、同12.7%増)、韓国(158万6910万人泊、同7.0%増)、オーストラリア(59万8110人泊、同6.6%減)となった。この上位5カ国・地域で全体の56.5%を占める。
▶︎国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(2025年10月[第2次速報])
地域別構成比はアジアが53.2%(うち東アジアが43.8%)、欧州が11.0%、北米が14.3%となり、アジア地域が引き続き宿泊需要の中核を担っているのがわかる。特に東アジアからの宿泊者数は前年を上回る水準で推移しており、短期滞在と複数都市・地域を組み合わせた旅行スタイルが宿泊需要を押し上げている。一方で、欧米豪市場についても回復基調は継続しており、滞在日数が比較的長い市場として、地方部の宿泊需要を下支えする役割が徐々に強まっていると考えられる。
【編集部コメント】
地方分散が示す、インバウンド宿泊需要の次の焦点
一見すると全体の宿泊者数は減少しているが、その内実を見ると、インバウンドが市場を下支えする構図がより鮮明になっている。特に注目したいのは、地方部の二桁成長と、都市部を拠点に周辺やリゾートへ広がる滞在スタイルの定着である。広域連携や市場を絞った情報発信が成果につながり始めている今、地域として「どの需要を取りにいくのか」を改めて言語化することが、次の一手を考えるヒントになるのではないだろうか。
(出典:観光庁、宿泊旅行統計調査2025年10月・第2次速報)
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