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外国人は「大屋根リング」に高評価も、多言語対応など課題明らかに ー大阪・関西万博レビュー分析

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2025年大阪・関西万博に関連する来場者クチコミ1002件を対象に、日本人と外国人来場者の体験を比較分析した調査結果が公表された。インタセクト・コミュニケーションズ株式会社が2025年3月1日~4月27Googleマップ上のレビューをもとに調査を実施した結果、外国人は建築デザインや未来技術の展示に高評価を与える一方で、案内表示や多言語対応の課題が浮き彫りとなった。

 

外国語レビューは全体の25% 高評価と低評価が二極化

レビュー全体のうち、外国語による投稿は約25%を占めており、英語が最多、次いで繁体字、スペイン語、ドイツ語が多く見られた。日本語レビューの平均評価点は4.16点と全体的に好意的だったが、外国語レビューでは極端に高評価または低評価が多い傾向が確認された。

特に繁体字レビューでは、案内表示や言語対応の不足が評価を下げる要因となっていた。これは文化的配慮や言語UX設計の必要性を示唆している。

       

テストラン期間に評価が急落 期待と体験のギャップが影響か

外国語レビューの評価推移を見ると、テストラン前は平均4.67点と非常に高評価だったが、テストラン期間(4月4〜6日)から開幕前日(4月12日)にかけては3.83点まで急落。その後は開催初日以降、徐々に回復した。

▶回答時期別の万博会場へのレビュー

この傾向から、特に外国人来場者は体験と事前期待のギャップに敏感であり、初期段階での受入体制の不備が顕著に評価へ反映されたと考えられる。

 

展示規模や未来技術の体験など高評価も、言語や混雑が課題

主催会場として最多のレビューが集まった大阪関西万博会場では、展示規模や未来技術の体験、国際色豊かな雰囲気などを中心に、高評価が集中している。一方、外国語レビューを見ると「言語表記の不足」など、言語面の課題が多く寄せられたほか、混雑への不満も見られた。

▶大阪関西万博会場へのレビュー(624件)

 

「大屋根リング」は象徴的建築として高評価 外国人満足度も高い

施設別では、「大屋根リング」が外国語レビューで唯一、日本語レビューを上回る評価を獲得。「Impressive」「Iconic」など、視覚的なインパクトが文化的壁を超えて好感を集めていた。これは象徴的デザインが国籍を問わず体験価値を高めることを示している。

▶大屋根リングへのレビュー(130件)

 

東ゲートは外国語レビューで最低評価 案内導線の改善が急務

一方、今回の会場への主要な入口となっている、地下鉄利用者向けの東ゲートでは「外国語対応スタッフの不足」や「案内表示の不備」が多く指摘され、外国語レビューで全施設中最低評価を記録。来場者の第一印象に直結するエリアであり、インバウンド戦略上も多言語案内の強化が不可欠である。

▶会場+東ゲートへのレビュー(135件)

 

駅・アクセス面では「夢洲駅」に改善余地

夢洲駅に関しては、外国語レビューの割合自体が少ないものの、「外国人向けの案内窓口がない」などアクセス情報の不足が指摘されている。訪日外国人にとっての「最初の接点」であるため、案内体制の再設計が望まれる。

▶夢洲駅へのレビュー(113件)

 

インバウンド施策への示唆:「第一印象」「視覚体験」「多言語対応」が鍵

調査分析を通じて、「視覚的・象徴的デザインの強化」「入場体験の最適化」「言語別UC戦略の導入」の3点がインバウンド戦略上の示唆として挙げられる。

「視覚的・象徴的デザインの強化」に関して、大屋根リングに見られるような直感的な感動体験は、言語を越えた満足度向上に寄与している。一方で「入口体験」については、東ゲートの評価低下から、訪日体験の出発点におけるストレス軽減が急務である。なお、言語別UX戦略の導入については、繁体字圏を含むアジア圏向けには、単なる翻訳ではなく文化的文脈を踏まえた案内設計が必要であることが分かった。

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