インバウンド特集レポート

民泊新法に向けて、活発化する業界再編の動き(中編)

2017.07.31

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民泊がもたらすうねりが止まらない。来年1月にも施行される予定の民泊新法。これを機に、大手企業や不動産業界の参入が始まった。個人民泊ホスト(貸主)は、簡易宿泊所の登録を進める人、一方で新しいビジネスチャンスを見つけて走り出す人など、新しい動きにも目が離せない。

前編では、不動産業界の動き、大手企業の動きとして、楽天とLIFULLの提携について紹介。

中編では、引き続き大手企業の動きとして、パソナとAirbnbによる提携を紹介、また、今年から活発になっている民泊の展示会の様子をレポートする。

 

大手企業の相次ぐ連携により、民泊業界が再編!?

◆パソナとAirbnbが民泊にかかわる人材育成を目的に業務提携

人材大手のパソナとエアビーアンドビーは、5月に業務提携を発表している。

協働する主な分野は、「募集・育成」や「業務支援」だ。民泊で利用される空き家などの物件を管理・運営することのできる人材を育成する構えだ。

パソナでは、昨年から「観光立国ソリューションサービス」の提供を開始しており、観光分野での人材育成や雇用創出に注力してきた。

民泊、空きスペース、駐車場、カーシェアなど観光系シェアリングサービスで、ホスト(貸主)として働く人材の育成を目指し、全国各地域での就労機会拡大を実現することを目指す。2020年まで、シェアリングエコノミーに関わる人材を、1万人育てたいと意気込む。

さらに、エアービーアンドビーは、みずほ銀行と提携するなど、動きが活発化している。これまでグレーとされてきた民泊が、法整備によってオフィシャルになり、動きやすくなったのだろう。

 

民泊向けのEXPOの立ち上がりで、業界が活発に!

民泊に関する商談会も活発になった。昨年から始まった民泊EXPOは、4月に東京大田区で開催された。主催はトーキョーサンマルナナ株式会社だ。

全国で、民泊が合法的に解禁となり、民泊を一から始めたい人から、より効率的に運用したい玄人ホスト、既に運用している事業者にまで、すべての来場者たちが満足するプログラムを目指した。そこで、「法律のプロ」「集客のプロ」「運用のプロ」「内装のプロ」「掃除のプロ」「観光のプロ」など民泊に関するスペシャリストたちが一同に介し、イベントの成功を導いた。

一方、5月には、バケーションレンタルEXPOが、新宿で開催。株式会社オリックスコンサルティング、メトロエンジン株式会社による共同開催だ。各両社は民泊・宿泊メディア最大手「Airstair.jp」「Minpaku.Biz」を運営しており、民泊・簡易宿所における現場での事業運営、ノウハウを培ってきた。

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開催の趣旨は、民泊新法の成立に伴い、上場企業を含む多くの法人や個人がこれまで以上に民泊・簡易宿所事業へ参入することが予想されるなか、情報が不足しているのが課題だった。それをこのエキスポでマッチングさせ解決していこうという。

民泊新法の制定と同時に、従来の旅館業も構造設備に関する基準が緩和される見込だ。

また、今後は、サブリース物件、マンスリーマンションの運営や、一棟物件の収益力向上、個人の保有する物件の収益化向上なども課題となる。

「民泊新法」「簡易宿泊施設」「旅館業法」など新たな動きが盛んな宿泊業界のことを正しく理解し、合法的に実践するノウハウが学べる場として全国より多くの来場客を集めた。

さて、両エキスポで共通するトピックスとしては、民泊新法がいう「180日規制」問題だった。営業日数が年間を通して半分以下となると、民泊以外の時期をいかにして資産運用するかがカギとなる。

そのような課題に向けて、商談会の参加企業は、様々な提案をしていた。

◆民泊二毛作で、空き家、空きビルの新たな活用方法を提案

空き家や空きビルを活用したマッチングサービスをしている「スペースマーケット」は展示ブースを出し、「民泊二毛作」というキャッチフレーズを提案している。

これは、180日を民泊で運用して、残りの185日をスペースマーケットに掲載してイベント等、スペース貸しで活用してもらおうというものだ。

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では、その二毛作に適したエリアはあるのだろうか。

同社の高尾氏によると、これまでのスペースマーケットのニーズだと、東京、大阪、神奈川の都市圏が多い。例えば東京で需要が高いのは、新宿区、豊島区、渋谷区、港区、世田谷区の5つの区で東京の50%のシェアとなっているそうだ。

さらに、部屋の広さによって利用方法が変わる。30㎡未満であれば、会議や打ち合わせに利用され、それより大きい場合は少人数でのパーティーに利用できる。例えば、女子会、ママ会、家族会など、ニーズは拡大しているという。またはコスプレ撮影会の会場といったユニークな利用方法もある。

スペース利用として貸し出す場合は、ベッドなどの大型家具は、別の場所に置くなど、部屋をスッキリさせる必要がある。

また、部屋の様子を写真で撮ってインスタグラムにアップする人も増えており、写真映えする部屋の雰囲気づくりが重要だ。例えばピンクの壁紙の家、カフェのような家など、非日常的な雰囲気が好まれる。

基本、値付けは自由だが、相場としては、1時間2,000円から3,000円がボリュームゾーンだ。

スペースマーケットでは、エキスポのようなイベント、さらに不動産会社を営業してまわり、この「民泊二毛作」の普及を図っている。

◆マンスリー賃貸と民泊の併用によって、空室を回避

またブース出展企業にオークハウスがあった。シェアハウス事業の最大手企業だが、どのように民泊に関わるのだろうか。

こちらは、海外へのシェアハウスのプロモーションなどを通して、外国人利用者にリーチをしている。

出展の理由は、民泊代行会社との提携を進めたいからだという。

オークハウスに住んでいる人は、実は皆が好んでシェアハウスに住んでいるわけではなく、中には金銭的な理由で仕方なくシェアハウスを選択している場合もある。初期費用が安く済み、家賃も比較的安いからだ。例えば、外国人の場合、ある一定期間を過ぎると母国に帰るので、家具をそろえることが億劫になる。そこで、もし家具付きのワンルームマンションがあれば、ゆったり一人暮らしをしたい人が住むと考えられる。

そんな人を家具付きマンスリーマンションに紹介するというサービスだ。繁忙期以外の時期に入居してもらうことで、空室を回避できる。1年間を通して、民泊とマンスリー賃貸の併用のサポートを目論んでいる。

 

個人ホストが脱皮して花開く?

実は、エアービーアンドビーによって民泊を牽引してきたのが、個人ホストたちだ。グレーゾーンとわかりながら、挑戦してきた個人ホストは、法整備によって、状況は大きく変わるだろう。

民泊に大手不動産会社が参入することで今後は苦戦が予想され、また不法転貸による行為も一掃されるだろう。新法による民泊撤退という動きも加速しそうだ。

ところで、ホスト業を通して宿泊施設の運営に自信を持った人は、簡易宿泊所としての登録を取得して、年間を通したサービスを目指す動きもある。京都では、民泊には厳しいが、簡易宿泊所の要件を緩和して、登録者を増やす意向だろう。

一方で、個人ホストが法整備をきっかけに民泊を撤退、違う分野で活躍しているケースもある。

(後編へ続く)

 

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