インバウンドコラム
地域は物語で「10倍」人が集まる
コンテンツツーリズム再発見
著者:増淵敏之/安田亘宏/岩崎達也
(編著:コンテンツツーリズム学会)
出版社:生産性出版
本書は、コンテンツツーリズム学会のメンバーが筆者となり、学会として取り組んだ書籍第2弾である。国内外の様々な年代のコンテンツ事例を取り上げ、そのポイントを分析している。
同学会ではコンテンツツーリズムを、地域に「コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ」としての「物語性」「テーマ性」を付加し、その物語性を観光資源として活用すること、と定義している。
全10からなる章では、近年の映画やアニメ等の映像コンテンツに留まらず、古い小説からYouTuberの事例まで、地域の取り組みとその効果が失敗事例も含めて紹介されており、気になった章から読んでも良い構成となっている。
例えば『金色夜叉』にちなんだ熱海市の事例では、持続的なコンテンツツーリズムの仕組みを提示している。
「コンテンツ」の意味する幅はとても広いが、コンテンツの持つストーリーの原点とは、作品への共感、作者への敬愛を前提とした知的冒険である。コロナ禍を経て、改めて観光が注目されるようになったが、この「知的冒険」というキーワードは、今後の観光トレンドにも合致するし、コンテンツツーリズムの持続的成功は、地域にとって「未来の歴史遺産」を生むことにも繋がる。
本書のタイトルにもある「地域に人が集まるにはストーリーが重要」という視点は、他のツーリズムにも通ずる。そういった意味では、コンテンツツーリズムに関わっていない観光事業者や行政の担当者でも、本書を読み、ストーリーをどのように持続可能な観光振興に活かしていくのかを考える上で、ヒントになり得る書籍である。
文:株式会社やまとごころ 竹花 駿平
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