インタビュー

Tokyo Otaku Mode Inc. 秋山卓哉氏・山崎彰久氏

2013.08.26

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1300万人もの“世界のオタク”にリーチ、将来的な“訪日観光客予備軍”創出する

2011年3月にFacebookを立ち上げ、約2年間で1300万人の「いいね」を獲得。その後自社のWEBサイトを立ち上げるなど、日本のオタク文化を世界に発信するとともに、海外へ進出したい企業やクリエイターとの仲介役としての役割をも果たしている「Tokyo Otaku Mode Inc.」。今回は同社の秋山卓哉氏と山崎彰久氏に立ち上げのきっかけや、世界のオタクを相手に、どんなビジネス展開が可能なのかをうかがってみました。

目次:
業務内容
創業の経緯
今後の展開について

御社の業務内容をお聞かせください。

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WEBサイト http://otakumode.com
Facebook https://www.facebook.com/tokyootakumode

Facebookページや自社サイトを運営し、海外のユーザーに対して、アニメ、漫画、ゲームといったオタクカルチャーの情報を発信しています。
Facebookページを立ち上げた2011年3月から、どんどん情報がシェアされていって、ユーザーが拡大。約2年間で1300万人の「いいね」を獲得するに至りました。

昨年の秋にはFacebookのルールに縛られることなく、さらに充実した情報を提供したいと考え、自社メディアである「Tokyo Otaku Mode」を開設。

さらにスマホ用の情報発信アプリ「Tokyo Otaku Mode Mini」と、アニメキャラのフレームを用意するスマホ向けカメラアプリ「Otaku Camera」の配信、および運営を実施しています。
アメリカに法人登記していますが、海外に向けて日本の情報を発信するという性質上、日本国内にメディア機能を配し、こちらで取材した内容を英訳している状況です。
課金サイトとしてユーザーから利用料を集めるというビジネススタイルではなく、利用者の99%が日本以外の国の方々であるというメディアの特性を生かし、これから海外に進出したいと考える企業やクリエイターのPRの場として「Tokyo Otaku Mode」を提供。
さらに、日本のアニメやマンガに関する商品を海外ユーザーに販売するeコマース事業も展開しています。

創業のきっかけを教えてください

創業は2011年。ビジネス交流会や仕事などで繋がった友人ら5~6人のメンバーで「何かおもしろいことを一緒にやろう」ということで集まり、本業のかたわら、平日の夜や週末などを利用して手弁当ではじめました。

2011年といえば、ちょうど日本におけるFacebookの草創期にあたり、多くのビジネス誌が特集を組んだり、映画「ソーシャルネットワーク」が公開された年でした。
当時のFacebookは、300万人程度の日本人ユーザーに対し、世界中に5億人のユーザーがいるといった状況。どうせだったら、この5億人にリーチすべきだろうと考えるのも当然の流れでした。

私たち日本人がこのFacebookを使って世界へ発信できる情報にもさまざまなものがありました。たとえば伝統工芸や、和食なども日本独自の文化として世界にアピールできるものだと思いました。
しかし、継続した情報発信を行う場合には、更新性の高いものでなくてはなりません。そういった観点から、アニメやマンガというのは、次々と新しい作品が生み出されており、海外の若者たちから圧倒的な支持を集めているモノであり、可能性が見いだせるものと判断しました。

その一方で、海外において違法な海賊版がはびこり、影響力があるにも関わらず、クリエイターにきちんと利益が還元されていない状況。我々が正規のルートでコンテンツを配信していけば、そのような状況が改善できるのではとも考えたのです。

英語は得意ではなかったので、当初はWEBの翻訳サービスを活用して日本発の情報を英訳して配信していたのですが、そのうち日本のオタク文化が好きで日本語が堪能な海外ユーザーがボランティアで対応してくださるようになりました。
私たち自身は、“オタク”というほど、オタク文化に詳しいわけではなかったのですが、翻訳同様、ユーザーの方々と寄り添いながらサイトを運営していく中で、情報の精度を高めていったのです。

プロジェクトベースで運営していた「Tokyo Otaku Mode」を見た、アメリカ・シリコンバレーにある投資会社から白羽の矢が立ったのは2012年のこと。そのタイミングで、シリコンバレーで法人化をしました。私たちの役割は、単なる情報のプラットホームでしかないのですが、Facebookの「いいね」数という形ではありますが、日本のオタクカルチャーを愛する海外ファンを数字として可視化した点が評価されたのだと思います。

 

 

そして、それぞれの国では少数派のニッチでも、グローバルに集まればマスのコミュニティになりますし、海外へリーチしたい企業やクリエイターと、このコミュニティとの仲介役としての役割を果たしたのだと自負しています。

ANAとのコラボレーションはどのような形で実現したのでしょうか?

ANAが震災直後、訪日観光客が激減した中、その対策の一環として「IS JAPAN COOL?」という日本文化を深掘りし、発信するプロジェクトを始動させました。
海外に日本の文化を伝えていくという目的で、私たちと同じベクトルに向いていると感じました。海外のオタク層1300万人にアプローチできるメディアとして、何かお手伝いできることはないだろうかと、こちらから話しを持ちかけたのです。

大変ありがたいことに、ANAも私たちのFacebookページに以前から注目されていて、何か一緒に取り組めないものかと考えていたとのこと。
ちょうどあらたに「Dreams」というカテゴリを用意して、その中でマンガやアニメを切り口としたコンテンツ、たとえばアニメに登場する実在の場所を訪問する「聖地巡礼」や、アニメやマンガを制作するクエイターの方々にスポットをあてたものを制作する予定だったとのことでした。

そういったタイミングがうまくマッチして、今回のANAが制作したコンテンツの出し先のひとつとして、「Tokyo Otaku Mode」のプラットホームをご利用いただくというカタチでコラボレーションさせていただくこととなったのです。

1300万人のディープなユーザーに対し、ANAが制作する素晴らしいコンテンツを配信することで、「IS JAPAN COOL?」内の他のコンテンツにも誘導。
「日本に行ってみたい」と考え、次なるアクションにつながる場となればと思っています。

 

今後の展開についてお聞かせください

我々が取り組んでいるミッションは、日本のポップカルチャーをいちはやく、世界中の方々にお届けするということ。

これまでのように、情報としてお届けるすることはもちろん、eコマースでモノとして提供するという事業もあります。さらにはマンガやアニメ作品をデジタルコンテンツとして提供するなど、さまざまなカタチでユーザーに直接お届けしていきたいと考えています。

そしてもうひとつ、起業のきっかけにもなった、コンテンツを作っているクリエイターさんに利益が還元されていない現状に対する問題意識を原動力とし、きちんと還元される仕組みを作り、さらに素晴らしいコンテンツをつくってもらえるような環境づくりをサポートしていきたいとも考えています。

また、海外に進出したい、あるいは海外のユーザーにアプローチしたいと考える企業やクリエイターのお手伝いをしていきたいとも考えます。
例えば、今年の9月に開催される「東京ゲームショー」と提携し、海外からの来場者に対し、言葉のサポートや付加価値をつけたサービスを提供する予定。
さらには、将来、来場者になるであろう若いユーザー層に対して告知をしていくことで、広く訪日のきっかけづくりをしていきたいと思っています。

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