インバウンド特集レポート
最も多くのインバウンド客が訪れる都市「東京」。なかでも、新宿、渋谷、原宿、銀座、秋葉原などは人気エリアで、いつ訪れても多くの外国人を目にする。では、それ以外のエリアには実際どれぐらいの外国人が訪れ、どのように受け止めているのだろうか。
訪日外国人向けガイドマッチングサービスを手掛ける株式会社Huber.(ハバー)と株式会社ナビタイムジャパンが行った共同調査「東急線沿線における訪日外国人旅行客の旅行中の行動変容/動向に関する調査研究」からは、興味深い結果が明らかになった。
本調査では、ナビタイムが提供するインバウンドGPSデータ(移動実態データ)とHuber.のガイドへのデプス調査(インタビュー)データを組み合わせている。ナビタイムジャパンの東急線沿線エリアを訪れた訪日客の実行動データから特徴的なエリアを抽出し、そのエリアに特徴が現れた理由をHuber.のデプス調査結果から分析。人気エリアごとに、国籍・市場別の行動データを追い、その特性を紹介する。
代官山エリアは渋谷とのコントラストが魅力
上図の東急沿線エリア訪日外国人旅行客数ランキングによると、代官山エリアは渋谷に次いで第2位の来訪数があった。また、代官山における訪日客の国籍・地域別構成比を見ると、どの国も全体構成比とほぼ同じだが、韓国に人気が高く、東南アジア圏は全体平均を下回った。ガイドと共に訪れた訪日客からは「代官山旧朝倉邸が面白い(フランス人)」「木造住宅が並んでいるのに、お洒落なブティックがあるのが信じられない(中国人)」「タイムスリップをした感覚(スペイン人)」などの反応があり、ビル街のイメージがある渋谷の隣に全く違う街が広がっていることで、訪日客に大きな驚きを与えていることがわかった。
韓国で抜群の知名度を誇る自由が丘エリア
自由が丘エリアの国籍・市場別構成比を見ると、欧米系の比率が低く、韓国を筆頭に、台湾、香港、東アジア圏の比率が高いことがわかった。同エリアを訪れた訪日客からは「韓国の街並みに似ていて、とても有名(韓国人)」「オランダ橋に小さなベネチアを感じ興奮(マレーシア人)」「とても日本らしい(フランス人)」などの反応があり、アジア圏の人にとって欧州的なコンテンツが新鮮に映る一方で、古民家の縁側でくつろぎながらお茶を飲める空間もあり、日本らしさを感じることもできる場所であることがわかった。
三軒茶屋エリアは、ディープでローカルな雰囲気が新鮮!
三軒茶屋ではアメリカとシンガポールからの訪日客の比率が高い。三軒茶屋の赤提灯街を訪れた訪日客からは「ディープな感じが良い(ドイツ人)」「すごく喜ぶ。ディープさが良い(メキシコ)」「とても新しい場所(フランス人)」という反応を得た。古さが残り、ビルの間にこぢんまりとした店が軒を連ねている様子が「ディープ」に映り、来訪する人を受け入れてくれるような「ローカル」な雰囲気が訪日客を惹きつけていることがわかった。
豪徳寺エリアは一部アジアと欧米系に人気! 「招き猫」「自然」がキーワード
豪徳寺エリアは、他エリアに比べて国籍・市場別構成比が特徴的で、台湾、シンガポール、フランス、ドイツ、イギリスが高かった。アメリカも全体平均と同程度だが、十分に高い結果となり、一部アジアと欧米系の訪日客に人気が高いということがわかった。同エリアを訪れた訪日客からは「自然と歴史の両方を感じとることができてよい(ドイツ人)」「三重塔と自然のバランスが最高(アメリカ人)」「招き猫が密集している写真がフォトジェニック!(イギリス人)」などの反応があった。豪徳寺ではずらりと並んだ招き猫が有名だが、それだけではなく春の桜、秋の紅葉に代表されるような境内の木々と三重塔との調和も魅力となっているようだ。
豪徳寺エリアでは「世田谷八幡宮」も人気のスポット
豪徳寺エリアは世田谷八幡宮という、もうひとつの人気コンテンツを持つ。「相撲文化に触れたかったから土俵を見られてよかった(アメリカ人)」「木々の中にある土俵に大興奮(カナダ人)」「土俵上で相撲のマネをできたことに感動(イギリス人)」など、土俵に惹かれる声が多数。また、神社だけでなく、鴨や鯉、亀などの生き物や、赤い鳥居、赤い橋といった造形物が共存している様子が外国人を魅了しているようだ。
同調査からは、「日本の最先端」という印象のある渋谷と隣接するエリアでは、渋谷とは全く異なる雰囲気が味わえるという点、また、そのエリア内に様々なものが混在している様子が訪日客にとって魅力的な要素となっていることがわかった。日本人とは感覚の異なる訪日客の需要を汲み取り、地域のコンテンツを発信していく上でも、こうした行動調査は非常に貴重なデータとなる。両社は今後、たびマエの調査を行い、たびマエのユーザーに対するアプローチの可能性についても探っていくという。
編集部おすすめ関連記事:
最新のインバウンド特集レポート
リピーター増と共にローカル志向高まる中東市場、2025年 旅行者に選ばれるための重要なポイントとは? (2024.12.23)
完璧な事前の準備よりオープンな心で対応を、2025年拡大する豪州市場の地方受け入れに必要なこと (2024.12.20)
地域体験を求めるFIT急増、2025年シンガポール市場獲得に向けて地方ができることとは? (2024.12.19)
まだ見ぬ景色を求めて地方を旅するタイ市場、2025年は二次交通が地方誘致のカギに (2024.12.18)
香港市場が求める高品質の訪日旅行体験、2025年に米豪市場と競う日本は何をすべきか? (2024.12.17)
2025年の台湾市場は定番観光から深度旅遊へ。地方誘致拡大への効果的なプロモーションとは? (2024.12.16)
2025年中国FIT市場の潮流、国内感覚で日本の地方を旅する旅行者の心をつかむためには? (2024.12.13)
日中往来の更なる活発化が予測される2025年の中国市場、地方分散や受け入れキャパ不足への対応がカギに (2024.12.12)
小都市旅行とグルメで進化する2025年の韓国市場、日本人と変わらないスタイルへ (2024.12.11)
香港の日常に溶け込む「日本」、香港人の消費行動から見えるその魅力とは? (2024.09.30)
地方を旅する香港人旅行者の最新トレンド、柔軟な旅スタイルで新たな魅力を発掘 (2024.09.06)
酒造りからマラソンまで、ディープな日本を楽しむ台湾人観光客。新規旅行商品造成のノウハウとは? (2024.08.30)