インバウンド特集レポート
中国発の電子マネーの決済システムが日本で普及をし始めている。中国ではキャッシュレス化が加速度的に進んでおり、現金を持たずとも、スマートフォンさえあれば生活できそうな勢いだ。その流れが日本にもやってきており、外国人が多い小売店や商業施設では、電子マネー決済の導入が進む。
Part1では、驚くべきスピードで電子マネー化が進む中国市場の状況について紹介。Part2(本編)では、日本でも普及が進む中国発の2大モバイル決済サービスの一つ、アリペイについて詳しく見ていく。
中国最大のECサイト「アリババ」が生んだ「アリペイ」
アリペイの日本アクワイアラー(代理店)の一つ、日本恒生ソフトウェア株式会社の担当者、谷(コク)氏と林(リン)氏に中国の状況についてうかがった。
アリペイは、もともと、中国国内最大のインターネットECポータルサイトである「アリババ」が、そのサイトで買い物するユーザー向けに始めた電子マネーによる決済システムだ。
アリペイによる支払いが急速に増えており、中国国内でアリペイを利用した決済高は、2015年の1年間で約130兆円相当になり、その後も増加し続けている。ちなみに上記の数字は、スマホで支払いをした時だけの数字で、PCを通じて決済した金額は含まれていない。
コンビニ、レストランだけでなく、屋台ですら使えるアリペイ
中国でアリペイ利用が爆発的に増えたのは2013年からで、中国でのスマートフォンの普及が大きな要因だったと林氏はいう。その年は、スマートフォンの安くてカッコいい機種が中国国内のメーカーから販売され、市場に行き渡ったタイミングと重なる。それまでは一部の富裕層に限られていたスマートフォンが広く浸透、年配者も含め誰もが使うほど普及した。
スマートフォンの普及と歩調を合わせて、中国国内に広がったモバイル決済サービスによりキャッシュレス化が進んだことは、ユーザーからは歓迎されている。買い物する際に財布からお金を出してお釣りをもらう行為が省けてスピーディーだという声が多い。
利用できる場所も次々に広がり、地下鉄、バスなどの交通機関、ショッピングセンター、カフェ、コンビニ、レストランなど。驚くべきことは、通りに出店している屋台でも使えるようになっている。
専用アプリを使ってQRコードを読み込むだけでお手軽決済
アリペイの使い方は、主に2パターンあるが、いずれも至って簡単である。
アリペイ専用のスキャナーを持っている店舗では、それを用いて決済する。この場合、お客さんはあらかじめ銀行口座などの情報が入ったQRコードを、専用のアプリを使って提示する。店舗側のスタッフは、専用スキャナーに購入金額を入力し、その金額を確認してもらったうえで、お客さんのQRコードを読み込み、決済を完了させる。
一方で、屋台など、スキャナーを持たない小さな店舗では、お客さんのスマホで決済をする。お客さんが、店内に貼ってあるバーコードかQRコードをスマートフォン上の専用アプリを使ってスキャンし、支払い金額を入力する。店員にチェックしてもらったうえで、確認ボタンを押せば、スマホに登録してある銀行口座からその店舗への支払いが完了する。
また、決済した後に、アプリに支払い情報の通知が届くので、金額など確認できるため安心だ。同様に店舗側にも情報が届く。店舗側としても現金のやり取りの面倒がなく、時間短縮になっている。
中国国外では6億人がアリペイを利用!
現在、中国でのアリペイ登録者数は10億人近く。そのうち、中国国外で利用できるのは、実名で登録している人だけに限られているため、約6億人となる。アリペイを利用するには、中国に銀行口座を持っていることが条件となっているため、私たち日本人が利用するのは難しい。
アリペイには、不正利用、不正アクセスへの対策チームである管理センターがあり、セキュリティーにも目を光らせている。例えば、普段は少額の決済しかない店で突然100万円の購入がある、といった疑わしい決済があった場合は、管理センターがお店にコンタクトを取り確認するという。さらに、電子決済への不正アクセスにより損害が生じた場合は、アリペイが損失分の負担をしてくれる。
プロモーションやマーケティングにも活用できるアリペイの仕組み
また、アリペイの加盟店は、利用者の情報を自社サービスのマーケティングデータとしても活用できる。アリペイを通して得た情報から、どの商品が不足しそうかを予測して、あらかじめ商品を仕入れておくことができるのは、現金決済との大きな違いだ。
日本国内では、すでに大丸松坂屋、三越伊勢丹、髙島屋、ドン・キホーテ、ヤマダ電機、エディオンなどが、アリペイのモバイル決済サービスを導入している。またローソン全国1万3000店舗でも、利用できるようになっている。
アリペイでは、加盟店への誘客支援も実施している。アリババのサイト内には、加盟店の人気商品やキャンペーン内容が掲載できる『ディスカバーコーナー』と呼ばれるページがあり、加盟店がキャンペーンなどを実施する場合、ここに情報を掲載することができる。
次にもう一つのモバイル決済サービスが、ウィーチャットペイである。今回、ウィーチャットペイの一次代理店として動いている株式会社アプラス ペイメント事業開発部長福永氏にもお話をうかがった。
最新のインバウンド特集レポート
香港の日常に溶け込む「日本」、香港人の消費行動から見えるその魅力とは? (2024.09.30)
地方を旅する香港人旅行者の最新トレンド、柔軟な旅スタイルで新たな魅力を発掘 (2024.09.06)
酒造りからマラソンまで、ディープな日本を楽しむ台湾人観光客。新規旅行商品造成のノウハウとは? (2024.08.30)
専門家が語る、深化する中国人旅行者のニッチ旅のトレンド。地方誘致の秘訣とは? (2024.08.29)
最高の旅を演出する「スーパーガイド」表彰で、通訳ガイドを誇れる職業に (2024.06.24)
お好み焼き、カレー、ラーメン…一見すると普通のツアーに参加者が大満足。10日で150万円の特別な訪日旅行の中身 (2024.05.31)
大阪万博まで1年、深刻化するバス・タクシー人手不足の現状と解決策、ライドシェアの効果は? (2024.05.16)
失敗事例から学ぶ観光DXの本質、成果を出すため2つのポイント (2024.04.24)
全8市町がグリーン・デスティネーションズのラベル獲得。日本「持続可能な観光」地域協議会が歩んだ3年間の取り組みと成果 (2024.03.29)
歴史的資源を活用した観光まちづくり推進事業、住民主体の地域づくりの足掛かりに (2024.03.22)
「守るべきは屋根の下のくらし」京都 美山かやぶきの里が模索する、持続可能な地域の在り方とは (2024.03.14)
【対談】被災した和倉温泉の旅館「加賀屋」が、400人の宿泊客を避難させるために取った行動とは (2024.03.14)