インバウンドコラム
観光立国・日本 ポストコロナ時代の戦略
著者:箱谷真司
光文社新書
朝日新聞の大阪府庁担当の記者である筆者が、観光業に従事する企業や個人への取材を通じて得た知見を基に、ポストコロナの観光業の可能性やあるべき姿について記した本。 第一章では、コロナ禍で苦境に陥る観光業界の現状をデータや取材を基にまとめており、第二章以降は、ポストコロナの観光業に欠かせないと考える「地域の価値向上」「観光公害の防止」「デジタルとSDGs」「万博とIR」という4つの視点で、事例を交えながら紹介している。
筆者による全国各地の取材を基にした具体的な事例が多数紹介されているため、新しい動きや潮流を知るという点で、参考になる。コロナ禍で新たに始まり、現在は試験運用や実証実験というフェーズの事例が紹介されており、持続可能な形で継続するための資金やリソースの確保、体制構築などの評価や効果検証まで至っていないケースが多数だ。ここで紹介されている事例が、今後どのように発展していくかのかは、興味深い。
最終章の「万博・IR」については、プロジェクトの概況や現在地を中心に、観光業への可能性にも触れられている。特にIRは賛否両論様々な意見があるが、中立な視点で、それぞれの意見が簡潔にまとまっているので、全体像を把握するにはお勧めできる。 全体的に、観光業界に携わる人たちにとっては、繰り返しの内容ではあるが、コロナ禍の3年間で学んだことの復習として、また、自社あるいは自分の地域での取り組みの再確認として活用できる本ではないか。
文:株式会社やまとごころ 堀内 祐香
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