データインバウンド
2025年の訪韓客数1894万人で過去最高、中国・日本依存の構造に変化
2026.02.16
やまとごころ編集部2025年、韓国の観光産業は大きな節目を迎えた。長年の目標だった「訪韓外来客数2000万人」の大台にはわずかに届かなかったものの、年間訪韓客数は約1894万人(前年比15.7%増)を記録。コロナ禍前の最高記録である2019年の1750万人を大きく塗り替えた。
2024年までは、コロナ後の「リバウンド消費」や特定市場の回復に依存する側面が強かった。しかし、2025年の統計からは、韓国観光の構造そのものが転換期を迎えたことが読み取れる。

中国・日本市場の底堅さと、変化する旅行スタイル
訪韓外国人旅行者の市場別ランキングでは、依然として中国と日本が二大市場として大きな存在感を示している。
中国市場は個人旅行へ完全シフト
2025年の訪韓中国人数は548万人に達し、首位を堅持した。2025年9月の国慶節直前に導入された3名以上の団体ビザ免除とFIT(個人旅行客)向けの手続き簡素化が起爆剤となり、旅行業界全体の活況と個人客の増加を連鎖的に引き起こした。これにより、従来の団体ツアー中心の構造から、MZ世代を中心とした「個人自由旅行(FIT)」への移行が進んだ。彼らはソウルの聖水洞や延南洞といったトレンドスポットを好み、美容、グルメ、ポップアップストアでの体験に価値を見出す、高付加価値な顧客層へと変貌を遂げている。
日本市場に根付いた「日常としてのK-カルチャー」
2位の日本は年間365万人を記録し、前年比で約13%伸びた。日韓関係の安定に加え、日本国内で「第5次韓流ブーム」とも言われるK-カルチャーが完全に定着したことが背景にある。歴史的な円安という逆風下でも、韓国は「安・近・短」で海外気分を味わえる旅先として、10代から30代の女性層を中心に圧倒的な支持を得ている。

「中日」依存を脱し、世界が訪れる国へ
今回、現地メディアもこぞって強調しているのが「観光市場の多角化」だ。かつての韓国観光は、中日の2カ国に依存しすぎる脆さを抱えていたが、2025年の統計はその構図が変化しつつあることを明確に示している。
現場からも「以前の明洞は中国語と日本語が大半だったが、今は英語、フランス語、スペイン語、そして東南アジア各国の言語が入り混じっている」との声が上がる。実際に、アメリカ(135万人)や台湾(152万人)が驚異的な成長を見せ、ランキング上位に食い込んでいる。さらに、欧州や中東からの観光客も2019年比で150%〜200%近い伸びを記録する国が続出した。
韓国は今や「アジアの一角にある旅先」から、世界中の人々が「一生に一度は訪れたいバケットリスト」に挙げる主要デスティネーションへと昇格したといえる。2026年3月にソウルでの開催が予定されているBTSの無料コンサートは、この流れを加速させる最大の起爆剤となるだろう。
なぜ訪韓市場はここまで活性化したのか
ある海外メディアは、2025年の訪韓市場の活況を「戦略が結実した年」と評した。その要因は多岐にわたる。
地方観光の開拓
ソウル一極集中からの脱却が進んだ。江原道の江陵や麗水、慶州といった地方都市へのアクセスが改善され、SNSを通じて「まだ見ぬ韓国」の魅力が拡散。K-POPアイドルのミュージックビデオ撮影地や、ドラマのロケ地を巡る「聖地巡礼」ツアーが地方経済を潤した。
長期滞在スタイルの定着
2024年に試験導入された「デジタルノマドビザ(K-Workation Visa)」が、運用開始から1年を経て欧米圏で広く浸透。年収が一定以上のIT・クリエイティブ職や専門職、コンサルタント等のリモートワーカーを対象に、最長2年間の滞在を認めるこの制度により、仕事をしながら数週間から数カ月滞在するスタイルが定着した。これが従来の短期観光とは異なる「生活密着型」の需要を創出し、一人あたりの平均滞在日数と消費額の底上げに大きく寄与している。
ストレスフリーな観光インフラ
AI観光案内やキャッシュレス決済の利便性向上といった「スマート観光」が浸透。また、国際会議(MICE)の完全復活により、ビジネス客が平日の需要を下支えした。
2019年を上回る海外旅行ブームとアウトバウンドの爆発
観光統計を語る上で欠かせないのが、韓国人の旺盛な海外旅行意欲だ。2025年の韓国人海外渡航者数は2955万人に達し、コロナ前の2019年を超える空前の海外旅行ブームを記録した。
日本が圧倒的1位で訪日客全体の約4分の1を占める
渡航先として不動の首位を独走するのが日本だ。年間で946万人もの韓国人が日本を訪れているが、これは、訪日外国人全体の約25%を占める計算となる。歴史的な円安とLCC路線の拡充により、日本はもはや「国内旅行に近い感覚」の旅先として定着している。
ベトナムとタイが中近距離リゾートとして不動の人気
2位のベトナム(457万人)はダナンなどのリゾート地が安定した人気を誇り、3位のタイ(187万人)も中距離リゾートの定番として高いシェアを維持している。
ノービザ効果により中国への渡航も回復
注目すべきは7位の中国(105万人)だ。韓国人に対するノービザ政策の導入が追い風となり、ビジネス需要だけでなく、冷え込んでいた観光需要も着実な回復を見せている。

このように、アウトバウンド市場においても「近隣国への気軽な旅」と「リゾートでの長期滞在」が両立しており、インバウンド・アウトバウンド双方向で活発な交流が続いていることがわかる。
2000万人時代を前に解決すべき課題
2025年の成功の一方で、課題も見えてきた。一つは、観光客の急増に伴う「オーバーツーリズム」だ。ソウルの北村韓屋村など、住民の生活圏での摩擦が社会問題に発展している。また、特定の国との外交関係が観光に影を落とすリスクは常に存在する。2025年に見られた「市場の多角化」をさらに推し進め、世界中からバランスよく集客する戦略が、今後ますます重要になるだろう。
韓国観光の「新しい夜明け」
2025年の統計は、韓国が世界的な観光大国としての地位を確固たるものにしたことを証明した。伝統的な市場を維持しつつ、多様な文化背景を持つ人々を惹きつけている現状は、韓国観光の未来が明るいものであることを示唆している。
「K-Tourism」は今、単なるブームを超え、一つの文化現象として世界に定着した。2026年以降、さらなるデジタル化と地方の魅力発信が進むことで、韓国はより深く、洗練された旅の体験を提供し続けるはずだ。
【編集部コメント】
「2000万人未達」の先に見えた、韓国観光の構造転換
一見すると目標未達にも映る2025年の訪韓客数だが、数字の内側を見ると、韓国観光が量から質へと転換した一年だったことが分かる。中国市場の個人旅行化、日本市場での日常的な来訪、さらに欧米・中東を含む市場の多角化が進み、特定国依存からの脱却が現実味を帯びてきた。滞在日数や消費額を重視する構造への移行を、いかに持続的な成長につなげるかが次の焦点だろう。
(出典:韓国観光公社Data Lab)
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